特定秘密保護法案の強行採決・公布に強く抗議し
同法の廃止を求める法律家団体の共同声明
本年12月6日、自民党、公明党は、国民の過半数を超える反対の声及び8割を超える慎重な審議を求める声を傲然と無視し、参議院本会議において特定秘密保護法案を強行採決により成立させた。
この所業は、議会制民主主義の根本に反し、主権者である国民を冒涜する許し難い暴挙であり強く抗議するとともに、同法の廃止を、断固として求めていく決意をここに表明する。
1.異常な審議経過と短期間に広がった国内外の反対意見
そもそも、同法は、昨年の衆・参議院議員選挙のいずれにおいても争点とはされず、今臨時国会の1か月前になって原案が公表され、先立つパブリックコメント募集は、2週間という短期間であり、衆議院では、わずか20日足らずの審議で法案が強行採決され、参議院においては、趣旨説明から採決まで8日間での成立という極めて異常な審議経過をたどった。これは、議会制民主主義、国民主権原理に対する挑戦ともいうべき暴挙である。他方、同法案は、その審議が進むにつれて、日弁連をはじめとする法曹界はもとより、沖縄県議会、福島県議会などの地方議会、ジャーナリズム、ノーベル賞受賞者をはじめとする科学者、学者、研究者、作家などの言論界、演劇人、映画界など、あらゆる国民の各層各分野から反対の声が上がり、その声は日増しに強まった。国内のみならず国連人権理事会の特別」報告者からの指摘や国際ペンクブ会長声明をはじめとする国際団体等から、国際的基準(ツワネ原則)からも大きく逸脱した同法案に対し、深刻な憂慮の声が寄せられた。
2.特定秘密保護法の危険性
この点については、すでに本年11月27日付け共同声明で述べたとおりであるが、同法の本質は、臨時国会で成立した日本版NSC設置法と次の通常国会で提案予定の国家安全保障基本法と三位一体で、集団的自衛権の行使を可能とする軍事立法にあると同時に、政府にとって不都合な国民の言論活動を、警察権力により封じることを目的とする治安立法にある。
同法は、行政機関の長が裁量でいかようにも「特定秘密」として指定することを認め、秘密の提供は、国会、裁判所を含めて大きく制約されるため、国民は何が「特定秘密」に指定されたか知り得ないまま、秘密の漏洩行為等々が広範に刑事罰の対象とされる。これにより、取材・報道の自由その他一切の表現の自由、国民の知る権利は、警察による取り締まりと処罰を恐れて大きく制約され、国民主権の原理を支える基盤は完全に切り崩されることになる。同法がひとたび施行されれば、立法による改憲を許すこととなり、その先の明文改憲の道を開くこととなる。
3.結語
私たち法律家7団体は、このように憲法の基本原理である平和主義、基本的人権の尊重、国民主権原理のいずれをも否定する特定秘密保護法の施行前の廃止を、広範な国民各層各団体とともに、断固として求めていく決意をここに表明するものである。
以上
2013年12月18日
社会文化法律センター代表理事 中野 新・宮里 邦雄
自由法曹団 団長 篠原 義仁
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 原 和良
日本国際法律家協会 会長 大熊 政一
日本反核法律家協会 会長 佐々木 猛也
日本民主法律家協会 理事長 渡辺 治
日本労働弁護団 会長 鵜飼 良昭
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日本カトリック司教協議会 常任司教委員会 強行可決に断固抗議
内閣総理大臣
安倍晋三 殿
抗議声明文
2013年12月7日
「特定秘密保護法」の強行採決に断固抗議します
日本カトリック司教協議会常任司教委員会は、日本国憲法の基本原理を尊重し、人間の尊厳に関わる自由で平和な社会を求める宗教者として、「特定秘密保護法」を、11月26日に衆議院、12月6日に参議院で強行採決したことに対して断固抗議します。
今回採決された「特定秘密保護法」は、日本の根幹を揺るがしかねない極めて重要な法案です。この法案については、以下の指摘する通り、憲法の三大原則である主権在民、基本的人権の尊重、平和主義を侵害する恐れがあり、日弁連をはじめあらゆる層の団体や市民たちが廃案を求めて声をあげました。
このような重大な法案を十分な審議も尽くさず、説得力ある説明もなされないまま強行採決することは絶対にあってはならないことですが、自民党をはじめとする「数の力」で一方的に強行採決されました。これは法案成立反対の民意を無視し、民主主義の根底を脅かすものであり、わたしたちは到底容認できるものではありません。
この「特定秘密保護法」は、以下のような欠陥をもつものであることを危惧します。
1.
「特定秘密」を行政機関が定めるということは、国会が行政機関の下位に置かれることになり、これは日本の民主主義制度に反します。また「特定秘密」の範囲が曖昧なまま、その指定を行政側の恣意的な裁量に委ねるものです。これは情報公開制度が未整備の現状にあって、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止にあたるとすれば、何でも秘密にされる危険があります。
2. 民主政治は市民の信託によるものであり、情報の開示は民主的な意思決定の前提です。
この法案により国会議員の国政調査権も制限される可能性があります。国会では正確な情報に基づいた議論が保障されるべきなのに、国会への情報提供が限定されてしまうことになり、主権在民が脅かされます。
3. この法案により、市民の知る権利は大幅に制限され、取材・報道の自由、表現・出版の自由、学問の自由など、基本的人権が侵害される危険があります。さらに秘密情報を取り扱う者に対する適性評価制度の導入は、プライバシー侵害の恐れがあります。
4. 防衛大臣が「特定秘密」と指定すれば、それが自衛隊の海外武力行使や米軍との共同作戦など憲法9条に反することであったとしても秘密裡に実行されることになります。これは憲法前文で「日本国民は、政府の行為として国家として再び戦争の惨禍が起こることのないように、この憲法を確定する」と決意表明した平和主義を根底から揺るがします。
5. 福島第一原発事故の収束のめどが立たない現状なのに、放射能の量、健康への影響、環境汚染の実態など、国民の不安をあおり公共の秩序を害することを理由に「特定秘密」と指定されかねず、それは市民の生命、健康をさらなる危険にさらすことになります。
このような重大な問題をかかえ、多くの反対や疑問が呈されている法案については、多方面からの意見を聴取し慎重な審議を重ねた上で、民主的に定めていくことこそが民主政治です。
今回のような拙速な採決に対してわたしたちは断固抗議するとともに、今後同様な
強行採決を決して行わないよう要求します。
日本カトリック司教協議会 常任司教委員会
委員長 岡田 武夫 大司教
委員 髙見 三明 大司教
委員 大塚 喜直 司教
委員 梅村 昌弘 司教
委員 宮原 良治 司教
委員 菊地 功 司教
委員 前田 万葉 司教
★The Statement in English
http://www.jccjp.org/jccjp/home_files/131207standingC.pdf
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日本カトリック正義と平和協議会 平和への決意を揺るがす法律に反対
日本カトリック正義と平和協議会
〒135-8585 東京都江東区潮見2-10-10
TEL. 03-5632-4444
FAX. 03-5632-7920
内閣総理大臣 安倍晋三殿
Prot.
SC-JP
13-04
2013 年11 月1 日
日本カトリック正義と平和協議会
会長 松浦悟郎
日本カトリック正義と平和協議会は「特定秘密保護法案」に反対します
私たち日本カトリック正義と平和協議会は、日本国憲法の基本原理を尊重する立場から、また人間の尊厳に関わる自由で平和な社会を求める宗教者の立場から、「特定秘密の保護に関する法律案」に反対します。
本法案は、「特定秘密」の指定を行政側の恣意的な裁量に委ねるもので、情報公開制度が整備されていない状況の中では、秘密はあらゆる方面の事柄に及んで指定される可能性があります。
また、公務員だけでなく「秘密」を取得した民間人をも処罰対象とし、さらには、国会議員にまでも秘密厳守を求める内容となっています。
具体的には以下のような問題を引き起こすことになります。
1)防衛大臣が「特別秘密」に指定すれば、たとえそれが自衛隊の海外武力行使や米軍との共同作戦などのような憲法9条に反する事柄であっても、すべて秘密のうちに実行されることになる。
2)収束のめどが立たない東京電力福島第一原発事故など、原発に関する情報についても「テロ対策」として国民に伏せることができる
3)憲法で国権の最高機関と位置づけられた国会を行政機関の下位に置くことになる。
4)マスメディアの取材活動を萎縮させて憲法で保証された国民の「知る権利」を著しく制約する。(たしかに、国民の「知る権利」や報道・取材の自由への配慮が盛り込まれてはいるものの、これはあくまでも努力規定にすぎません。)
5)市民の弾圧などでさえ、マスメディアの取材も国会での追及も許されず、その秘密は永久に闇の中に葬られる可能性がある。
さらに、本法案が、集団的自衛権を憲法解釈によって認めようとする動きと、「日本版国家安全保障会議」を設立しようとする動きと密接な関係にあることを看過することはできません。本法案が可決すれば、日米同盟の関係強化のもと、あらゆることが秘密裡にすすめられ、「日本国民は、政府の行為として国家として再び戦争の惨禍が起こることのないように、この憲法を確定する」と世界に宣言した平和への決意を根底から揺るがしていくことになります。
以上の理由から、私たちは特定秘密保護法案に強く反対します。
★The Statement in English
http://www.jccjp.org/jccjp/home_files/jccjp%20op%20Special%20Secret%20Bill2013.11.1.pdf
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ふぇみん婦人民主クラブ・廃止を求める声明
2013年12月12日
内閣総理大臣 安倍 晋三 様
ふぇみん婦人民主クラブ
東京都渋谷区神宮前3-31-18
03-3244/3238
共同代表 設楽 ヨシ子
坪田 康子
「特定秘密保護法」の成立に抗議し、廃止を求める声明
私たちふぇみん婦人民主クラブは、敗戦翌年の1946年に「二度と戦争をしないように」との思いで結成された全国組織の女性団体です。平和憲法を生かし、女性問題や人権や環境危機の問題などに、幅広く取り組んできました。
この度の「特定秘密保護法」制定には国内外から多くの反対の声があがっているにもかかわらず、その声に耳を傾けることなく安倍政権は6日、強行採決という暴挙で成立させ、歴史に汚点を残しました。11月7日、衆議院本会議で審議入りしてからわずか1ヶ月に満たない短い期間で、このような重要法案に対して審議を尽くすことなく成立させたことに強い怒りと政治への失望しかありません。日に日に高まる反対の声を封じ、数の力で押し切るやり方は民意を軽視した議会制民主主義の否定そのものです。
この法は何が秘密にされたのか知ることもできず、それをチェックする第三者機関がないため時の権力が恣意的に秘密に指定でき、さらに秘密に迫ろうとするものは厳罰に科すという治安立法そのものです。審議の中で「国民の知る権利より国家の安全保障が優先されるのは当然のこと」と豪語した議員がこの法の本質を明らかにしましたが、国家を国民の上位におくという考え方に基づいた改憲草案にも通じるものです。福島原発事故の情報隠しで、知る権利を奪われることが命まで脅かされることを体験した私たちは政府のウソにもう騙されることはありません。情報は私たち市民のものです。情報に基づいて議論し判断することは主権者の責務です。安全保障と情報公開についての国際原則「ツワネ原則」もそのことを明確に示しています。また、国連特別報告者や人権高等弁務官強い懸念が表明されただけではなく、「ツワネ原則」を定めた米財団から「今世紀の民主主義国家で最悪の法」であると指摘されるなど、国際標準から大きく逸脱するものです。
「特定秘密保護法」は知る権利、表現・言論の自由、報道の自由を侵害し、憲法の三大原則である「国民主権」「基本的人権の保障」「平和主義」を否定する違憲そのものです。先に成立、発足した「国家安全保障会議(日本版NSC)」やこれから制定しようとしている「国家安全保障基本法」と一体のものとして安倍政権が目指す集団的自衛権の行使容認を可能なものにし、再び「戦争のできる国」にするための準備法であることも明白になりました。安倍政権が押し進めるこれらの政策は、日本国憲法の理念に反し戦後民主主義を崩壊させる恥ずべき行為と言わざるを得ません。
今、市民、労働者、憲法学者、マスコミ、映画人、表現人、医師会、文学人と様々な分野の人たちがこの法に反対して立ち上がっています。私たちふぇみん婦人民主クラブは多くの仲間と一緒に今後も諦めることなく廃止を強く求めていきます。
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民主法律協会 特定秘密保護法の施行阻止と廃止を求める
特定秘密保護法の強行可決に抗議し、その施行を許さず、廃止を求める声明
2013年12月13日
1. 本年12月6日に成立した特定秘密保護法は、民主主義と基本的人権を破壊
する憲法違反の法律であり、このような法律を世論の強い反対にもかかわらず強
行可決した政府・与党に強い抗議を表明する。
2. 特定秘密保護法は、幾重にも憲法に違反する、違憲無効の法律である。
同法は、政府が一方的に「特定秘密」を決め、それが漏れることを防ぐために、
それを他に伝えたり、公表することを禁止し、違反した者には最高で懲役10年
という思い刑罰を科すことにしている。
「特定秘密」の中身は曖昧かつ極めて広範囲にわたり、何が「特定秘密」と指
定されたのかさえ明らかにされない。そのため、マスコミによる取材活動は著し
く制約される。報道・表現の自由と「知る権利」は大きく侵害され、民主主義は
機能不全に陥ってしまう。また、「特定秘密」に接触する可能性のある人物を予
め身元・身上調査し評価する「適性評価」制度は、市民のプライバシーや思想信
条の自由に対する重大な侵害を招く。
特に労働者の権利に対する侵害は看過しえない。公務員のみならず行政機関か
ら委託を受けた民間企業や大学等の研究機関の労働者も、「漏えい」による処罰
対象となりうる。また、「適性評価」制度により、家族を含めてプライバシーや
思想信条の自由が侵害される上、調査によって得られた情報により労働者が人事
上の不利益を受ける危険性も高い。
3. 国会での審議経過は前例のない異常なものだった。
特定秘密保護法案は、10月25日に衆院に提出され、12月6日に自民党・
公明党によって強行可決、成立した。国会での審議はわずか40日間に過ぎない。
国会提出に先立つパブリックコメントは、9万件の意見中8割が反対であり、
その後、報道機関・全国の弁護士会をはじめ、多数の市民・団体が法案に反対の
声を上げた。
11月25日に福島県で開催された地方公聴会では7名が全て反対・慎重意見
だったにもかかわらず、自民党・公明党は翌26日に衆院特別委員会及び本会議
で強行採決した。
その後、11月29日には、自民党石破幹事長が法案反対のデモについて「テ
ロ行為と同質」とブログで発信し、市民の表現活動を敵視する安倍政権と法案の
本質を露わにした。
国民の反対、不安が大きいことを慮って、12月4日になって急遽「特定秘密」
を管理するシステムが提案されたものの、法案の本体が修正されることはなく、
12月5日に参議院特別委員会で、議事録には「聴取不能」と記載されているだ
けで、採決されたかどうか確認することすらできない喧噪と怒号の中で強行採決
された。
廃案・慎重審議を求める世論が高まり、連日抗議行動が大きくなり続ける中、
自民党・公明党は、市民・国民の声を聞くことなく、多数を頼みに強行採決を繰
り返し、法律を成立させてしまった。民主主義を破壊する暴挙というほかない。
4. 戦前の日本には軍機保護法や国防保安法を中心とした機密保護法制が存在し、
これが言論統制と軍国主義思想を蔓延させる重要な役割を果たして、悲惨な戦争
へと突き進む結果となった。
安倍政権は、国家安全保障会議設置法を成立させ、さらには国家安全保障基本
法や集団的自衛権行使を容認する方向での憲法解釈変更を狙っている。特定秘密
保護法は、アメリカと軍事情報を共有するために必要な法制だとされているが、
それはすなわち、集団的自衛権の名の下に、アメリカと共に武力を行使し、戦争
をする国へと突き進むということである。特定秘密保護法は、このような軍国主
義化に反対する世論やマスコミ報道を封じ込めることにこそその本質があると見
なければならない。
5. 国が扱う情報は主権者に対して公表・公開されることが本来の民主主義国家
のあり方である。情報公開制度や公文書管理制度の整備こそが求められるのであ
り、仮に国家安全保障の観点から一定の情報について秘密とすべき必要があると
しても、秘密としてはならない範囲や秘密としうる期間の特定・限定、第三者機
関によるチェック、情報アクセス権の保障、秘密解除請求手続の整備などが不可
欠である。
それらを全て無視する特定秘密保護法は、思想信条の自由、言論表現の自由を
保障し、議会制民主主義を定める憲法に違反しており、したがって、同法による
秘密指定や適性評価の実施、処罰はいずれも違憲無効というべきであり、施行期
日前に廃止されなければならない。
当会は、特定秘密保護法の施行阻止と廃止、さらには、民主主義国家としてあ
るべき情報公開制度等の整備に向けて、特定秘密保護法案に反対ないしは慎重審
議を求めた多くの市民らともに力をあわせて、引き続き取り組みを継続する決意
を表明するものである。
2013年12月13日
民主法律協会
会長 萬井隆令
http://www.minpokyo.org/information/2013/12/2714/
医師と歯科医師の会 基本的人権を守るために法廃止を求める
私たち医師・歯科医師は、特定秘密保護法案の衆参両院での強行採決に対し厳重に抗議し、改めて廃案にすることを求めます。
特定秘密保護法案は、憲法の定める基本的人権と平和を脅かすものであり、命の最前線で仕事をしている私たち医師・歯科医師は、これを見過ごすことはできません。
国民の知る権利が大幅に制限されれば、報道の自由、表現の自由の萎縮につながり、私たちの命に直結した大切な情報が得られなくなる可能性があります。
また、私たち医師・歯科医師が「特定秘密の取扱者」になった場合、日常診療において患者さんから得る病歴・薬物歴・家族歴などのプライバシーを、国に強制的に提供させられることになるかもしれません。
特定秘密に指定されれば、強制も秘密になります。これは医療者の守秘義務に大きく反し、たいへん危険な人権侵害に加担することになってしまいます。
秘密の範囲が曖昧であり、客観的に秘密を指定する機関も決まっていないこの法律が制定されれば、「秘密国家」「軍事国家」へと突き進み、たくさんの尊い命が危険にさらされる事態が起こるかもしれません。
多くの重要事項が特定秘密に指定されれば、国会も裁判所も政府の行為を抑制できなくなるからです。
私たち医師・歯科医師は尊い命を危険にさらす可能性の高い、特定秘密法案の衆参両院での強行採決に厳重に抗議するとともに、日本国憲法の定める基本的人権を守るために、廃案にすることを強く望みます。
2013年12月11日
特定秘密保護法案に反対する医師と歯科医師の会
http://haian.jimdo.com
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日本キリスト教婦人矯風会 民主国家のあるべき姿を求めて
特定秘密保護法成立に抗議し、廃止を求める声明
2013 年12 月10 日
(公財)日本キリスト教婦人矯風会は12月6日に政府が国民の反対の声も聞かず、慎重審議を求める声も無視し特定秘密保護法案を強行採決し成立させたことに強く抗議します。
特定秘密保護法案は国のかたちを変えるほどの重大な法案にもかかわらず、民意を問う国政選挙の自民党の選挙公約でも、臨時国会冒頭の首相の所信表明演説でも触れられず、唐突に提出された法案です。
国論を分ける重大な法案にもかかわらず、パブリックコメントの意見募集期間も異常に短く2 週間しか設けられませんでしたが、パブリックコメントに寄せられた意見は9 万480 件、その約8
割は反対を表明していました。また、特定秘密保護法案に関する公聴会は、11月25日福島で初めて開かれましたが、参考人は与党推薦者にいたるまで全員が懸念を示し、反対していました。それにもかかわらず公聴会の翌26
日に衆議院で強行採決するという手段にでたことは民主主義への冒涜であり、許すことはできません。
良識の府といわれる参議院での審議は衆議院での審議より更に短く、多くの問題が指摘され、大臣の答弁も二転三転し法案としても粗雑さが目立つ不完全なものでした。
この法律によって、政府により恣意的に膨大な秘密が指定されます。政府は特定秘密の妥当性をチェックする機関を創設するといいますが、想定している機関は中立が担保される第三者機関とは程遠いものです。
特定秘密保護法は国民の知る権利を侵害し、民主主義の理念を踏みにじるもので、私たちは断じて許すことは出来ません。国内の市民団体、労働組合、弁護士、学者・研究者、新聞労連・ジャーナリスト、作家、演劇人・映画監督など数多くの人々が反対の声を上げる一方、ビレイ国連人権高等弁務官はじめ海外からも多くの懸念が示されました。国際社会からも日本の民主主義の成熟度に疑問符がつけられた事は恥ずべきことです。
この法律が戦争へとつながる危険をはらむことは、過去の戦争への道を許した情報統制の歴史が教えるとおりです。
私たちは決してこれを終わりとせず、この法律にかかわる政府の動きを監視し、法律の廃止・撤回を要求し、国民の知る権利を当然の事として尊重する、民主国家としてあるべき国の姿を求めて活動を続けていく覚悟です。
公益財団法人 日本キリスト教婦人矯風会
理事長 佐竹順子
婦人民主クラブ 平和と民主主義の破壊を許さない
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「特定秘密保護法」強行採決に強く抗議し、
廃止・廃棄を求める(声明)
2013年12月13日
婦人民主クラブ
会長 櫻井幸子
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-2-8
第12宮庭ビル303
国民を秘密の鎖でつなぐ稀代の悪法、「特定秘密保護法案」が、12月6日、国民の怒りが全国で沸騰するなか、安倍内閣と自民、公明両党によって参議院で強行採決されました。慎重審議を求める声は8割を超えたにもかかわらず、世論の広がりを恐れるかのようにまともな審議もないまま、多数を頼んでの強行は暴挙という以外にありません。そして、この法律の見直しを求める世論調査が82.3%にも上る状況の中で、今日、13日、「公布」されました。
婦人民主クラブは満身の憤りを持って抗議するものです。
わずかな審議時間の中でも明らかになったことは「秘密」の内容がどこまでも拡大され、「秘密」の内容も示されず、重い処罰を一般国民も負わされるなど、日本国憲法で謳われている国民主義、平和主義、基本的人権尊重の原則をことごとく否定する内容であることです。すでに石破茂自民党幹事長は「デモはテロ」「特定秘密の報道は処罰する」など、秘密保護法の本音を露呈させる発言を次々と行っています。
「国家安全保障会議(NSC)設置法」に続き、さらに次期国会では「集団的自衛事態法案」や「国家安全基本法案」などの成立を狙い、米国と一体になって戦争する国づくりの危険な道へアクセルを踏み始めています。これまで国民の強い反対にあって何度も廃案となった「共謀罪」創設まで目論んでいることを隠していません。武器輸出三原則見直しや新たな防衛大綱の閣議決定など、その暴走は止まりません。
しかし、秘密保護法の運動は世論を変えました。内閣支持率は急降下し50%を切りました。秘密保護法反対で声を上げた各分野、各層の人々は、「成立」後も一歩も引きさがらず、運動の継続、発展を誓い合っています。
戦前のファッショ国家を再来させない、平和を手離さないと誕生した婦人民主クラブは、これらの人々とスクラムを組んで秘密保護法の廃止をめざし、運動を強めます。そして憲法と民意を踏みにじる暴挙を繰り返す安倍内閣の即時退陣を強力に求めます。
婦人民主クラブはこれからも全力を挙げ、日本国憲法を守り、平和と民主主義の破壊を許さない広範な共同のたたかいを粘り強く続ける決意を、ここに表明します。
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暗黒時代に逆戻りする法律の撤回を
声明
「治安維持法の再来」=「特定秘密保護法」
に厳重抗議し、施行・発動を許さず、撤廃を強く求める
小選挙区制の魔術によって政権に復帰した安倍晋三・自公政権は、去る12月6日、衆議院に続いて参議院でも、稀代の悪法「特定秘密保護法案」の採決を強行しました。満腔の憤りをもって、厳重に抗議するものです。 この「特定秘密保護法」は、国民監視と情報・権力の集中による「戦争国家づくり」の根幹を成すものとして、強行採決後も過半数を大きく上回る国民が反対し続け、海外からの批判も日増しも強まっています。
この法案の強行可決は議会制民主主義の破壊というにとどまらず、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法および国家安全保障基本法案の“3点セット”で、集団的自衛権の容認による「海外で戦争する国」へと、階段を上る危険な暴走と言わねばなりません。
防衛や外交など、日本の安全保障に支障があるとされる情報を、「特定秘密」に指定し、それを漏えいした場合などには、最高10年の刑を科す、という主旨ですが、何が秘密かも秘密で、国民の日常生活にも深刻な悪影響をもたらすものであり、憲法違反の疑いもきわめて濃厚であって、とうてい容認できるものではありません。
また、「秘密」を扱う公務員や関係業者だけでなく、配偶者・家族や友人・知人など広範囲の人たちも「適正評価」と称する身元調査にさらされ、国民全体が権力の監視下に置かれて、弾圧される事態が容易に想定され、萎縮効果が懸念されています。さらには、主権者である国民の知る権利や取材・報道の自由をはじめ、基本的人権は根底から覆され、戦前の暗黒時代に逆戻りしてしまいます。
「戦争は、秘密とともにやってくる」といわれます。そのことは戦前、あの悪名高い治安維持法下で国民の「目、耳、口」をふさいで侵略戦争へと駆り立て、日本国民だけでなく、アジア諸国民や世界の人たちに多大の損害と苦痛をもたらした、忌まわしい歴史的事実が、雄弁に物語っています。
こうした痛苦の歴史的教訓を語り継ぎ、今日に生かし、二度と戦争は起こさせないと誓って活動している私たちは、戦争国家づくりへと暴走する安倍政権に、とりわけ憂慮の念を表明せざるを得ません。今般の秘密保護法の強行採決に重ねて厳重抗議し、撤廃を求めるとともに、あの暗黒の時代へと歴史の流れを逆戻りさせる一連の法案を廃案とするよう、あわせて強く求めていくものです。
2013年12月10日
「兵庫の『語り継ごう戦争』展」実行委員会
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札幌弁護士会 法の撤回を
国会での採決強行による特定秘密の保護に関する法律の制定に抗議し、同法の廃止を求める声明
先般の臨時国会で、特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)が成立した。
1.
(1) 本法律がその内容において、基本的人権を侵害するものであること、民主主義を軽視するものであり、憲法上の諸原理をないがしろにするものであることは、当会が2012年3月23日に公表した「秘密保全法制定に反対する会長声明」及び2013年11月21日に公表した「特定秘密の保護に関する法律案の制定に反対する会長声明」において明らかにしてきたところである。すなわち、本法律には①行政機関の長が指定する「特定秘密」の範囲がその法文上広範、不明確であり、その結果、国民が国政に関する重要な情報から遠ざけられることになりかねない②「特定秘密」の漏えい行為や「特定秘密」の取得行為のみならず、これらの未遂や共謀、独立教唆又は扇動をも処罰する点、処罰範囲が極めて広範であることから、国政に関する情報について国民がアクセスすることや公務員がこれを外部に発する行為を萎縮させる可能性が大きく、また報道機関による取材行為を刑罰によって萎縮させ、取材の自由・報道の自由を実質的に失わせることになり、ひいては民主主義の前提である国民の知る権利を侵害する③「特定秘密」の取扱をする者について、公務員のみならず民間事業者に対しても、高度のプライバシーといえる情報に関し「適性評価」を目的とした調査を許容する点、国民のプライバシーの権利を侵害するおそれがある上、個人の政治活動や思想信条にまで踏み込む調査がなされる危険性さえ孕んでいると評価できる、等の問題点があることから、当会は本法律に一貫して反対してきた。
かかる指摘は、当会のみならず、かねてより日本弁護士連合会並びに全国の弁護士会が同じくしてきたところである。また研究者や人権団体はもとより、最近は、ジャーナリストや文化人などからも同様の指摘がなされるに至っている。加えて、国連人権高等弁務官からは「『秘密』の定義が十分明確ではなく、政府が不都合な情報を秘密扱いする可能性がある」と懸念が表明され、諸外国からも「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(いわゆるツワネ原則)」に反するとの指摘を受けるなど、国内外を問わず、本法律の制定を深く憂慮する声が出されていたところである。
(2) なお、国民からの批判の声に押される形で、参議院での審議の最終盤において、「第三者機関」を設置する構想などが政府答弁としてなされている。
しかしながら、かかる構想はそれ自体、衆議院では何ら審議されていなかったうえ、そもそもここで検討されている「第三者機関」はいずれも行政機関内に設置されるか、あるいは運用基準策定に関する総理大臣の諮問機関としての位置づけにすぎないものであることから、「第三者による監視によって、特定秘密指定の適正を確保する」するものとは到底いえない。したがって、かかる機関が設置されたとしても、基本的人権を侵害し憲法上の諸原理をないがしろにする本法律の危険性は何ら払拭されるものではない。
1.
(1) また本法律に関しては、その内容のみならず、その審議自体が極めて粗雑であり、不十分であったといわざるを得ない。
すなわち本法案の審議においては、法案内容の不備や不明確な点が次々と指摘されたにもかかわらず、担当大臣が答弁を二転三転させるなど、政府が本法案について十分な検討すらせず国会に上程していたことが明らかになった。これに比例するように、国会内外では、本法律について十分な審議時間を経た慎重審議を求める声が高まっていたところである。
それにもかかわらず政府与党は、まず衆議院において特別委員会で強行採決したうえ、本会議においてもその採決を強行した。
当会は2013年12月2日に「特定秘密の保護に関する法律案の衆議院での採決の強行に抗議し、参議院での廃案を求める会長声明」を公表し、かかる採決の強行に強く抗議している。
(2) しかしながら政府与党は、参議院においても十分な審議時間を確保しないまま、参議院特別委員会においても再び強行採決の愚行を繰り返した。
当会は2013年12月5日に「参議院国家安全保障委員会における特定秘密保護法案の強行採決に関する札幌弁護士会会長談話」を公表し、かかる強行採決は民主主義に対する挑戦であり、今臨時国会での成立を目指す拙速な審議態度を直ちに改めるように政府与党に求めたものの、これが容れられることなく、同月6日、本法律は成立するに至った。
(3) 基本的人権を侵害し、憲法上の諸原理をないがしろにする本法律を、十分な審議時間を確保することもないまま、民主主義のルールを無視して成立させたことは、我が国における民主主義を踏みにじるものであり、断じて許すことができない。当会は、かかる政府与党の姿勢に対し最大級の非難をする。
2.
当会はこの間、本法律案の廃案を求め、市民集会やデモ行進、街頭活動などにより本法律案の危険性を訴えてきた。またある世論調査によればその過半数を占めたという本法律案への反対や慎重審議を求める国民・市民の声は、近年まれな大規模のデモ行進や街頭行動、国会議員への要請行動などとして現れ、当会もこれら国民・市民とともに反対運動を展開してきたところである。当会は、これら国民・市民の活動は基本的人権を保持するための国民自身による「不断の努力」(憲法12条)を表すものと考える。
3.
当会は、このような国民・市民の声を無視する形で成立した、基本的人権を侵害し、民主主義を始めとする憲法上の諸原理をないがしろにする本法律を即時に廃止するよう求める。
加えて、本法律に基づく関連法令の改正やその運用によって国民・市民の基本的人権が不当に制約されることのないよう監視し、国民・市民とともに本法律の廃止に向けた取り組みを継続していくことをここに表明する。
2013年(平成25年)12月10日
札幌弁護士会会長 中村 隆
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新聞労連 弾圧に屈せず 知る権利守る
声明
2013年12月9日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 日比野 敏陽
秘密保護法の廃止を強く求める
特定秘密保護法案(秘密保護法案)は12月6日深夜、自民党と公明党によって強行可決された。憲法に明らかに違反し、根本的な欠陥があるにもかかわらず、十分な審議もなく強引に可決された。「良識の府」であるはずの参議院の強行採決は憲政史上に残る暴挙だ。新聞労連は安倍政権と与党の卑劣な行いに対し強く抗議するとともに、本日から秘密保護法の廃止を求める運動に取り組むことを宣言する。
秘密保護法には報道への「配慮」条項が入っているが、配慮するかどうかは当局の胸先三寸である。秘密指定も密室で行われる。新聞記者が秘密に接触しようとしただけで処罰対象になる構造がある限り配慮規定は機能しない。新聞労連が加盟する国際ジャーナリスト連盟(IFJ)も「ジャーナリストを好きなように起訴できる可能性を政府に許すいかなる法律も、非難されなければならない」と批判している。
国の情報は主権者である国民のものであり、一部の政治家や官僚のものではない。ところが、秘密保護法は政府が恣意的に情報を秘密指定でき、永久に非公開にすることも可能にした。行政が情報を統制し司法や立法府に対して突出した力を持てば、それは独裁国家だ。安倍首相は国会の終盤に秘密指定をチェックする機関の設置を持ち出したが、身内の官僚で固める組織に過ぎず、おためごかしもはなはだしい。
一方、新聞の経営者団体である日本新聞協会はこの間、法案に対し「強い危惧」を表明したに過ぎず、事実上、何もしてこなかった。国会審議で法案の欠陥が次々と明らかになったにもかかわらず、新聞協会は何の発信も行わなかった。新聞協会の姿勢は、新聞業界に対する読者・国民の不信感を増幅させ、その価値を損ねているといえよう。極めて許しがたい行為だ。
法が施行されたとしても、新聞労働者はひるまない。読者・国民に知らせなければならない情報は何が何でも知らせる、という気概は法の成立で失われることはない。仮に秘密保護法による弾圧があれば、新聞労連は一致団結して闘うだけである。
以上
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刑事法研究者 法の速やかな廃止を求める
特定秘密保護法の成立に抗議し、速やかな廃止を求める刑事法研究者の声明
臨時国会における審議の問題点
2013年12月6日深夜、参議院本会議において「特定秘密の保護に関する法案」の採決が行われ、特定秘密保護法は成立した。しかし、臨時国会におけるその審議は、特に以下の点において、極めて異常なものであった。
第1に、審議時間が異例に短かった。衆議院ではわずか約46時間、参議院ではその半分にも満たない約22時間に過ぎない。審議終盤に「特定秘密の保護に関する法律案【逐条解説】」という文章や省庁間の法令協議資料が開示されたが、審議する時間はなかった。
第2に、衆参両議院の「国家安全保障に関する特別委員会」における議決手続が異常であった。この両委員会における議決(2013年11月26日、同年12月5日)は、一方的な質疑打ち切りによる強行採決であり、採決の正当性さえ疑わしいものであった。福島での公聴会では、意見陳述者7名全員が反対ないし慎重な意見であり、賛成意見は皆無であったにも拘わらず、その翌日に衆議院特別委員会で強行採決されている。このように公聴会が、法案成立に向けてのアリバイづくりどころか、福島県民の原発事故災害の経験を踏まえた真摯な訴えをも踏みにじるものであった。
第3に、拙速な審議を通じて法案に対する国内外の懸念の声に全く耳を傾けなかった点に、審議手続の非民主性がはっきりと示されている。法案には、平穏な市民生活への重大な影響を懸念する声があり、いわゆる「ツワネ原則」をはじめとする国際的な動向に離反するという指摘があり、また慎重審議を求める意見が各分野の専門家によって表明されていた。法案の審議は、これらの声を完全に無視するものであった。
この異常な事態は、端的に言えば、多角的な視点を取り入れて審議を尽くすのではなく、数に頼んで既定の結論に目掛けて突っ走る政府・与党の議事運営の非民主性を示すものである。法案作成の手続はもとより、パブリック・コメントのやり方もこれまでになく異常と言わざるを得ない。審議過程全体が透明性や民主的な手続を欠いていたことも、決して看過しえない重大な瑕疵と評せざるを得ない。
この抗議声明を発表する理由
私たちは、2013年10月28日、憲法・メディア法の研究者とともに記者会見を開いて、「特定秘密保護法の制定に反対する刑事法研究者の声明」(以下、反対声明という)を発表した。反対声明は、法案の基本的性格を軍事立法であると直言した上で、秘密指定のあいまいさ、日本国憲法の基本原理である平和主義・国民主権(民主主義)・基本的人権(プライバシー権、思想・信条の自由、知る権利、報道・取材の自由、学問の自由)の尊重との抵触、罪刑法定主義違反、適正手続違反といった問題があることを、1万字を超える本文において、詳細に論じるものであった。
およそ声明は、その内容が詳細になればなるほど、異論も生じやすくなり、賛同者も得られにくくなる。しかし私たちの反対声明が、呼びかけ人を含めて132名(2013年11月8日時点)もの刑事法研究者の賛同を得たのは、まさしく法案の、深刻で抜きがたい欠陥によるものと言えよう。
しかし、私たちが指摘した問題点は、国会審議において全く払拭されておらず、それどころか、衆参両議院の委員会および本会議の場で、ほとんど議論さえ行われなかった。このままこの法律が施行されることがあれば、基本的人権の保障が極めて危ぶまれる事態となることは、火を見るよりも明らかである。
反対声明の呼びかけ人であった私たちは、事の重大性に鑑み、この抗議声明を急ぎ発表することにした。以下、反復をいとわず、特に刑事法の観点から、特定秘密保護法の問題点を指摘しておきたい。
罰則に関する問題点
罰則について見ると、まず、処罰規定はそれぞれ基本的に実害の発生しない段階で犯罪として捕捉し処罰するものであるにもかかわらず、全体に法定刑が重すぎる。また、処罰の対象が、公務員でない民間事業者や研究者にまで及び、犯罪とされる行為の面でも、過失行為ばかりか、共謀、独立教唆、扇動までも含まれ、極めて広範にわたる。
このような重罰化、処罰の早期化は、国民一般を秘密から遠ざけ、内部においても、不正の告発を躊躇させる萎縮効果を生み出すことになる。これは、国民が言論を通じて国政を監視し、統制するという機能を麻痺させるものであり、ひいては国民主権の原理を空洞化させることになる。また、保護客体の面でも、特定秘密に当たるか否かは、結局のところ、行政機関の長の指定に懸かっている点は、一見すると修正が施されているかのようであるが、実質的な改善にはなっていない。たしかに、別表で何が特定秘密に指定されうるかは一応示されているが、極めてあいまいで、多分に拡大指定の余地を残している。このような処罰規定のあり方は、法律主義、明確性、内容の適正という罪刑法定主義の根幹をなす原則に背馳しており、違憲と言わざるを得ない。
さらに、罰則の中に、不当とされる目的・手段による部外者の取得行為をも処罰の対象とする規定がある。こうした機密の取得行為に対する一般的かつ広範囲の処罰は、公務員法はおろか、現行自衛隊法の防衛秘密に関する罰則規定にすらないものである。特定秘密の性格や「外国の利益を図る」という行為の目的からすると、これは戦後廃止された「間諜罪」の復活ともいうべきものであり、そもそも日本国憲法の戦争放棄の原理と到底相容れるものではない。
そして、自首による刑罰の必要的減免は、人々の間の裏切りと不信を助長するものであり、およそ人間性に反する反道徳的な仕組みを社会生活の中に持ち込むものであり、個人の尊重・人間の尊厳に反する。
捜査と刑事裁判に関する問題点
秘密指定の対象のあいまいさは、捜査機関による市民生活への恣意的で不当な介入を容易にする危険性をもはらんでいる。このことは、報道機関などについても例外ではない。なるほど捜査機関が逮捕・捜索・差押えといった強制捜査を行うためには、裁判官による事前の司法審査に基づく令状を要する(憲法33条、35条)。しかし本法の下では、裁判官に「特定秘密」の内容が明らかにされない可能性がある。事件の核心である「特定秘密」が知らされない、あるいはあいまいなまま、十分な司法審査を遂行できるとは到底考え難く、憲法33条、35条に抵触する疑いが強い。処罰によらずとも、捜査自体が事実上の制裁効果を有することになり、表現の自由だけでなく、集会・結社の自由、学問の自由などの憲法上の権利に対する萎縮効果をも持っていると言わねばならない。
そして刑事裁判においても、「特定秘密」の内容は明らかにされないまま公判が運営される可能性が高い。これでは、被告人は、自身が問われている犯罪事実の中核を知ることができない。特に、秘密漏えいの結果が生じていない未遂、共謀、教唆、扇動の場合、「特定秘密」の内容を知ることなく、被告人が防御活動を展開することは困難である。憲法31条の適正手続保障に反すると言わざるを得ない。また、このような苦境を打開すべく、被告人や弁護人が「特定秘密」の内容にアクセスしようとすれば、「特定秘密」取得行為あるいは未遂、共謀、教唆、扇動に該当するとして、捜査・訴追、処罰の対象になる可能性がある。憲法の保障する被告人の防御権や弁護人の援助を受ける権利に対する著しい侵害が生じる。知る権利に対する不当な侵害かどうかが争われているにも拘わらず、「特定秘密」という裁判の核心部分が公開されないという事態は、憲法82条の裁判公開原則にも反する。
さらに国会での答弁によれば、検察官は、秘密の内容自体を明らかにしなくとも、特定秘密に指定された手続や指定の理由などの外形的な事実から、秘匿の必要性が実質的にあることを立証することができ、被告人・弁護人の反証がない限りは、秘匿の実質的必要性が推認されるという。しかしこのような「外形立証」の下では、刑事裁判は、行政機関の長が行った秘密指定を追認する場へと形骸化する危険がある。被告人・弁護人の反証といっても、外形的な事実に関する反証に限定されるならば、防御権に対する著しい制約となる。また外形的な事実から秘匿の実質的必要性を推認することは、刑事裁判の鉄則である「疑わしきは被告人の利益に」、有罪の証明基準である「合理的疑いを超えた証明」に抵触する疑いが強い。知ろうとした情報が「特定秘密」でない可能性が常に存在することになるからである。
特定秘密保護法は市民を危険にさらす悪法
安倍晋三首相は、臨時国会閉会後の記者会見において、「通常の生活が脅かされることは断じてあり得ない」と語った。「特定秘密保護法は国民の皆さんには何の関係もない法律」とまで言い切った国会議員もいる。しかしこの発想自体が、国民を重要な国政への関心から遠ざけようという倒錯したものであって、根本的に誤っている。主権は国民にある以上、国政に関する情報はすべて、国民がきちんと把握できるようにした上で、果たしてその政策や実施状況は妥当か、国民の検討・批判に晒さなければならない。
情報が、行政機関によって秘密指定されたとたん、国民が知らなくてよいもの、知ってはいけないものに根本的に変質してしまうということはあり得ない。国政に関する情報を知り得なければ、国民は、行政機関や政府の言いなりにならざるを得ない。しかも刑事法の観点から検討したとき、公務員以外の者による特定秘密の取得行為も処罰されることをはじめ、この法律の萎縮効果が甚大であることは、前述の通りである。結局、国民は「見ざる、言わざる、聞かざる」という三猿と化し、そうであれば処罰の可能性もないというに等しく、国民を主権者の地位から猿公の地位に引き下げるものであって、そのような無関心・無感動な国民生活を強いるものとして、本音を暴露したものと言わざるを得ない。
戦争への準備や原発事故など、国民生活に重大な影響を及ぼす事項が隠ぺいされ、深刻な被害を受ける危険が大いに高まる。「生活は脅かされない」、「何の関係もない法律」などとうそぶくことは、決して許されない。また、運用や修正によって、この法律の根本的欠陥が是正されるというものでもない。
なお、今後、監視体制強化のために、共謀罪や刑事免責の一般化、捜査目的でない行政盗聴などの法制の提案が行われる可能性もある。このような法制の整備によって、国民の自由は具体的に侵害される危険性がある。このような法制整備に対する警戒を厳しくする必要があるということも、あわせて指摘しておきたい。
反対声明の呼びかけ人であった私たち刑事法研究者は、特定秘密保護法の成立に強く抗議し、同法の速やかな廃止を求めるものである。
2013年12月11日
呼びかけ人
村井 敏邦(代表、一橋大学名誉教授、弁護士、日本刑法学会元理事長)
斉藤 豊治(代表、甲南大学名誉教授、弁護士)
浅田 和茂(立命館大学教授)
安達 光治(立命館大学教授)
海渡 雄一(弁護士、日本弁護士連合会前事務総長)
川崎 英明(関西学院大学教授)
葛野 尋之(一橋大学教授)
斎藤 司(龍谷大学准教授)
佐々木光明(神戸学院大学教授)
白取 祐司(北海道大学教授)
新屋 達之(大宮法科大学院教授)
武内 謙治(九州大学准教授)
土井 政和(九州大学教授)
豊崎 七絵(九州大学准教授)
中川 孝博(國學院大學教授)
新倉 修(青山学院大学教授)
渕野 貴生(立命館大学教授)
本庄 武(一橋大学准教授)
前田 朗(東京造形大学教授)
松宮 孝明(立命館大学教授)
三島 聡(大阪市立大学教授)
水谷 規男(大阪大学教授)
守屋 克彦(弁護士、元東北学院大学教授)
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自由法曹団 秘密保護法反対に全力でたたかう
秘密保護法案強行採決に抗議し、
たたかいのさらなる前進を
12月6日、政府・与党は、参議院で、特定秘密の保護に関する法律(秘密保護法)「修正案」の採決を強行した。国民の圧倒的多数が反対する日本国憲法を蹂躙する法案の採決が、かたちだけの審議により、送付からわずか9日で強行されたのである。
全国2000名の弁護士で構成する自由法曹団は、強行採決の暴挙を行った政府・与党に、満腔の憤りをもって抗議する。
1 生み出されようとしているもの
秘密保護法では、
① 「行政機関の長」が、防衛、外交、スパイ、テロにかかわる広範な情報を特定秘密に指定して、「なにが秘密か」も秘密にし、
② 特定秘密をメディアや市民、国会・裁判所などから秘匿する一方で、取り扱う公務員・労働者や家族を「適性評価」による監視と分断のもとにおき、
③ 漏えいや「管理を害する方法での取得」、共謀・教唆・扇動を重罰に処する。
「長」の一存で指定や提供ができる秘密保護法は、一部の高級官僚による情報の独占と恣意的な操作に道を開く。その結果、報道の自由や知る権利、国会の審議権や裁判所の司法権すら排除された、「情報寡占体制」が生み出されることになる。
国家安全保障会議(NSC)設置法と同時に生まれた秘密保護法は、次に予定されている「集団的自衛事態法案」や「国家安全保障基本法案」と結びついている。これらが完成するとき、この国は「集団的自衛権」を口実に「米国有事」に参戦する国に変容する。
石破茂自民党幹事長の「デモはテロ」発言は、秘密保護法の反民主主義的な性格をはしなくもあらわにした。生み出される社会は、政府に反対する声が「テロ」として排斥され、公安警察と密告・監視が横行する社会に違いない。
こんな国と体制・社会は断じて許されてはならず、「導火線」になる秘密保護法はただちに廃止されなければならない。
2 40日間のたたかい
秘密保護法案が提出された10月25日から40日余になる。
この40日間、法案は各方面からの厳しい批判にさらされ続け、本質や問題点は徹底的に暴露された。自由法曹団もまた、法律家の立場から検討・解明を加え、意見書「徹底解明 秘密保護法案」(11月5日付)、「秘密保護法/日本版NSC 山積する問題」(11月19日付)、「参議院での秘密保護法案廃案を求める」(12月3日付)を発表した。批判的な検討に、いかばかりかは寄与できたと考えている。
「なぜ必要」「なぜ急ぐ」「なにが指定できる」「どうチェックする」「どう管理する」「調査はどこまで広がる」「なにが処罰される」「国会はどうなる」「裁判はどうなる」「報道の自由はどうなる」・・これらの「問い」に、なにひとつまともな説明はなかった。
答弁は迷走をかさね、迷走の末に「修正案」が生み出された。
① 指定の期間を60年に延長して、「永久秘密」まで認め、
② 権限と責任が明確でない内閣総理大臣の関与で、「秘密の闇」をさらに深め、
③ 解決すべきはずの課題を、附則によって先送りし、
④ できの悪い法案を小手先でこねくりまわし、いっそう奇々怪々なものにした
もので、およそ修正などと言えるものではない。
「修正」秘密保護法は法の体裁をなさない「欠陥法」で、情報公開が趨勢になっている国際社会で認知され得るものではない。
そこまで追い込んだもの、それは、澎湃として巻き起こり、日を追うごとに燃え広がった国民の声であった。本質と内容が明らかになるにつれて反対の声が拡大し、海外にまで広がった。秘密保護法反対のたたかいは、平和を守る運動、民主主義や人権を擁護する運動、情報公開の運動、原発やTPPに反対する運動などと、深く結びついた。
自由法曹団は、多くの法案に反対する運動を経験してきたが、これほど圧倒的な広がりを示したたたかいにかかわったことは、多くはない。
秘密保護法は強行された。だが、強行した政府・与党は包囲され、国民からも国際世論からも孤立している。
3 明日へ
なにが隠されようとし、なにが排除されようとしているのか。
政府・与党は、どんな国と社会をつくろうとしているのか。それが、私たちのくらしとどれだけ深くかかわっているか。
たたかいのなかで学び取ったものは、きわめて大きい。そのたたかいを、さらに前進させなければならない。
秘密保護法の発動を許さず廃止を要求し、報道の自由や知る権利を拡大し、自衛隊や警察などへの監視と批判を強めなければならない。
民意とかけはなれた暴挙を行った政府・与党を許さず、国民の声が反映される議会と政治を実現しなければならない。
「国家安全保障基本法案」などの解釈改憲の策動や「9条改憲」などの明文改憲の策動を阻止し、民主主義と人権を守るたたかいを強めなければならない。
戦争の道を許さず、民主主義と人権を守る力は国民のなかにあることを、秘密保護法反対のたたかいは実証した。
自由法曹団は、ともにたたかった諸団体・諸階層の皆さんに、さらなるたたかいを呼びかけるとともに、自由法曹団みずからも全力でたたかう決意を表明する。
2013年12月 6日
自由法曹団
団 長 篠原義仁
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沖縄マスコミ労協 国家の欺瞞と対峙する
2013年12月7日
特定秘密保護法の強行成立に抗議する緊急声明
沖縄県マスコミ労働組合協議会
議長 次呂久勲
自民党と公明党の政府与党は12月6日深夜、国民の大多数の反対を押し切って特定秘密保護法を成立させた。国の都合で際限なく秘密を広げられる特定秘密保護法は、主権者である国民の知る権利や報道の自由を侵害し、適性評価によるプライバシー侵害など数々の問題を含んだ、明らかに憲法に違反した情報統制法だ。法案が国会に提出されてわずかな期間で、廃案を求める市民や有識者の声がかつてない広がりを見せたのも、日本社会が戦前のような国家統制・全体主義の色を強めていくことに国民の多くが危機感を抱いたからにほかならない。それにも関わらず、衆参両院で十分な審議を尽くすことなく法案の強行採決に踏み切った安倍政権のやり方は、独裁的なファシスト政治の本質を露呈し、民主主義を最上の理念とする日本の戦後政治史に大きな汚点を残した。特定秘密保護法の廃案を訴え続けてきた私たち沖縄県マスコミ労協は今回の強行成立に強い怒りを覚え、厳しく抗議する。特定秘密保護法の制定を絶対に許すことができず、再びこれを廃止するまで断固として闘い続ける。
特定秘密保護法が制定されたことで、行政が情報公開に後ろ向きになるなど、社会全体が萎縮する悪影響が生じる恐れがある。特に、広大な軍事基地を押し付けられ、外交・安全保障に関わる情報と生活の場とが隣り合わせになっている沖縄においては、特定秘密保護法による統制が官民問わず市民生活や経済活動など広範に及んでくることが懸念される。また、尖閣諸島周辺で日中の緊張が高まる中で、日本政府の外交・安全保障の今後の舵取りひとつで軍事衝突の火種を招きかねない情勢がある。特定秘密保護法とセットで創設された国家安全保障会議(日本版NSC)は、関係閣僚や一部の官僚、そして自衛隊の制服組によって外交・安全保障の計画を立案する組織であり、その協議の中身は沖縄県民の安全と深く関わっている。永遠の秘密が約束された密室の中でその協議を許してしまうことは、沖縄を再び戦場にしてしまう国家の過ちをただすことができないという、この上なく危険な状況なのである。
そのような中、住民の安全に関わる情報を提供するため、軍事基地や外交・安全保障に関する取材を精力的に行ってきた沖縄のメディアに、さまざまな取り締まりや威嚇の手が及んでくる事態が想定される。しかし、このような取り締まりは報道の自由に介入する権力の乱用であり、断じて許されるものでない。このような挑発を受け入れる必要は一切なく、すべて跳ね返すのみである。われわれ沖縄の報道機関に従事するひとりひとりは、特定秘密保護法が制定されたからといってあきらめや自粛の空気に浸ることは決してない。これまで先輩方が築いてきた報道精神と取材手法をしっかりと受け継ぎながら、県民の立場に立った報道をより一層貫いていく決意を新たにする。
この特定秘密保護法の最大の問題として、戦前の軍機保護法、治安維持法と同様に法律の拡大運用を許す余地を抱えていることがあり、これによって公安警察による取り締まりが横行していく恐れがある。既に自民党の石破茂幹事長が特定秘密保護法に反対するデモに対し「テロ行為と変わらない」との認識を示したように、体制に異議を唱える国民に統制と監視の矛先を向けていく運用の芽が生じている。辺野古新基地建設やオスプレイ県内配備、南西諸島への自衛隊の配備展開に反対の声を上げてきた市民団体や労働組合による運動は、真っ先に監視・統制の対象となるだろう。特定秘密保護法を強行した安倍政権の政治姿勢を見れば、基地のない沖縄を求める市民の声を強権的に押しつぶし、日米一体の軍備強化を推し進めていくことに何の躊躇もないだろう。私たちは、表現の自由や思想・信条の自由を侵害する不当な弾圧を許さず、沖縄への基地押し付けの政治を跳ね返していく。
世論に真っ向から挑んで特定秘密保護法を制定させた安倍政権と自民党は、次のねらいを改憲に定め、その前段として集団的自衛権容認の憲法解釈へと突き進むだろう。私たちはそのような権力の増長と企みに、決して負けない。憲法を変えさせない。私たちは今一度、国民主権の原点に立ち返り、国民を裏切る悪法を強行した安倍政権を許さず、特定秘密保護法を廃止にする運動を広げていこうではないか。われわれ沖縄県マスコミ労協は、民主主義社会の根幹である国民の知る権利に奉仕する者として、国民への秘密を作ろうとする国家の欺瞞と対峙し、平和な沖縄を守り抜く使命をあらためて表明する。
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出版労連 廃止に向けてたたかおう
《声明》
出版労連は、民主主義とは相いれない特定秘密保護法の成立強行に抗議する!
2013年12月6日は、首相・安倍晋三が主導してきた暴虐悪政のなかでも、最悪の日として歴史に刻まれることとなった。自由民主党と公明党は、国民世論を無視し、「自由」と「民主主義」を蹂躙し尽くし、「公明」さを投げ捨てて特定秘密保護法を可決成立させた。「成立ありき」の政府・与党は、11月26日の衆議院特別委員会〜衆議院本会議と同様に、12月5日の参議院特別委員会での暴力的な採決強行を「正当」だと強弁し、12月6日深夜の採決に持ち込んだ。法案が国会に提出された10月25日以降、地方公聴会などのペテン的手法と与党の国会議員数に依拠した暴挙に満腔の怒りをもって抗議する。同時に、特定秘密保護法の廃止をめざしてたたかい続けることを誓う。
安倍首相は、特定秘密保護法に先立って成立させた国家安全保障会議(日本版NSC)設置法にもとづき、12月4日には第一回会合を開催した。驚くべきことに、その内容は「秘密」とされたのである。いよいよ特定秘密保護法の制定を歓迎しているアメリカと一緒になって「戦争する国」へと歩を進めた。
戦争政策に反対する声を抑え込むために、憲法の三大原則をなきものにしようと特定秘密保護法の制定に必死になった。日を追うごとに、廃案を求める声が圧倒的になっていたにもかかわらず、国民主権は置き去りにされ、基本的人権は踏みにじられ、平和主義は投げ捨てられて、国内の治安維持を真の目的とした特定秘密保護法は成立させられた。「『知る権利』が国家・国民の安全に優先するという考え方は問題がある」(町村・自民党秘密保護法プロジェクト・チーム座長)、反対のデモに対して「テロと本質的に変わらない」「民主主義の手法とは異なる」(石破・自民党幹事長)などの発言は、民主主義を愚弄するものである。これでは民主主義は朽ち果てる。
出版労連はじめ、言論・表現の自由を生命線とし拠り所としている陣営がつとに指摘し批判し続けたように、特定秘密保護法は「知る権利」と「報道・表現の自由」を奪う。審議の過程で、自民党幹部の横暴な発言が相次いだことも忘れてはいけない。「報道・表現の自由」が奪われた社会は暗黒である。「知る権利」がはく奪された国民は、真実を知らされないままに時の権力者に動かされる不幸な生き方を強いられる。自民党改憲草案では、「国防軍の保持」と「国防軍の機密保持」が謳われ、表現と結社の自由に関しては「公益及び公の秩序」に反しない限り、という制限を設けている。今回の特定秘密保護法は、これらの先取り的な法整備であることも押さえておく必要がある。
しかし私たちは、特定秘密保護法に怯むことなく表現と取材・報道の自由を行使する。全国各地に広まり燃え盛った反対運動と、出版・メディア関連産業の多くの団体・個人から反対の意思が発せられたことを心に刻みつけよう。私たちが、手をつなぎ、怒り、涙した闘いは希望である。「憲法改正」を射程に入れた今回の暴走であることを片時も忘れることなく、奪われかけている民主主義と「知る権利」と「表現の自由」を国民の手に取り戻すために、憲法違反の特定秘密保護法廃止に向けて、今この時からたたかうことを宣言する。
2013年12月9日
日本出版労働組合連合会
中央執行委員長 大谷 充
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婦団連 安倍内閣の暴挙を許さない
声明
秘密保護法案反対、参議院での強行採決に抗議する
2013年12月7日
日本婦人団体連合会
会長 柴田真佐子
私たちは、12月6日、自民党・公明党による、参議院における特定秘密保護法案の強行採決に強く抗議します。
秘密保護法案は、国民の知る権利、取材・報道の自由を脅かし、基本的人権を侵害し、憲法の基本原理を全面的に否定する憲法違反の法案です。国民の目、耳、口を塞ぐ希代の悪法の内容が明らかになるにつれ、国民の間に廃案を求める声が広がっています。
そもそも、基本的人権、国民主権、平和主義という憲法の基本原理を覆す法律は制定すべきではなく、国民の大多数は反対しています。国民の声に背を向け、数の力で強行採決に次ぐ強行採決を行った安倍内閣の暴挙は絶対に許せません。
秘密保護法案が、9条改憲、「国防軍」創設、集団的自衛権行使などの動きと一体にすすめられていることも重大な問題です。女性が政治に参加する権利はもちろん一人前の人間としての権利も持たず、目、耳、口を塞がれて侵略戦争に協力させられた、あの歴史を繰り返してはなりません。
婦団連は、特定秘密保護法を廃止するため、広範な女性・国民とともに、草の根のとりくみをさらに強めます。憲法9条を守り、基本的人権が尊重され平和な社会の実現をめざして、全力を尽くします。
以上
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悪法を押し付けようとする安倍内閣の退陣を要求
【声明】
「秘密保護法」強行採決・「成立」に抗議し、廃止・撤廃を求めます
2013年12月6日
憲法改悪阻止各界連絡会議(憲法会議)
〒101-0051千代田区神田神保町2-10 神保町マンション202
℡03-3261-9007 fax03-3261-5453
1.「特定秘密保護法」は12月5日参議院特別委員会で、6日には同本会議で強行採決され、「成立」したとされています。戦争法、弾圧法としての反動的な内容、国民の声を無視した強行採決という、中身もやり方も憲法の原則に反し、民主主義の鉄則を踏みにじった「秘密保護法」の「成立」に断固として抗議し、その廃止・撤廃を強く求めます。
2.安倍自・公政権は、国民各界各層各分野からのおびただしい反対意見、「慎重・徹底審議」を求める多数の声、さらに国連関係機関や海外メディアなどの批判に追い詰められた末に、強行採決の暴挙にでました。推進勢力が国民の声に追い詰められ、焦りと恐れを募らせる中での強行でした。
これまでの審議の中からだけでも、「秘密」が無限に拡大されること、何が秘密かも明らかにされないまま一般国民まで重罰をもって処罰することなど、日本国憲法の国民主権、平和主義、人権尊重の原則を根本から踏みにじることが極めて明白になっています。また、既に発足した国家安全保障会議(日本版NSC)に軍事、外交に関する情報を集中し、「国家安全保障基本法」の制定などで集団的自衛権の行使容認に踏み出そうとしていることと合わせ、日本の進路を「戦争する国」へと大きく転換しようとするものです。
3.憲法会議は、秘密保護法に反対して大きく高まった広範な世論と国民的運動を力に、この悪法を厳しく監視し、憲法侵害の一つ一つのあらわれを告発するとともに、この法律の廃止・撤廃を求めて運動を進めます。
歴史の教訓に照らし、軍国主義を再び狙う自民党と公明党に未来はないことを警告します。民意にそむき、多数を頼みに悪法を国民に押し付けようとする安倍内閣の即刻退陣を強く求めます。
憲法会議は、暗黒政治を拒否し、憲法が生きる社会を実現するために全力をあげます。
宗教者 強行採決に強く抗議
内閣総理大臣
安倍晋三 殿
抗議声明文
2013年12月7日
「特定秘密保護法」の強行採決に断固抗議します
日本カトリック司教協議会常任司教委員会は、日本国憲法の基本原理を尊重し、人間の尊厳に関わる自由で平和な社会を求める宗教者として、「特定秘密保護法」を、11月26日に衆議院、12月6日に参議院で強行採決したことに対して断固抗議します。
今回採決された「特定秘密保護法」は、日本の根幹を揺るがしかねない極めて重要な法案です。この法案については、以下の指摘する通り、憲法の三大原則である主権在民、基本的人権の尊重、平和主義を侵害する恐れがあり、日弁連をはじめあらゆる層の団体や市民たちが廃案を求めて声をあげました。
このような重大な法案を十分な審議も尽くさず、説得力ある説明もなされないまま強行採決することは絶対にあってはならないことですが、自民党をはじめとする「数の力」で一方的に強行採決されました。これは法案成立反対の民意を無視し、民主主義の根底を脅かすものであり、わたしたちは到底容認できるものではありません。
この「特定秘密保護法」は、以下のような欠陥をもつものであることを危惧します。
1.
「特定秘密」を行政機関が定めるということは、国会が行政機関の下位に置かれることになり、これは日本の民主主義制度に反します。また「特定秘密」の範囲が曖昧なまま、その指定を行政側の恣意的な裁量に委ねるものです。これは情報公開制度が未整備の現状にあって、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止にあたるとすれば、何でも秘密にされる危険があります。
2. 民主政治は市民の信託によるものであり、情報の開示は民主的な意思決定の前提です。この法案により国会議員の国政調査権も制限される可能性があります。国会では正確な情報に基づいた議論が保障されるべきなのに、国会への情報提供が限定されてしまうことになり、主権在民が脅かされます。
3. この法案により、市民の知る権利は大幅に制限され、取材・報道の自由、表現・出版の自由、学問の自由など、基本的人権が侵害される危険があります。さらに秘密情報を取り扱う者に対する適性評価制度の導入は、プライバシー侵害の恐れがあります。
4.
防衛大臣が「特定秘密」と指定すれば、それが自衛隊の海外武力行使や米軍との共同作戦など憲法9条に反することであったとしても秘密裡に実行されることになります。これは憲法前文で「日本国民は、政府の行為として国家として再び戦争の惨禍が起こることのないように、この憲法を確定する」と決意表明した平和主義を根底から揺るがします。
5. 福島第一原発事故の収束のめどが立たない現状なのに、放射能の量、健康への影響、環境汚染の実態など、国民の不安をあおり公共の秩序を害することを理由に「特定秘密」と指定されかねず、それは市民の生命、健康をさらなる危険にさらすことになります。
このような重大な問題をかかえ、多くの反対や疑問が呈されている法案については、多方面からの意見を聴取し慎重な審議を重ねた上で、民主的に定めていくことこそが民主政治です。
今回のような拙速な採決に対してわたしたちは断固抗議するとともに、今後同様な強行採決を決して行わないよう要求します。
日本カトリック司教協議会 常任司教委員会
委員長 岡田 武夫 大司教
委員 髙見 三明 大司教
委員 大塚 喜直 司教
委員 梅村 昌弘 司教
委員 宮原 良治 司教
委員 菊地 功 司教
委員 前田 万葉 司教
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歴史に残る暴挙に抗議
声明
2013年12月5日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長
日比野 敏陽
秘密保護法案の強行可決に強く抗議する
特定秘密保護法案(秘密保護法案)は5日、国会の国家安全保障特別委員会で自民党と公明党によって強行可決された。国民の知る権利を大きく制限する危険性があるとして国内外から厳しく批判されている法案を、十分な審議もなく与党だけで強引に委員会可決したことはきわめて許しがたい。まして「良識の府」である参院で強行可決が行われたことは、歴史に残る暴挙だ。本会議での採決は絶対にゆるされない。
新聞労連は法案の行方が最終的にどうなろうと、安倍政権と与党の卑劣、下劣な行いに対し強く抗議するとともに、今後、秘密保護法に対して施行反対や廃止を含め、あらゆる反対運動に先頭に立って取り組むことを宣言する。
秘密保護法案には数々の問題があることはすでに明らかになっている。報道への「配慮」条項が入っているが、配慮するかどうかは捜査当局の胸先三寸である。秘密指定も密室においてきわめてあいまいな基準で行われることは明らかだ。新聞記者が秘密に接触しようとしただけで処罰対象となる構造があるかぎり、配慮規定など機能しない。新聞労連が加盟する国際ジャーナリスト連盟も「ジャーナリストを好きなように起訴できる可能性を政府に許すいかなる法律も、非難されなければならない」と批判している。安倍首相は4日になって秘密をチェックする機関の設置を持ち出したが、身内の官僚で固める組織に過ぎず、お為ごかしもはなはだしい。
法案に対しては、国際ペンや国連機関の代表者までが法案には問題が多いと指摘している。このような法律を制定することになり、日本は世界各国から「言論の自由と知る権利を制限する国」として、厳しい視線を浴びせられるだろう。もちろん、日本の新聞労働者は秘密保護法にひるんだりはしない。国民・読者に本来知らせなければならない情報は何がなんでも知らせる、という気概は法案の成立で失われることはない。仮に秘密保護法による弾圧があれば、新聞労連は一致団結して闘うだけである。 以上
衆院での強行可決 容認できない
「特定秘密保護法案」の衆議院本会議での可決に断固抗議する
一般社団法人 日本雑誌協会 人権・言論特別委員会
一般社団法人 日本書籍出版協会 出版の自由と責任に関する委員会
本日(11 月 26
日)、「特定秘密保護法案」が、衆議院本会議において可決さ
れた。日本の根幹を揺るがしかねない極めて重要な法案であるにもかかわらず、
十分な審議が尽くされないまま、衆議院本会議で可決されたことは、とうてい
容認できない。
特に、両協会が問題としてきた「特定秘密とは何を指すのか」「その範囲はど
こまでなのか」「行政の長が決めるとなれば、誰がチェックできるのか」「第三
者機関は必要とされるが、その独立性は担保されるのか」など、これまでの審
議でもほとんどの疑問は解消されていない。このままでは、国民が知るべき情
報が隠匿されてしまう。
我々、雑誌や書籍は、政府が秘密とする情報でも、当然国民が知っておくべ
き情報については、すみやかに読者に伝える社会的責務を負っている。このま
ま法案が成立するようなことになれば、情報入手は制限され、取材・記事作成
に重大な障害となることは明らかである。
「国民の知る権利」「報道・出版の自由」を根底から覆しかねない法案の衆議
院本会議での可決に断固抗議する。
以上
2013
年 11 月 26 日
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特定秘密保護法案の強行採決に抗議する
2013年11月27日
一般社団法人 日本出版者協議会
会長 高須次郎
東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B
TEL 03-6279-7103/FAX 03-6279-7104
政府・与党は11月26日、衆議院特別委員会ならびに同本会議で特定秘密保護法案を強行採決した。
国民の知る権利、言論表現の自由が損なわれるとして、全国的に反対運動が展開され、11月21日には日比谷野音に1万人の人が集まり、反対の大集会が開かれた。また25日には福島市で公聴会が開かれ、与党側推薦を含む7人の公述人全員が、この法案の廃案や慎重審議を求めた。政府・与党はこうした民意に謙虚に耳を傾けなければならないはずだ。にもかかわらず、26日に強行採決をしたということは、この公聴会が単なる政府のアリバイづくりにすぎないばかりか、福島の人たちをないがしろにし、侮蔑するものである。原発関連情報の秘密化が危惧される。
政府による恣意的な秘密指定が、30年から60年までなどということは、国民を無視した、とんでもない話である。日本出版者協議会は将来に禍根を残すこの法案を、参議院では、十分に審議をつくして、廃案にするよう強く求めるものである。
住基ネット 強行採決に抗議 廃案を求める
安倍政権の「秘密保護法」強行採決に抗議し、廃案を求める
声 明
11月26日の衆議院本会議で、国民の反対の声を踏みにじり「特定秘密保護法」を強行採決した安倍政権の暴挙に抗議するとともに、直ちに廃案にするよう求めます。国民の目、耳、口を塞ぐ稀代の悪法「秘密保護法」の中身が明らかになるにつれ国民の間に怒りの声が燎原の火のように燃え広がっています。この法案は、行政機関の長が外交、防衛、スパイ活動防止、テロ防止にかかわる情報を「特定秘密」に指定し、それを漏らした公務員や、それを知ろうとするジャーナリストや市民に厳罰を科し、国民に知られたくない情報を隠すためのものです。処罰を恐れて公務員は口をつぐみ、政府は都合のいい情報だけを発表することになります。これは戦時中の「大本営発表」の再来ではないでしょうか。沖縄では、戦時中、疎開船対馬丸が米艦船の魚雷攻撃によって撃沈され、学童を含む多くの県民が犠牲になりました。当時は軍事機密として報道はおろか、うわさ話も禁じられ、わが子の安否を問うことさえ許されませんでした。このような悲劇を二度と繰り返してはなりません。現在もなお、軍事基地が集中している沖縄では、オスプレイ配備の情報、枯葉剤の情報は、軍事機密のベ
ールに覆い隠され、住民の命は危険にさらされています。「秘密法」が成立すれば、住民は自らの命を守るために軍事基地にかかわる情報を知ろうとすれば処罰の対象になりかねません。
「秘密保護法」は、「安全保障会議(日本版NSC)設置法」と一体のものとして成立が強行されました。日米の軍事一体化が進む中、日米の秘密情報の共有とともに、内閣総理大臣を司令塔とする今日版「大本営」が作られることになります。安倍政権が来年の通常国会で成立をもくろんでいる集団的自衛権行使を可能とする法案とセットされると、憲法は条文を変えることなく、骨抜きにされます。これこそ、「授権法」を強行成立させ、ワイマール憲法を骨抜きにしたナチスの手口ではありませんか。「見まい、聞くまい、話すまい、国の秘密心して」など標語掲げ、国民の知る権利を奪い、政府に従わない人たちを弾圧し、戦争へと突き進んだことを今一度思い起こしてください。「秘密保護法」は、戦争準備のための法律にほかなりません。
私たちは、国民の知る権利を奪い、国民を監視し、戦争準備のための「秘密保護法」の強行採決に強く抗議し、直ちに廃案にするよう求めます。
2013年11月26日
住基ネットに反対する市民ネットワーク沖縄
(宛先: 内閣総理大臣 安倍晋三)
日本ペンクラブ 強行採決に深い失望と怒り
「特定秘密保護法案の衆議院特別委員会強行採決に抗議する声明」
本日、政府与党と一部野党は衆議院特別委員会において特定秘密保護法案を強引に採決した。
私たち日本ペンクラブはこれに対し、深い失望を覚えるとともに、大いなる怒りを込めて抗議する。
政府行政の恣意によって広範な「特定秘密」を指定することを可能にするこの法案が、市民の知る権利を侵害し、行政情報の透明化の流れに逆行することを、私たちはくり返し指摘してきた。為政者にとって不都合な情報を隠蔽し、ジャーナリズムや作家、研究者、表現者と市民による秘密への接近を厳罰をもって規制することは、この社会の内部にも、近隣諸国とのあいだにも疑心暗鬼と敵対感情を生じさせ、不穏な未来をもたらすだろう。
私たちはこの間、衆議院の審議を注意深く見守ってきたが、この法案の成立をめざす政府与党と一部野党議員らのつたなく、杜撰な対応に唖然とするしかなかった。かつてこのような秘密保護法制を持ったこの国の悲惨な歴史と、いまも同種の法制を持つ国々の現状に関する無知は目を覆うばかりであった。
今後、衆議院本会議の進行次第では、この特定秘密保護法案は参議院の審議に付されることになるが、私たち日本ペンクラブは、「良識の府」たる参議院の議員諸氏によって本法案の不当性が明らかにされ、廃案とされることを強く求めるものである。
2013年11月26日
一般社団法人日本ペンクラブ
会長 浅田次郎
出版労連が怒りの抗議
2013 年11 月26 日
《緊急声明》
「特定秘密保護法案」の衆議院での強行採決に怒りを込めて抗議する
日本出版労働組合連合会
中央執行委員長大谷充
2013 年11 月26 日、自民・公明の与党2 党と修正合意をしたみんなの党の3 党によって、「特定秘密保護法案」が衆議院で強行採決された。私たちは、民主主義の根幹を壊す歴史的大罪を犯した自民・公明の与党と、それに加担したみんなの党を断じて許さない。
午前中の特別委員会では、安倍首相が出席して2 時間あまり審議が行われた。今日も審議を重ねれば重ねるほど、法案の不備や問題点が明らかになっていった。しかし、与党は強引に審議を打ち切り、多数を武器に採決を行ったのである。
衆議院特別委員会での審議時間は、日本の将来像を誤った方向に大きく変える可能性のある重要法案であるにもかかわらず、わずか40 時間であった。しかも、福島市で公聴会を開き、自民党が推薦した意見陳述者も含め、そこに招かれた7 名の意見陳述者全員が法案に反対または慎重な審議を求める意見を述べた翌日のできごとである。
意見陳述者からは「福島の公聴会を法案を通すためのアリバイに使わないでほしい」という声も聞かれた。しかし与党は、その切実な思いをも裏切った。
特別委員会での政府答弁では、「諸外国との情報共有のためにこの法律が必要」、「秘密保護法制がないと海外から信用されない」などと、海外との信用関係を強調する場面が多く見られた。しかし、海外メディアや国際ペンクラブ、米国の元高官などからも、「特定秘密保護法案」の不備や問題点を鋭く指摘する声が上がっている。秘密保護法制をつくるうえでのスタンダードとして国際的に評価されているツワネ原則に照らして、本法案の問題点を指摘する声も上がっている。しかし、安倍内閣は国内世論だけでなく。それら国際的な指摘の一切合財を無視した。今日衆議院で行った強行採決はおごり高ぶった暴挙以外のなにものでもない。
「特定秘密保護法案」は憲法の三大原理を否定するものとして、出版労連は強く反対してきた。到底認められない法案である。それを、十分な審議を求める声を無視して強行採決に踏み切った安倍内閣に対し、出版労連は強く抗議し「特定秘密保護法案」の廃案を強く求める。
私たち出版労連は、言論・出版・表現の自由と、知る権利が守られる社会であることをあきらめない!
以上
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民放労連委員長談話: 強行採決に抗議
秘密保護法案の衆院強行採決に抗議する委員長談話
2013年11月26日
日本民間放送労働組合連合会
中央執行委員長 赤塚 オホロ
本日、衆議院の特別委員会および本会議において、「特定秘密保護法案」(秘密保護法案)の採決が強行され、法案が参議院に送られた。日本国憲法の理念を根底から覆すような“稀代の悪法”案に対して市民の間で懸念・反対の声が次第に高まっているのに、拙速な審議で委員会採決・本会議採決を強行したことに対し、強い怒りを込めて抗議する。
行政の恣意的な判断によって、客観的なチェックもなく事実上永久に秘密を指定する同法案は、国会や司法を軽視し、国民主権をないがしろにする憲法違反の法律と言わざるを得ない。とりわけ、秘密にアプローチする者を処罰の対象にすることは、表現・報道の自由を実質的に奪い去り、国民の「知る権利」にも甚大な影響を及ぼすものだ。
このように深刻な問題をはらむこの法案をめぐっては、市民の間で反対の声が急速に広がっている。昨日25日に福島で開催された地方公聴会でも、すべての意見陳述者が東京電力福島第一原子力発電所事故の経験を踏まえて、情報公開の後退を憂慮して法案に懸念や反対の意を表明していた。にもかかわらず、翌日の審議で早々に採決に踏み切ったことは許しがたい暴挙であり、市民の切実な要望にまったく聞く耳を持たない政府の態度に強い憤りを覚える。
私たちは、あくまでも秘密保護法案の廃案に向けて、幅広い仲間と共同しながら闘い抜く決意を、ここに改めて表明する。世界の潮流は情報公開の拡大であり、時計の針を逆に戻すような安倍政権の反動的な政策は、決して許されるものではない。
以 上
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毎日新聞労組 法案の衆院可決に抗議
特定秘密保護法案の衆院通過への抗議声明
2013年11月26日
毎日新聞労働組合
委員長 鈴木泰広
自民、公明両党とみんなの党は26日、国の安全保障に関する重要な秘密を漏らした公務員らに厳罰を科す「特定秘密保護法案」を衆議院で可決した。毎日新聞社員らで構成する毎日新聞労働組合は、我々がよって立つ「取材・報道の自由」を制限し、国民の「知る権利」に応える使命を脅かすこの法案に断固反対する。国民に反対の声が広がる中、審議を尽くさず、衆院通過を強行した3党に強く抗議し、廃案を求める。
法案22条は「報道や取材の自由への配慮」を定めている。しかし「著しく不当な方法」による特定秘密の入手は処罰対象となる。政府は、沖縄返還に伴う日米政府の密約文書を外務省職員から入手した西山太吉・元毎日新聞記者が国家公務員法違反で有罪となった「西山事件」を典型例に挙げるが、何が「著しく不当な方法」に当たるかは明確でなく、捜査当局の判断次第で記者が逮捕されかねない。
法案には捜査手法を限定する規定もない。特定秘密に指定された情報が報じられれば、漏洩した公務員を特定するため、記者が家宅捜索を受け、パソコンなどを押収される恐れもある。たとえ記者は起訴されなくとも、取材先を守れなければ信頼を失い、ほかの取材活動までもが困難になるのは明白だ。ひいては、国民に情報が提供できなくなり、報道機関としての使命を果たせなくなる。
法案が成立すれば「何が秘密なのかも秘密」になる。情報が政府と行政機関によって恣意的に隠され、国会などがチェックできないまま、闇に葬られかねない。報道機関による権力監視は、今以上に難しくなる。
毎日新聞が今月9〜10日に実施した世論調査では、法案「反対」が59%を占め、「賛成」の29%を大きく上回った。問題点が浮き彫りになり、徹底的議論を求める世論が日に日に強まる中、3党が国会会期末をにらんで十分に審議せずに法案を衆院通過させたことは、数の論理による暴挙と言わざるを得ない。毎日新聞労働組合は、参議院が「良識の府」としてこの法案を廃案にすることを強く求めるとともに、我々の存立基盤と国民の知る権利を守るため闘い抜く。
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採決強行、可決に抗議 法案の廃案を
特定秘密保護法案の衆議院での採決強行及び可決に強く抗議し、
法案の廃案を求める声明
2013年11月26日
秘密保全法に反対する愛知の会
共同代表 本 秀紀(名古屋大学教授)
谷雄二(弁護士)
本日、特定秘密保護法案(以下「本法案」という。)が衆議院で強行採決され、与党及び一部野党の賛成多数で可決されたことに対し、厳重に抗議する。
本法案は、行政機関による恣意的な情報隠しを許すばかりか、軍事国家作りの目的を有し、国民の知る権利の侵害、取材や調査を含む表現活動の萎縮、身辺調査によるプライバシー侵害、思想差別、国民監視の合法化、罪刑法定主義違反、議会制民主主義の破壊を招くなど、重大な問題を数多く孕み、日本国憲法や国際人権規約のみならず「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)にも違反する。国連人権理事会の特別報告官までもが本法案の重大な人権侵害性に対し懸念を表明したことは、本法案が国際的な人権基準に照らし問題を有することを示すものであり、苟も自由と民主主義を基本理念とする国にとって極めて恥ずべき事態である。
当会は、2012年4月の結成以来、本法案の抱える問題点を繰り返し指摘し、数限りなく抗議してきた。日弁連や全ての弁護士会、報道機関や出版社、NGOなどの団体、地方議会もまた、再三再四、本法案の問題点を具体的に指摘し、反対や懸念を表明し続けてきた。国民の問題意識も強く、わずか15日という短期間で実施されたパブリックコメントにおいても9万0480件の意見が寄せられ、うち77%が反対意見であった。本法案の条文が明らかになった後の世論調査でも、過半数が反対、慎重審議を求める意見は8割にのぼる結果が出ている。11月21日には、本法案の廃案を求める集会やデモが全国13カ所で一斉に行われ、当会主催で行った名古屋の集会には、平日でありながら2000人もの市民が参加した。
にもかかわらず、政府与党は、法案の審議を特別委員会に丸投げしたばかりか、一部の野党と密室で擦り合わせ協議を行い形ばかりの「修正」でごまかした挙げ句、25日に福島で実施した地方公聴会では公述人7名全てが反対ないし慎重審議を求める意見であったにもかかわらず、その公聴会の結果さえも無視し、審議開始からわずか20日で本法案を可決強行したものであり、民主主義を蹂躙する許し難い暴挙である。
日本は、かつて、軍機保護法や治安維持法による情報統制と言論封殺のもとに戦争を遂行し、国内外に多大な犠牲を生じさせた。同じ過ちを、二度と繰り返してはならない。
当会は、本法案の衆議院での可決に対し抗議するとともに、本法案の廃案を強く求める。
以上
秘密保護法案の強行可決に抗議する
緊急声明
2013年11月26日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長
日比野敏陽
政府・与党とみんなの党は26日、特定秘密保護法案の修正案を衆議院の特別委員会
と本会議で相次いで強行可決した。国内外から法案には実に多くの問題があることが指
摘されている中で、十分な審議を行うことなく法案を強行採決したことは、国民主権と
民主主義の原則を踏みにじる暴挙である。新聞労連はこの歴史的暴挙に対し満腔の怒り
を持って抗議する。
11月25日に福島市で開催された地方公聴会では、与党推薦の陳述人を含む全員が
反対を表明した。「秘密保護法より情報公開が必要」という意見に真摯に向き合うこと
なく、公聴会の翌日に強行採決したことは、福島の人々はもとより、国民全体に対する
裏切り行為である。
法案は与党と日本維新の会、みんなの党の協議によって修正されたが、秘密指定の期
間が延長されるなど、かえって問題が深まっている。維新は当初、「30年以上延長で
きない」と主張していたが、修正案では2倍の60年に延長されてしまった。さらに、
60年を超えても延長できる7項目の例外まで付された。「第三者機関の設置検討」も
盛り込まれているが、具体的な保証は何もない。修正協議で与党に簡単に妥協した日本
維新の会とみんなの党の姿勢は、戦前の「大政翼賛会」そのものだ。
参議院では徹底した審議を行い、廃案にすべきだ。新聞労連は国民の知る権利に奉仕
し言論・表現の自由を守る立場から、法案の成立阻止に向けて全力を挙げる。
以上
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特定秘密保護法案の衆議院での採決強行に対する会長声明
本日,特定秘密保護法案の採決が強行され,衆議院を通過した。
同法案が国民の知る権利を侵害する危険性を有しており,廃案にされるべきことは当連合会及び国民各層から意見表明がなされてきたところである。さらに,11月21日には,国連人権理事会のフランク・ラ・ルー特別報告者からも,ジャーナリストや内部告発者を脅かす危険性があるとして,同法案への懸念が表明された。4党による修正案においてもその危険性は何ら減じられていない。
また,4党による修正案については提出されたばかりであり,ほとんど実質的な審議らしきものはまだなされていない。
11月25日に福島県で開かれた公聴会では,出席者全員が法案の内容に反対ないし懸念を示したのであるから,政府としてはそれらの懸念を払拭するためにも慎重審議を行うべきであった。
しかし,衆議院では,法案の骨格ともいうべき重罰主義及びプライバシー侵害性の高い適性評価制度について,根本的見直しに向けた議論がなされていない。「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)との整合性についても検討されておらず,十分な審議が行われないまま,採決が強行された。極めて拙速と言わなくてはならず,法案のもたらしかねない重大な影響に鑑みると到底是認できない。
国民主権を形骸化しかねない法案について,民意を軽視した形で採決を強行したことは,二重の意味で国民主権の基本原則に反すると言わなくてはならない。
当連合会は,同法案の拙速な採決について強く抗議するとともに,良識の府である参議院において十分な審議を尽くすよう要請するものである。
2013年(平成25年)11月26日
日本弁護士連合会
会長 山 岸 憲 司
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特定秘密保護法強行採決への反対声明
2013年11月26日
メディア総合研究所
所長 砂川浩慶
本日の特定秘密保護法案の「強行採決」について、メディア総合研究所は、民主主義の原則をないがしろにする行為として、強く反対する。この法案は、国民各層やメディアから多くの指摘がなされている“稀代の悪法”である。それにも関わらず、国会での数を頼りに「強行採決」を行うことは、将来に禍根を残し、この国を「戦争ができる普通の国」に導くことにつながる。
メディアにおいては、この「強行採決」の横暴とともに、特定秘密保護法案が持つ問題点をさらに伝え、国民が正確に判断できる情報を提供することを求める。なお、参議院での審議にあたっては、これまで指摘されている様々な問題点について、十分な審議を尽くし、問題が解消されない場合は廃案にすべきと考える。
児童書出版関係者 廃案求める
池田純子さんなど、児童書籍出版関係者の有志が、「特定秘密保護法案」の廃案を元得て、共同声明を発表しました。
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【日本機関紙協会】法律成立を断固阻止 全力で廃案へ
特別決議案
秘密保護法案阻止へ全力を!
参議院で審議中の「特定秘密保護法案」を、政府は臨時国会会期末の12月6日までに、与党の数の力で強引に強行採決する構えです。この危険極まりない法案に対し、市民国民の各層から反対の声が上がり、広がり続けています。
「特定秘密保護法案」の内容とその危険性は、連日、マスコミが報道している通りです。10月25日に衆議院に提出された後、みんなの党、日本維新の会との間で修正されましたが、法案の本質的な危険性は何ら変わらず、首相が第三者機関的にチェックするとか秘密の期間が60年に延びるなど、むしろひどくなりました。
内容以上に、ファッショ的な手法で手続きが進められていることも重大です。法案の検討状況はほとんど隠され、「概要」を示してパブリックコメントをたった2週間しか求めず、それが圧倒的に反対だったのにまったく無視して国会に上程しました。本来、先行すべき情報公開法や公文書管理法の改正などまったく論外とされ、罪刑法定主義に反するとの指摘も無視されています。
日替わりで二転三転するずさんな答弁が繰り返され、あろうことか原発震災に苦悩する福島市でアリバイ的に公聴会を開き、7人の公述人全員が反対・慎重意見を述べたのに、それも無視して翌日、衆院の特別委員会、本会議で強行可決してしまいました。
参院でも委員長の職権で強引に審議入りを決めました。野党は、本来、担当すべき官房長官の出席を要求するなどして攻防が続いています。連日、全国で多くの集会や街頭行動が取り組まれ、与野党議員にメール、ファクスが押し寄せています。
大半の新聞が廃案を主張し、海外のメディア、国連専門家、人権NGOからも厳しい批判が相次いでいます。しかし、安倍政権はどんなに批判、反対が強かろうが、国会の数で圧倒すればいいというファッショそのものの暴走を開き直っています。この法律ができれば、日本の民主主義は窒息し、官僚独裁の監視国家となり、戦争への道へと突き進むことになるでしょう。
日本機関紙協会は、国内外の各界各層と連携して、この最悪の法律の成立を阻止し廃案にするために、全力挙げます。
右、決議する。
2013年11月30日
日本機関紙協会第65回全国総会
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秘密保護法の制定に反対する言論・表現関係者の声明
安倍政権は、かねて準備してきた「特定秘密の保護に関する法律案」を10月15日開会の臨時国会に上程し、制定しようとしている。今回の法案は、秘密保護の名のもとに、民主社会に欠かせない市民の知る権利を踏みにじるだけでなく、ジャーナリズムやメディアも含む言論・表現活動を支える取材・報道・表現の自由を著しく侵害する立法であり、言論・表現活動に携わり、関わる者としてその制定に強く反対する。
今回の法案は、民主党政権下の秘密保全の法制化の試みも踏まえつつ、安倍自公政権のもとで、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法とセットで成立を図ろうとする提案だ。その基本的な枠組みは、①「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」という4分野の情報について、担当の大臣等の「行政機関の長」が「特定秘密」を指定し、②公務員等がそうした秘密を漏えいしたり、何人であれ、秘密保有者の管理を害するやり方で秘密を取得したりした場合には最高10年の懲役刑を科すとともに、それらに対する共謀・教唆・扇動にも重罰を科す一方で、③秘密を取り扱うことができる者を「適性評価」により選別された公務員等に限ることとする、というものである。
広範な国の情報を「お上」(官僚)の一存で秘密に指定し、その漏えいや取得をはじめさまざまな行為を犯罪として厳罰に処し、適性評価制度で秘密の管理も厳格にするというまさに「まず秘密ありき」の露骨な法案なので、市民の知る権利や情報公開の理念に真っ向から反し、情報公開を広げる世界の潮流にも逆行する企てに他ならない。
言論、表現活動に携わり、関わる私たちにとって、取材・報道の自由や創作の自由も含む表現の自由は譲り渡すことのできない貴重な権利であり、市民の知る権利を充足する重要な手段でもある。法案は重要な国家秘密を取り扱う情報源たる公務員等の漏えいに重罰を科し、適性評価制度による選別で内部告発の回路を狭めることによって情報源の萎縮を促進し、取材者が入手できるはずの有用な情報を細らせ、枯渇させることになる。情報源の萎縮効果だけでなく、情報源に働きかける活動も共謀・教唆・扇動の罪として、あるいは秘密保有者の管理を害する方法での取得罪として、取材者たるジャーナリストや表現者、市民が直接捜査や処罰の対象となる。取材源との回路が閉ざされ、取材が制限されるところで、真実の追求や調査報道、権力監視をはじめ、自由闊達な報道・表現活動や豊かな創作活動を生み出すことはできず、その結果、情報を伝えるべき市民の知る権利を満たす役割も果せない。
法案には、「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分配慮しなければなら」ず、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によると認められない限りは、これを正当な業務による行為とする」旨の規定(21条1項、2項)も入れられた。しかしながら、知る権利や取材・報道の自由は「配慮」を明記することで実現するわけではもとよりなく、また取材を正当業務行為と記した後者の規定も、取材を処罰対象としないと定めているわけでもない。加えて、「保護」されるのは、「不当な方法」ではない取材行為に限られ、正当、不当の線引きも当局の恣意的な判断に委ねられる。さらに、「保護」を受ける取材行為者の範囲は狭い出版、報道の職業人のみが対象とされ、調査、取材活動等に携わる市民などは想定されていない。何よりも本質的には、こうした措置によっても、「お上」の一存で広範な秘密が決められ、情報源を厳しく規制することで知る権利が損なわれ、取材の自由が形骸化される法案の危険性を根本的に取り去ることは不可能である。
秘密保護法案と情報公開法改正とセットでという考え方も示されているが、「まず秘密ありき」の本法案と、情報公開を広げる改正案とは相対立するものであって、両立しがたいのは明らかである。いま必要なことはまず、現行の情報公開法を改正して知る権利の拡充を図ることであり、秘密保護の強化ではない。
私たちは、言論・表現活動に携わり、関わる立場から、本法案の制定に重ねて強く反対する。
2013年10月22日
[呼びかけ人]
青木理(ジャーナリスト)、岡本厚(岩波書店社長、前『世界』編集長)、小黒純(同志社大学大学院教授)、桂敬一(ジャーナリズム研究者)、北村肇(『週刊金曜日』発行人)、斎藤貴男(ジャーナリスト)、佐高信(評論家)、篠田博之(『創』編集長)、柴田鉄治(JCJ代表委員)、白石草(OurPlanet-TV)、*田島泰彦(上智大学教授)、堤未果(ジャーナリスト)、中村悟郎(フォトジャーナリスト)、野中章弘(ジャーナリスト/大学教員)、橋場義之(元上智大学教授)、*服部孝章(立教大学教授)、原寿雄(ジャーナリスト)、藤森研(専修大学教員)、丸山重威(ジャーナリスト・元共同通信社)、元木昌彦(元『週刊現代』編集長)、森達也(作家・映画監督・明治大学特任教授)、*吉原功(明治学院大学名誉教授)
(*印は世話人)
秘密保護法の制定に反対する言論・表現関係者の声明 賛同者リスト
2013年11月22日現在 *引き続き賛同募集中です。
青木 理ジャーナリスト
青山賢治大藏出版 代表取締役
赤川博敏新聞OB会代表委員
明石昇二郎ルポライター。ルポルタージュ研究所所長
赤塚オホロ民放労連中央執行委員長
秋田明文東京都職員退職者会養友会役員
秋山秀子
浅井明美諏訪ふるさと合唱団員
朝尾幸次郎立命館大学教授
梓澤和幸弁護士
安部将司放送局所属
安部ひとみ放送局所属
阿部 裕ジャーナリスト
阿部善彦放送局所属
雨宮広美
鮎澤豊子諏訪ふるさと合唱団員
荒井多嘉子
荒井秀男元編集者(岩波書店)
安 世鴻日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
安藤 剛民放労連九州地連執行委員
安保邦彦愛知東邦大学地域創造研究所顧問
飯田尭彦都職労退職者協議会
飯田和代東京私学退職教職員の会
飯田基晴映画監督
五十嵐二葉弁護士
壱岐一郎元沖縄大学教授
池上東湖元私立高校校長
池田研介立命館大学理工学部教授
池田 伸立命館大学経営学部教員
石井 彰放送作家
石川一行出版退職者懇談会
石川京子第三書館
石川元也通信社OB
石川康子多摩女性学研究会
石田和之出版退職者懇談会
石田俊二(株)三元社 代表取締役
石橋律子
石原 俊明治学院大学准教授
石丸次郎ジャーナリスト/アジアプレス
石山久男歴史教育者協議会会員
石山正史都職労退職者協議会
磯貝洋治都立学校退職者会
磯崎弘幸民放九条の会事務局長
伊田浩之『週刊金曜日』企画委員、自由報道協会理事
市川幸子
市川秀光
一花 徹元共同通信記者
伊藤晶宣世織書房
伊藤和恵
伊藤富太郎
伊藤洋子ジャーナリスト
伊藤力司ジャーナリスト
伊東良平(株)気動代表取締役、JCJ神奈川支部代表
稲垣三郎画家・元共同通信編集委員
今井 潤放送を語る会
今井精一日本機関紙協会神奈川県本部 事務局長
井本信也放送局所属
岩崎貞明民放労連書記次長
岩崎宏輝元民放職員
岩月仁志新聞OB会代表委員
岩本太郎フリーランス ライター
宇井眞紀子日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
上垣 豊龍谷大学 教授
上田 融ジャーナリスト
上野友紀放送局所属
上野良治合同出版株式会社代表取締役
卯木伸男随想舎 取締役社長
右崎正博獨協大学法科大学院教授
碓井敏正京都橘大学名誉教授
歌野清一郎朝日新聞労働組合第65期本部委員長
内川洋平放送局所属
内山 昭京都成美大学副学長
宇都宮裕也放送局所属
江草普二名古屋文理大学准教授
大石泰彦青山学院大学教授
大石芳野写真家
大内要三日本ジャーリスト会議会員
大江正章コモンズ代表
大島浩一日本ジャーナリスト会議福岡支部幹事
太田武男広島マスコミ九条の会事務局長
太田伸幸株式会社E-lock.planning代表
大谷昭示九州民放OB会事務局長
大塚とみ
大土 洋
大野一夫東洋大学講師・非常勤
大野哲夫社会保険労務士
大野寿夫
大場せん太郎元共同通信社社員
大場幸夫JCJ運営委員
大橋美知代
大村 智航思社
大村哲夫編集者
大本久美
大山奈々子日本共産党港北区県政対策委員長
岡崎由紀浄土真宗大谷派僧侶
小笠原 淳ライター
岡田由香子
岡田ユリ子フリーアナウンサー
岡本 厚岩波書店社長、前『世界』編集長
岡本幸子
小川栄二立命館大学産業社会学部 教授
小川盛政放射能を拡散させない市民有志の会世話人
小木章男図書出版 凱風社 編集者
奥田宏司立命館大学・特別任用教授
奥村信幸武蔵大学 社会学部教授
小黒 純同志社大学大学院教授
尾崎秀司中国新聞労組OB
尾崎孝史写真家
小佐野保子
小田桐 誠ジャーナリスト、放送評論家
落合 紅染色家
小野寺真人京都府立大学大学院
小原正幸印刷出版OB会代表世話人
小俣一平東京都市大学メデア情報学部教授
皆元健太民放労連九州地連書記長
加賀其 昌放送局所属
風戸茂之元共同通信記者
笠原くに
数野博久東京都障害児学校退職教職員会
片山正彦ジャーナリスト、元共同通信社
勝野達次郎東京水道労働組合退職者連絡会
桂 敬一ジャーナリズム研究者
加藤 剛日本ジャーナリスト会議・東海 会員
海南友子日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
上浦英俊柘植書房新社社長
苅田 實日本ジャーナリスト会議岡山支部代表委員
河合孝子JCJ会員
河合良一新聞OB会代表委員
川田豊実JCJ会員、「ジャーナリスト」編集委員
川田マリ子JCJ運営委員
河村健吉年金コンサルタント
川村高子
菊地 暁民俗学者
きくちゆみ著作・翻訳家
木越 暁元京都新聞記者
北岡和義日本大学非常勤講師/ジャーナリスト
北里邦寿放送局所属
北村 肇『週刊金曜日』発行人
木名瀬高嗣東京理科大学准教授
木野龍逸ジャーナリスト
木下 郁日本出版社協議会・事務局長
国森康弘日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
久保則之あけび書房代表
久保双葉放送局所属
栗生将信元共同通信記者
栗山欣也岡山マスコミ9条の会事務局
黒川芳信映像作家
小泉陽一郎新聞OB9条の会
小出五郎科学ジャーナリスト
こいわ節子紙芝居作家
高 秀美三一書房
河野慎二JCJ運営委員
小島陵一都職労退職者協議会
小滝一志放送を語る会会員
小玉美意子武蔵大学名誉教授
小番伊佐夫株式会社 三一書房 代表
小林健一印刷出版OB会世話人
小林敏雄ジャーナリスト
小林正典日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
五味澄子諏訪ふるさと合唱団員
五味渕典嗣大妻女子大学教員
権 徹日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
近藤 明印刷出版OB会代表世話人
斎藤貴男ジャーナリスト
斉藤文子
佐伯政良
佐伯靖子ロシア語翻訳者
佐賀年之国会記者会館勤務
坂井定雄龍谷大学名誉教授
坂本 衛ジャーナリスト
坂本陸郎JCJ運営委員
桜井 香株式会社桜井書店 代表取締役
櫻井 武独立プロデューサー
桜井 均元NHKプロデューサー。立正大学教授
佐高 信評論家
佐藤順子
佐藤卓利立命館大学経済学部教授
佐藤文則日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
佐藤守弘京都精華大学教授
里口 勤農林退職者会会長
佐野周一ジャーナリスト、詩人
沢田 正ジャーナリスト
しかたさとしロシナンテ社
篠田博之『創』編集長
四宮晴彦新聞OB会代表委員
柴田鉄治JCJ代表委員
柴田勇樹放送局所属
清水誠人放送局所属
清水正文子どもと教科書ネット21代表委員
首藤聡一朗放送局所属
上丸洋一新聞記者
白石慶太元共同通信記者
白石 草OurPlanet-TV
城田尚彦都職労退職者協議会
菅 勝彦青森大学社会学部長
須貝道雄JCJ運営委員
杉本好造民放労連関東地連特別執行委員
杉森元貞出版退職者懇談会
杉山隆保元毎日新聞労働組合本部書記長
鈴木 彰全労連元副議長
鈴木厚生農林水産省東京退職者の会
鈴木貫司都職労退職者協議会
鈴木邦子
鈴木三郎
鈴木ヒデヨ
鈴木 誠れんが書房新社代表取締役
鈴木正徳元共同通信記者
須藤春夫法政大学名誉教授
須藤耀一郎出版OB会
隅井孝雄京都ノートルダム女子大客員教授
清家千由紀放送局所属
関千枝子
関 喜邦放送局所属
瀬谷直子瀬谷出版社長
平良宗潤沖縄県歴史教育者協議会委員長
高橋和子都職労退職者協議会
高橋恭子早稲田大学政治経済大学院教授
髙橋敏夫民放労連常任中央執行委員
高橋フミ子
高橋洋子全甲社
高山尚武新聞OB会
滝 義高都庁職教育庁支部退職者会
滝沢洋子諏訪ふるさと合唱団員
田口武男ジャーナリスト
田口 武ジャーナリスト
武内英晴公人の友社
田島伸二作家、国際識字文化センター(ICLC)代表
田島 学放送局勤務
田島泰彦上智大学教授
田所 稔新日本出版社社長兼編集長
田中 隆民放労連九州地連執行委員
棚田 梓社会学者
田邉克彦元共同通信社記者、元大東文化大学講師
田辺直正編集者
田辺冨貴雄諏訪ふるさと合唱団員
田邉 優放送局所属
谷 修司南日本新聞社論説委員長
谷岡理香東海大学文学部広報メディア学科教授
谷山 全私立高校教員
田場暁生NPJ事務局長
田場洋和メディア総合研究所
丹野千恵子
知識明子
津田大介ジャーナリスト/メディア・アクティビスト
津田櫓冬絵本作家
堤 未果ジャーナリスト
手塚眞由美諏訪ふるさと合唱団員
寺澤 有ジャーナリスト
暉峻淑子埼玉大学名誉教授
田悟恒雄リベルタ出版代表
土井康一映画製作者
土井敏邦日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
土井弘高岡山マスコミ九条の会代表委員
道家暢子JCJ会員
得丸皓平放送局所属
戸塚章介新聞OB会代表委員
友田隆雄ジャーナリスト
友寄信子諏訪ふるさと合唱団員
豊田直巳日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
内藤利治東京私学退職教職員会副会長
中川裕之放送局所属
中沢 極農林水産省東京退職者の会
中島みなみ雑誌記者
永田浩三武蔵大学教員
中村悟郎フォトジャーナリスト
中村 敏「広島ジャーナリスト」編集委員
名古屋研一株式会社ひとなる書房代表取締役
西崎敦子
新田 準図書出版凱風社、編集者・翻訳者
野田雅也日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
野中章弘ジャーナリスト/大学教員
荻原莞爾元共同通信記者
迫間加奈子
橋詰雅博ライター
橋場義之元上智大学教授
橋本敏雄明治学院大学名誉教授
畠山理仁フリーランスライター
服部孝章立教大学教授
刎田鉱造ジャーナリスト会議会員
羽原幹男日本ジャーナリスト会議広島支部
波部光博元新聞労連副委員長
早川明好都職労退職者協議会
早川立大音楽記者
林 香里東京大学大学院情報学環教授
林 克明ジャーナリスト
林 豊日本ジャーナリスト会議事務局長
林 るみ雑誌記者
原 寿雄ジャーナリスト
原田三朗駿河台大学名誉教授
原田友孝東京障害児学校退職教職員会
原田 浩映像作家
伴 啓吾「損保のなかま」編集委員会 編集長
樋口昌平放送局所属
日比野敏陽新聞記者、新聞労連委員長
姫野順子諏訪ふるさと合唱団員
広瀬英明元フジテレビ社員
広田勝身
広田むつみ
福武孝三ジャーナリスト・元山陽新聞
福長和美東京都障害児学校退職教職員会
藤井正人山陽新聞労働組合書記長
藤田早苗研究員、Essex 大学人権センター
藤田文知元BPO
藤村 元
藤村雄樹放送局所属
藤森 研専修大学教員
船河正昴放送局所属
船橋純一郎せりか書房編集長
古居みずえ日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
古木杜恵ノンフィクションライター
古田久美子諏訪ふるさと合唱団員
古舘栄吉自治労連職労退職者協議会
風呂本惇子元奈良女子大学教授
風呂本武敏元神戸大学教授
別府三奈子日本大学大学院新聞学研究科・法学部教授
星 英雄ジャーナリスト/連帯・共同21共同代表
細井彦男
細川 修東京都職員退職者会養友会副会長
堀 公一放送局所属
堀 正俊ジャーナリスト
堀 雅晴立命館大学教授
本多勝一『週刊金曜日』編集委員
本多 亮新聞記者
前澤 猛ジャーナリスト
まさのあつこジャーナリスト
増田康雄「放送を語る会」会員
松下照幸(株)森と暮らすどんぐり倶楽部代表取締役
松田 浩ジャーナリズム研究者
松永俊郎民放労連九州地連書記次長
松野周治立命館大学教授
松原 明ビデオプレス/レイバーネット日本
松原十朗放送を語る会会員
松本 朗立命館大学経済学部教授
松本 正元共同通信記者
松本裕樹三陸かもめ通信社代表
丸山重威ジャーナリスト・元共同通信社
見市 衛都職労退職者協議会
美浦克教 通信社勤務
三浦大和放送局所属
水沼光雄都退協養育院退職者会
水藤真樹太ジャーナリスト
御田幸司民放労連書記長
三戸捷史JCJ岡山支部代表委員
南野泰義立命館大学国際関係学部
宮川典子編集者
三宅征子主婦
宮島光男ジャーナリスト
宮本春生都立学校退職者会
向 泰徳毎日放送勤務
向原祥隆図書出版南方新社代表
武藤百合子麦わらぼうし朗読の会
村井康典岩手日報社論説委員長
むらき数子生活史研究者
村津実由紀放送局所属
村山富世
村山信子
茂木章子JCJ運営委員
元木昌彦元『週刊現代』編集長
桃井和馬日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
森 達也作家・映画監督・明治大学特任教授
森 春樹放送局所属
森島 昭元新聞労連副委員長、元共同通信
森嶋 篤農林水産東京退職者の会
森住 卓日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
森近茂樹「しんぶん赤旗」記者
門司 真民放労連九州地連執行委員長
矢吹明弘京都新聞労働組合員
山岡清二ジャーナリスト・元大学教員
山口 顕民放労連九州地連執行委員
山崎隆志北海道新聞論説主幹
山田一志海象社代表
山田 洋編集者
山根岩男元新聞労連書記長
山本宗補日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
山本岳史放送局所属
横田 一フリージャーナリスト
横村 出ジャーナリスト
横山興一郎都職労退職者協議会
芳尾孝治新聞OB会事務局
吉住亜矢編集者
吉田朋子白澤社
吉田征洋府中・中河原9条の会事務局、元共同通信
吉竹幸則ジャーナリスト
吉野あけみ
吉原 功明治学院大学名誉教授
米倉外昭新聞労連副委員長
米田光男新聞OB会代表委員/東退連代表世話人
米谷哲二自治労連職労退職者協議会
米満香里放送局所属
米山 傑一声社代表取締役
力久 修元共同通信社社員(佐賀支局)
綿井健陽日本ビジュアル・ジャーナリスト協会
渡辺弘一郎長崎出版
渡邉太一放送局所属
渡部睦美『週刊金曜日』編集部
渡辺 豊関東地連副委員長
渡部 真フリーランス編集者
(397名)
「特定秘密保護法案」に反対する
中東研究者の緊急声明
中東の社会・文化・政治等をめぐる研究・教育に携わる私たちは、研究者として、また日本が中東をはじめとする世界の諸地域との間に平和で友好的な関係を築くことを願う市民としての立場から、「特定秘密保護法案」に反対します。
1.
本法案は、外交・軍事という、国全体のゆくえにかかわる事柄を、「特定秘密」の名のもとに主権者たる国民の目から遠ざけようとするもので、きわめて危険です。憲法の国民主権・平和主義の原則と矛盾しており、これを放置すれば、国民の知らぬ間に政府が戦争につながるような外交上の密約を結んだり、海外での軍事行動に着手したりする危険性があります。
2.
日本政府は近年、「テロ特措法」によるインド洋での給油活動、米占領下のイラクへの自衛隊派遣など、アメリカの世界戦略に呼応する形で中東への軍事的関与を拡大してきました。これに対し、従来はジャーナリストや研究者が報道・調査を行ない、その実態を検証したり、批判することが可能でしたが、本法案が成立すれば、こうした情報も「特定秘密」に指定され、日本の中東に対する関与のあり方が市民の目から隠される可能性があります。また、このような情報を得ようとすること自体が、「特定有害活動」(=スパイ活動)として取り締まりの対象となる危険性があります。
3. 日本社会には中東地域出身者やイスラーム教徒も数多く生活していますが、本法案が成立すれば、「特定有害活動」対策や「テロ」対策を名目に、国籍・出身・宗教・文化等を異にする人たちへの監視が強まり、また、監視が行なわれていること自体が「特定秘密」とされる危険性があります。
このように本法案は、平和と民主主義をめざしてきた日本の国家と社会の根幹を揺るがすものであり、また、日本と中東とのゆたかで開かれた交流の発展を阻害します。
世論でも疑問・反対の声が強いなか、このように重大な法案が、充分な国会審議も経ずに拙速に採決されようとしていることを深く憂慮し、反対の意思を表明します。
2013年11月25日
呼びかけ人:
栗田禎子(千葉大学・呼びかけ人代表)
飯塚正人(東京外国語大学)
臼杵陽(日本女子大学)
岡真理(京都大学)
加藤博(一橋大学)
黒木英充(東京外国語大学)
酒井啓子(千葉大学)
鈴木均(アジア経済研究所)
鷹木恵子(桜美林大学)
長沢栄治(東京大学)
三浦徹(お茶の水女子大学)
山口昭彦(聖心女子大学)
【11月25日朝現在で呼びかけ人12名、賛同署名者71名=83名となり、国会・主要マスコミ等にFAXで送付。26日現在=89名】
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秘密保護法案を廃案に! 民主主義科学者協会法律部会理事会
特定秘密保護法案の廃案を求める声明
特定秘密保護法案の国会審議が、現在強引に進められている。法案は、憲法の基本原則である国民主権、平和主義に反するとともに、基本的人権を侵害し、学問の自由に対しても重大な危機をもたらすものであり、直ちに廃案とされるべきである。
1 法案は、市民の知る権利とそれに奉仕する報道の自由に対して重大な制約をもたらす。法案において、「特定秘密」の概念は、それを基礎づける「安全保障」概念とともに、曖昧、不明確であり、その範囲は防衛、外交、特定有害活動、テロ防止にわたる広範囲に及ぶ。それゆえ、処罰範囲が曖昧、不明確かつ広汎であって、罪刑法定主義からみて重大な疑義がある。しかも、処罰範囲は漏えいとともに取得にも及ぶだけでなく、過失漏えい、共謀、独立教唆、扇動を含んでおり、きわめて広汎である。これらが相俟って、知る権利と報道の自由に対して重大な脅威が生じる。さらに、特定秘密を取り扱う公務員その他は、「適正評価」によって著しいプライバシー侵害にさらされる。
このことは、同時に学問の自由が深刻な危機に瀕することも意味している。あらゆる研究の基礎にあるのは、自由な情報の取得であり、そのための情報の公開、開示と社会的流通である。「特定秘密」の「保護」の名のもとに、安全保障その他の研究分野に関わる重要な情報が長期にわたり秘匿されることとなり、それに基づく研究が不可能となる。厳重かつ広範囲の処罰の威嚇のもと、学問の自由は深刻な打撃を被ることになろう。
2 法案は国民主権を形骸化させる。国民主権に基づく民主主義は、主権者が政府の活動に関する情報を広く取得し、それを監視、批判し、それをめぐり自由な討論をすることができてこそ、具体化、実質化しうる。ことに平和憲法のもと、安全保障に関する防衛・外交・公安活動は、本来市民の厳重な統制のもとに置かれるべきものである。しかし、広範囲にわたる「特定秘密」の「保護」は、それらの活動に関する情報を市民から覆い隠し、市民の監視と批判、市民のあいだの自由な討論の機会を奪うことになる。
民主主義との矛盾は、この法案においては、行政による「特定秘密」の指定に対して、主権者の信託を受けた国権の最高機関としての国会のチェック機能がまったく不十分であること、国会議員の調査活動や議院の国政調査権が重大な制約を受けることになることにも示されている。政府は法案策定をまさに秘密裏に進めたうえで、パブリック・コメント、公聴会における批判的意見や慎重論、専門家の批判的見解、さらには市民の広汎かつ強力な反対などをすべて無視した。さらに国会審議をつうじて法案の問題点がますます明らかになっているにもかかわらず、採決を強行しようとしている。このことは、民主主義の本旨に悖るというべきであるが、法案自体の反民主主義的性格ともまさに符合するものである。
3 法案は、国家安全保障会議(NSC)の設置とともに、憲法解釈による集団的自衛権行使の容認、憲法9条の明文改憲、国防軍の創設を目指す軍事国家への改造計画の重要な一端を担っている。この点において、法案は平和主義に反している。また、平和憲法の理念からすれば、防衛に関する情報を「秘密」として「保護」することには、最大限の慎重さが求められる。しかし、法案は、厳罰をもって、広範囲にわたる防衛「秘密」の「保護」を求めている。さらに、防衛のみならず、外交、特定有害行為、テロ防止にわたる情報が、広く、安全保障に関する「特定秘密」とされる。このことによって、軍事国家への改造過程自体が市民の目から覆い隠され、その監視、批判と自由な討論から免れることになる。法案における平和主義との矛盾は深刻である。
以上のような法案の問題性は、部分的修正によっては解消不可能である。それゆえ、法案は直ちに廃案とされるべきである。そうするによって、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義という憲法の基本原則に適うことになろう。
民主主義科学者協会法律部会は、「民主主義法学の発展をはかることを目的とする」学会であることを、規約において明らかにしている。理事会は、学術団体としてのあり方と特定の法案に関する見解の表明との関係について、慎重に審議した。そのうえで、法案の著しい反民主主義的性格が、学会活動の前提である学問の自由そのものを危うくするものであるという危機感から、本声明を発表することとした。なお、本学会は防衛・外交秘密保護法制化の動きに関して従来から学会活動をつうじて研究を重ねており、本年度の学術総会おいても11月30日に開かれたミニ・シンポジウムのなかで法案の問題性を解明したところである。このような研究実績をふまえて本声明を発表するものであることを付言しておきたい。
2013年12月3日
民主主義科学者協会法律部会理事会
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廃案を求めて法律家団体が共同声明発表
特定秘密保護法案の衆議院採決に抗議し、
同法案の廃案を強く求める法律家団体の共同声明
私たちは、福島での公聴会における反対意見をはじめとする国民各層の反対並びに慎重な審議を求める声を無視し、同法案を強行採決した衆議院の暴挙に対して、強く抗議の意思を表明するとともに、同法案の廃案を断固として求めるものである。
1.法案の危険な狙い
法案の狙いは、「戦争する国」のための軍事立法であり、かつ、政府にとって不都合な国民の言論を、警察権力を背景に封じることを目的とする治安立法にあり、以下に 述べるとおり、憲法の基本原則である平和主義、基本的人権の尊重、国民主権の原理をことごとく否定するものである。
2.法案は、「戦争する国」のための軍事立法であり、憲法の平和主義の原則に反すること自民党は、2012年4月27日付け「日本国憲法改正草案」で国防軍の設置を謳い、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は法律で定めるとし、また、本年6月4日付け文書「新『防衛計画の大綱』策定に関る提言」の中では、集団的自衛権を含む自衛権行使の範囲を確定し、国家安全保障の基本方針を規定した「国家安全保障基本法」の制定、②外交と安全保障に関する官邸の司令塔機能強化のための「国家安全保障会議(日本版NSC)」の設置、③日本版NSC設置にともなう体制を確立し、政府としての情報機能の強化のための「秘密保護法」の制定等を掲げ、明文改憲手続きによらない、いわゆる立法改憲・解釈改憲による国防軍の設置、集団的自衛権の行使及び「戦争する国」づくりの全体像と青写真を明らかにしている。
今臨時国会にセットで提出された日本版NSC設置法案と本法案の本質は、この行程に示されたとおり、まさに集団的自衛権の行使すなわち軍隊による武力行使、戦争遂行のための軍事立法であり、国家安全保障基本法の制定と合わせて、憲法9条の立法改憲・解釈改憲を狙うものにほかならず、この先の明文改憲の道を開くもので、憲法の平和主義の原則と相容れないものである。
3.法案は、国民の知る権利、表現の自由をはじめとする基本的人権を侵害すること
法案は、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止の4分野の情報のうち特 に秘匿が必要なものを行政機関の長が「特定秘密」として指定するとする。「特定秘密」の範囲は、広範且つ無限定で、警察庁長官を含む行政機関の長の裁量でいかようにも「特定秘密」の指定が可能となる。しかも指定された秘密の提供は、国会、裁判所を含めて大きく制約されるため、国民が「特定秘密」を知ることは不可能である。
秘密の漏洩行為には厳罰が科される。処罰の対象は漏洩行為のみならず、特定秘密保有者の「管理を害する行為」などにより秘密を取得する行為や、漏洩や取得についての共謀・教唆・扇動行為にも及び、過失や未遂も処罰するとしている。処罰される行為の内容は曖昧であり、処罰の範囲も、一般国民にまで及びうる広範なものとなっている。
この法律が制定されれば、取材、報道の自由、国民の知る権利、表現の自由、政治活動の自由、学問の自由は、侵害されることになる。のみならず、特定秘密を取り扱う者に対する適性評価制度導入により、個人の思想・信条の自由、信教の自由などの内心の自由や、ありとあらゆる個人のプライバシーはことごとく侵害されることなる。
とりわけ、法案が、警察庁長官が指定した特定秘密により、各都道府県警察が、同法律違反の摘発・適性評価の必要性を理由に、公然・非公然の監視活動及び捜査活動を行うことを合法化する仕組みとなっていることは極めて大きな脅威である。
曖昧かつ広範な刑事処罰規定により、罪刑法定主義、適正手続きの保障のないままに、国民の生命、身体若しくは自由が、警察権力の自由裁量により簡単に奪われる仕組みを作る同法案の危険性はいくら強調しても強調しすぎることはない。法案は、戦前の治安警察法、行政執行法(1900年制定)、治安維持法(1925年制定)とその本質を同じくすることを決して看過してはならない。
4.法案は、民主主義の根幹である国民の知る権利を奪い、国会の権能を弱体化させるものであり、国民主権の原理に反すること上記のとおり、法律が制定されたならば、取材、報道の自由、国民の知る権利その他一切の表現の自由は、警察による取り締まりと処罰を恐れて大きく制約される。国民の知る権利、表現の自由が保障されない国家は民主主義国家とはいえない。国民自らが国政のあり方を決定するという国民主権の原理を支える基盤は完全に切り崩されることとなる。
また、法案は、国会議員の調査活動や議院の国政調査権をも大きく制約するもので、国権の最高機関である国会の権能を著しく弱体化させて、国民主権の原理を形骸化するものである。
5.まとめ
以上のとおり、法案の狙いは、軍事・治安立法にあり、その内容は、憲法の基本原理である平和主義、基本的人権の尊重、国民主権原理に反し、憲法の改正手続きによらずに憲法を解釈・立法により改変することを指向するものであって、立憲主義の原理に反するものである。
私たちは、法律家団体として、この法案に断固反対し廃案を求める。今こそ、参議院が、衆議院の暴走を止め、立憲主義を守る砦としての役割を果たすことを強く求めるものである。
以上
2013年11月27日
社会文化法律センター 代表理事 中野新、宮里邦雄
自 由 法 曹 団 団長 篠原義仁
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 原和良
日本国際法律家協会 会長 大熊政一
日本反核法律家協会 会長 佐々木猛也
日本民主法律家協会 理事長 渡辺治
日本労働弁護団 会長 鵜飼良昭
(連絡先)
日 本 民 主 法 律 家 協 会 事務局長 弁護士 南 典男
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-14-4 AMビル2・3F
電話03-5367-5430 FAX03-5367-5431
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立命館大学 国民主権に反する秘密保護法に反対を表明
特定秘密保護法に反対する立命館大学法学部・法務研究科教員有志の意見
2013年11月26日、「特定秘密の保護に関する法律案」(以下、特定秘密保護法案)は、衆議院本会議で採決されました。この法案は、全国の弁護士会が反対表明を挙げていることからもわかるように、法的な観点から多くの問題点を抱えています。メディア関係者の反対はもちろん、市民の間にも法の濫用を不安視する声が広がっています。25日の福島での地方公聴会では、原発や原発事故に係る正確な情報が市民に提供されてこなかった教訓も踏まえ、意見陳述者全員が反対しました。26日午前の特別委員会でも、みんなの党・日本維新の会との非公式協議に基づく修正案を、わずか2時間の審議で採決を強行するなど、熟議を尽くしているとはいえません。
立命館大学法学部・法務研究科に所属する私たちは、こうした拙速な審議を批判するとともに、教育者・研究者の見地から、また「自由と清新」を建学の精神とし「平和と民主主義」を教学理念に掲げる立命館大学の構成員の立場から、特定秘密保護法案の問題性を指摘し、これに反対の立場を表明します。
1 公務員やジャーナリストを育てる教育者として特定秘密保護法に反対します。
現在審議されている特定秘密保護法は、主権者である国民の「知る権利」や表現の自由を著しく制約し、とくに直接の処罰対象となる可能性が高い公務員や報道に関わる者に深刻な負担を強いるものです。私たちの所属する立命館大学は、「豊かな個性を花開かせ、正義と倫理をもった地球市民として活躍できる人間の育成に努める」ことを憲章で宣言しています。この憲章の理念を反映しながら、法学部においても、これまで多くの国家公務員、警察官、ジャーナリストを輩出してきました。現在も多くの学生が、官公庁や報道機関への就職を目指して勉学に励んでいます。民間企業や研究機関でも、国の「特定秘密」の取扱い者となる業種・分野もあります。彼・彼女らが進路として選択した職場が、「正義と倫理」をもって働ける場であってほしいという願いからも、私たちは、特定秘密保護法に反対します。
(1)公務員や特定秘密取扱い者の行動を、勤務中から私生活に至るまで、萎縮させます。
特定秘密保護法が制定されると、防衛・外交・特定有害活動の防止・テロリズム防止という4分野の情報のうち特に秘匿が必要なものを行政機関の長が「特定秘密」として指定され、その漏えいに対しては懲役10年以下の厳罰が科せられます。いわゆる「違法秘密」(政府の行為が憲法や法令に反しているにもかかわらず、これを秘匿している事実)についても、これを公務員や秘密取扱い者が「正義と倫理」に忠実たらんとして内部告発をした場合、厳罰を覚悟しなければなりません。
特定秘密保護法案は、特定秘密を取り扱う者に対する適性評価制度を導入しようとしています。評価の対象には、公務員だけではなく、業務委託を受けた民間業者や従業員も含まれ、評価項目は、評価対象者の家族関係や犯罪歴、病歴、経済的状態など、極めて広範な点に及びます。「特定有害活動」や「テロリズムとの関係」に関する調査というかたちで、思想・信条に関わる調査も可能です。
調査は、必要に応じて家族・親族や友人にも及ぶため、評価対象者のみならず家族や友人のプライバシーも評価実施機関が把握するところとなります。その結果、評価対象者は交友関係すら制限されることになり、私生活も含めた行動の自由が縛られることになります。また、「不適正」と評価された場合には、職場における選別や差別の対象となる可能性もあり、また、職場の相互不信を助長しかねません。
(2)報道・取材の自由を萎縮させ、国民の知る権利を妨げます。
報道機関は、国政に関わる多種多様な情報・資料を提供することで、主権者である国民の「知る権利」に奉仕します。それゆえ、報道機関の取材・報道の自由を最大限に保障することが、社会全体の利益にとって不可欠です。ところが、特定秘密保護法は、公務員や特定秘密取扱い者の漏えいだけではなく、漏えいや取得についての共謀・教唆・せん動にも罰則を科し、過失や未遂も処罰しようとしています。これにより報道・取材の自由が大きく制約されることは明らかです。公務員からの取材活動が困難になるだけではなく、報道機関自身が萎縮し、自主規制の動きもみられることでしょう。
こうした批判をかわすために、法案は適用に際しての「報道の自由又は取材の自由に十分に配慮」する旨を明記しました(22条)が、このような訓示規定は恣意的な運用の歯止めにはなりません。たしかに、「出版又は報道に従事する者」の取材には、公益目的性と方法の正当性を要件に違法性を阻却しうる枠組みになっています(同2項)。しかし、秘密漏えいの教唆やせん動で逮捕・起訴された者が、後の裁判で正当業務の証明に成功して無罪が認められたとしても、逮捕やそれに伴う家宅捜査や押収が、自由な取材を萎縮させます。国会審議の中で、政府は、報道機関の正当な取材に対し捜査を及ぼすことはないという見解も示してはいますが、法案中に、それを担保する規定はみられません。また、法の運用をチェックする第三者機関の設置も、法の附則において「検討」を約束するのみで、具体的な枠組みはなんら示されていません。
また、特定秘密保護法は、市民間の自由なコミュニケーションも萎縮させます。現代のIT社会においては、報道機関のみが「メディア」ではありません。一個人や小規模な市民団体が、HPやブログを立ち上げ、あるいは、Facebookやtwitterを通じて、市民の間の情報発信・情報共有のアクターとなっています。立命館大学の学生・教職員や卒業生の多くも、こうした自由なコミュニケーションに一市民として参画しているはずです。しかし、こうした活動すら、場合によっては、特定秘密の漏えい教唆・せん動とみなされかねません。
2 「学問の自由」を保障された研究者として特定秘密保護法に反対します。
特定秘密保護法は、「特定秘密」の取扱業務者だけではなく、業務知得者の漏えいも処罰対象にしています。近年の日本の大学や研究機関では、「安全保障」という名目で、直接的な軍事的研究も行われています。そうでなくとも、科学技術研究の多くの分野は、軍事的汎用性を持っています。したがって、「防衛」を対象とする特定秘密保護法の下では、国公立であると私立であると問わず、大学で国や軍事産業の委託を受けて軍事研究や汎用技術の研究などを行う場合には、研究者は適性評価の対象となり、秘密保全義務が課されます。そして、研究者間の情報共有と学術検証を目的とするものであっても、特定秘密の公表は、漏えい罪として、処罰の対象となるのです。その結果、大学や研究機関における自由闊達な研究が大きく阻害されることになるでしょう。
また、秘密指定の期間は5年を超えないとされていますが、最大60年までの延長は可能で、さらに半永久的な情報秘匿も可能な例外項目も設けられています。このような政治的に重要な事実の秘匿は、外交・安全保障を対象とする政治学や歴史学の研究の遂行に著しい支障を来します。官僚機構や警察組織などを研究対象とする場合、公務員からのインタビューや情報収集は、大きく阻害されることでしょう。政治家や官僚からの証言に基づくオーラル・ヒストリーの構築といった研究手法も、数十年前の出来事を対処とする場合ですら、困難になります。こうした事態は、「学問の自由」(憲法23条)にとって致命的です。
3 「自由と清新」「平和と民主主義」を掲げる立命館大学の構成員として特定秘密保護法に反対します。
立命館大学の建学の精神は「自由と清新」です。さらに、大学としてアジア太平洋戦争に協力した痛恨の反省から、戦後は「平和と民主主義」を教学理念に掲げて、全学をあげて「平和」「民主主義」「人権」に重点を置いた教学と大学運営を展開してきました。特定秘密保護法は、このような本学の建学の精神および教学理念からも、全く賛成できないものです。
(1)特定秘密保護法は、憲法の平和主義に反します。
特定秘密保護法は、国家安全保障会議設置と不可分一体で進められ、一般的な秘密の保全というよりは、軍事的な防諜法の側面が強いものになっています。これは、戦争の放棄と戦力の不保持を定め、平和的生存権を保障した日本国憲法の平和主義とは、相反する方向といえるでしょう。
とりわけ、今回の特定秘密保護法は、それが米軍との一体化による日本の軍事力の全世界的展開を前提としている点で、歴代政府が採ってきた専守防衛の立場をも逸脱する要素を含んでおり、また東アジアの国際的緊張を高めるものです。2012年4月に公表された自由民主党の日本国憲法改正草案は、「国防軍」の創設とともに、機密保持法制の整備を明記しました。同年7月に公表された「国家安全保障基本法案」では、集団的自衛権行使容認とともに、秘密保護法制定が示されていました。秘密保護法の制定は、こうした軍事大国化の流れの中で、かねてから制定が熱望されていたものなのです。そして、その背後には、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)締結にも示されるように、日米の情報共有の進展を踏まえた秘密保護強化の要請がある点は、周知のとおりです。
(2) 特定秘密保護法は、民主主義・国民主権に反します。
「知る権利」の制約が、主権者としての国民の活動を制約するものであることは、1で述べたとおりです。
特定秘密保護法が制定されることになれば、国会議員の調査活動や議院の国政調査権なども制限を受ける可能性があります。国政調査の過程で国会議員が特定秘密に接する場合、委員会や調査会は秘密会とされ、出席した議員にも秘密保全義務が課せられて、漏えい等の処罰対象となるからです。国会を通じた国民の国政監視は、現在以上に形骸化することになるでしょう。
そもそも、特定秘密保護法案の立法作業自体が、秘密かつ非民主的です。法案の方向性を決定づけた有識者会議は、議事録も作成せず、会議資料や討議内容は現在も秘密扱いとなっています。内閣官房情報調査室による立案作業は、与党の国会議員にも法案の内容を知らされない秘密裏のうちに行われました。法案へのパブリック・コメントの実施も、わずか2週間に限定され、国民の意見を十分に聴取する姿勢が見られませんでした。それにもかかわらず寄せられた約9万件のコメントのうち8割近くが反対の意見であったにもかかわらず、こうした意見が反映された様子が見られません。
以上のように、特定秘密保護法は、「自由と清新」という言葉で表現される自由闊達な市民社会を押しつぶし、「平和と民主主義」を歪めるものです。またそれは、「教育・研究機関として世界と日本の平和的・民主的・持続的発展に貢献する」という立命館憲章第5条の精神とも合致しないものです。一部野党との非公式協議の中でなされた部分的修正も、上で述べた特定秘密保護法の問題点を本質的に改善するものではありません。私たちは、特定秘密保護法の制定に強く反対します。
2013年11月26日
呼びかけ人(50音順) 市川正人 植松健一 倉田玲 倉田原志 小松浩 多田一路
賛同人(2013年12月2日現在:50音順) 浅田和茂 安達光治 荒川重勝* 井垣敏生 生田勝義 生熊長幸 石原浩澄 出田健一 上田寛 大久保史郎 小田幸児 加波眞一 嘉門優、小堀眞裕 斎藤浩 坂田隆介 佐藤渉 島津幸子 須藤陽子 徐勝 高橋直人 田中恒好 遠山千佳 中谷義和* 中谷崇 中島茂樹 浪花健三 二宮周平 野口雅弘 藤原猛爾 渕野貴生 本田稔 堀雅晴 松尾剛 松宮孝明 松本克美 宮井雅明 宮脇正晴 望月爾 森下弘 森久智江 山田希 山名隆男 湯山智之 吉岡公美子 吉田美喜夫 吉田容子 吉村良一 渡辺千原 和田真一 他2名(*は名誉教授)
以上、呼びかけ人を含む58名
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ヒューマン・ライツ・ウォッチが秘密法の見直しを求める
報道発表 日本語訳 ヒューマン・ライツ・ウォッチ www.hrw.org/ja
即時解禁/ For Immediate Release
日本:特定秘密保護法案 公益を守るため見直しが必須
秘密指定の権限や情報漏えいの処罰が広範囲過ぎる
英語オリジナル:http://www.hrw.org/node/120858
日本語リリース:http://www.hrw.org/node/120860
(東京、2013年11月25日)-日本政府は特定秘密保護法案を見直し、国際法が保障する国民の権利に沿った法案にすべきである。国際法の下で日本政府が負う義務を果たすために、法案は、内部告発者やジャーナリストに対する明示で保護し、人権条項を強化するとともに、「特定秘密」の定義を安全保障に著しい脅威となる情報に限定した上で、明確で制限的な秘密指摘の基準が確実に設定されるように措置をとる必要がある。
この「特定秘密の保護に関する法律案」は、現在国会で修正協議が行われており、今週前半に衆議院を通過すると見られている。現行法案は政府に対して、防衛、外交、「特定有害活動」とテロリズムに分類される、「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある」情報を「特定秘密」に指定する権限を与え、これらの秘密を漏らした者への罰則を強化する。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは「安倍政権下のこの法案は、知る権利を制限し、公益のためになる情報を明らかにしたジャーナリストや内部告発者までも処罰する内容となっている」と指摘。「この法案が日本政府の国際的義務に適合するよう修正されないならば、国会は法案を否決すべきだ。」
日本にはすでに、機密情報分類に関する一連の法体系が存在する。本法案が成立すれば、安全保障に「支障」をきたすに過ぎない情報の漏えいに対して、実際の危害を示し、民主主義社会に重要な知る権利とその危害を比較考量することを条件とすることもなく、現行法よりも重い罰則が適用されることになる。
日本も締約国である「市民的及び政治的権利に関する国際規約」によれば、知る権利の国家による制限が許されるのは、国の安全を保護するのに「必要な」ときに限られ、しかも、その措置は最小限にとどめ、民主主義国における他の権利の尊重と齟齬をきたさない形でなされなければならない。国家安全、表現の自由、情報へのアクセスの自由に関するヨハネスブルグ原則は、安全保障に関する情報への人権保護の適用について、1996年に国際法の専門家集団が定めた有力な原則であるが、このヨハネスブルグ原則は次のように定めている。「(……)規制が、正統な国家安全保障上の利害を保護するために必要なものであることを示すためには、政府は(a)当該の表現や情報が、正統な国家安全保障上の利害に対する深刻な脅威を生じさせることを証明する義務がある(……)。」
法案は、「特定秘密」を漏らした者を、最大10年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金に処すると定める一方で、不正の証拠を明らかにする内部告発者の保護は盛り込まれていない。国際基準は、内部告発者が開示した情報の公益が危害を上回る場合、刑事責任を負わせないことを求めている。
現行の公益通報者保護法は、内部告発を行った労働者を解雇などの報復措置から守る法律であるが、刑事責任から守る規定はない。さらに、漏えいされた政府情報を単に受け取り、伝達し、あるいは開示したジャーナリストや出版関係者までもが刑事責任を負う可能性があり、これは表現の自由の重大な侵害といえる。日本政府は内部告発者と報道機関への保護策を、国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則、日本語訳はこちら)と最低限一致するかたちで定めるべきだ。同原則は、国際人権法の現行の解釈と国家のベストプラクティスに由来する。
特定秘密保護法案は第21条で、法律の適用にあたっては、国民の基本的人権と報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない、と定めている。しかし、出版又は報道の業務に従事する者の機密情報の収集については、「著しく不当な方法」によると認められないときに限って処罰しないとし、その定義はあいまいだ。また、第21条は公益のために情報を収集するそれ以外の人々(研究者、ブロガー、活動家、独立監視団体など)の保護に欠け、情報収集手段の適切性の判断を行政と司法の手に委ねることになる。
法案では、特定秘密の指定および解除の基準も明示されていない。言論および表現の自由の権利の保護・促進に関する国連特別報告者フランク・ラ・リュ氏と、健康の権利に関する国連特別報告者アナンド・グローバー氏は、日本の状況、とくに最近の福島原発事故と健康リスクに関する情報の非開示を踏まえて、同法案が情報の最大限の開示という原則を満たしていないことに、懸念を表明した。ラ・リュ特別報告者は9月、真実への権利についての報告を発表し、重大な人権侵害行為やそれにかかわる情報など、政府の情報非開示が許されない場合が存在すると強調している。
特定秘密の指定と解除の基準については修正議論が行われてはいるものの、公益との関係性や、審査の便宜のため、秘密指定と更新の際に行政機関が理由を書面で示す義務を負うかなどが基準に盛り込まれる様子はない。また、法案は、不正のもたらす困惑や不正の暴露からの政府の保護、政府機関の活動に関する情報の隠匿、特定のイデオロギーの確立、労働不安の鎮圧を目的としているに過ぎないのに安全保障を理由として秘密指定を行うことはできない、と明示すべきである。そして、秘密指定5年後の最初の見直しの後は、司法審査を可能とすべきである。
前出のアダムズ局長は「現在の法案では、日本政府の透明性は著しく低下し、日本が負う国際的人権上の義務に政府は背くことになる」と指摘。「政府は法案を再検討すべきだ。そして、公益ならびに知る権利と、政府の秘密保持とがしっかり均衡を保つことが重要と認めた法律を提案すべきだ。」
国家安全、表現の自由、情報へのアクセスの自由に関するヨハネスブルグ原則は以下よりご覧下さい:
http://www.article19.org/data/files/pdfs/standards/joburgprinciples.pdf
国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)は以下よりご覧下さい:
http://www.opensocietyfoundations.org/sites/default/files/global-principles-national-security-10232013.pdf
日本弁護士連合会によるツワネ原則の日本語訳は以下よりご覧下さい:
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/statement/data/2013/tshwane.pdf
言論および表現の自由の権利の保護・促進に関する国連特別報告者フランク・ラ・リュ氏による2013年9月の報告書は以下よりご覧下さい:
http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/N13/464/76/PDF/N1346476.pdf?OpenElement
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「知る権利を侵害する」秘密保護法案――国際ジャーナリスト連盟が声明発表
日本の国家秘密法は知る権利を侵害する(新聞労連仮訳)
2013年11月21日
国際ジャーナリスト連盟(IFJ=International Federation of Journalists)は、日本政府に対し、秘密情報の漏洩を防ぐために広範な権限を政府官僚に与えて、取材・報道の自由や知る権利を侵害する国家秘密法案の提案に反対する緊急声明を発表する。
現在日本の国会で審議中の「特定秘密保護法案」は、成立すると、基本的にすべての省庁や政府機関に防衛、外交、防諜やテロ対策に関連する情報を国家秘密に指定する権利を与える。
法案は、秘密を構成する明確な指針を示していない。そして、国家秘密として保護される項目として「テロ活動防止のための対策、作戦、調査」と「特定有害活動」を一覧表示し、「人を暴く」「施設に侵入」などによって保護されている秘密を取得すると最高懲役10年を求刑する。
日本のIFJ加盟組織は、法案に強く抗議している。「IFJは、本来なら公開されるべき情報を秘密に指定することを、政府に白紙委任するいかなる法律にも重大な関心を持っている」とIFJアジア太平洋地連ディレクターのJacqueline
Park氏は述べる。「もちろん、秘密の定義のあいまいさ、そして重い懲役刑の導入が政府の活動に対する調査報道や内部告発者への直接の打撃となること、ジャーナリストと官僚のコミュニケーションに間違いなく影響があることにも」と述べた。
これまでは、防衛省だけが2001年の法改正で「防衛秘密」を指定する権限を持っていた。2006年から2011年の間に5万5000件の文書が指定され、3万4000件が秘密保持期間の終了時に破棄された。わずか1件だけが秘密解除された。新しい法案では秘密期間を無期限に延長できるようになる。
「民主的な社会では、政府に公共の情報を保持する絶対的な権力を認めるいかなる法や規制も、最高の注意が払われるべきである」とPark氏は述べた。
IFJは日本の国会に、この法案を拒否することで民主主義の原則を尊重するよう要求する。
Park氏は、「調査報道の神髄は暗所に光を当てることであり、政府の活動を社会に知らせることである」と述べ、「ジャーナリストを好きなように起訴できる可能性を政府に許すいかなる法律も、非難されなければならない」と強調した。
IFJ=世界131カ国60万人以上が加盟するジャーナリストの職能ユニオンの国際組織。本部はベルギーのブリュッセル。日本からは新聞労連、民放労連、日本放送協会労組が加盟。英文⇒http://www.ifj.org/en
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秘密保護法案はツワネ原則違反・国際社会から懸念の声
秘密保護法案はツワネ原則違反、廃案にするしかない
-国際社会から、続々と懸念の声 いまこそ日本政府は暴走をとめよ-
秘密法反対ネット
海渡 雄一
1 修正案では問題は解決しない
秘密法の制定は、戦前の例を見てもわかるように、戦争への道に直接つながっ
ている。負けている戦争の真実が隠され戦争が続き、多くの命が失われた。国民
の多くは、この法案が原発の安全情報もテロ対策などの名目で秘密にしていくも
のであることを見抜いている。みんなの党や維新の会と与党の間で進められた修
正案では何も問題は解決されない。首相を第三者機関にしても、官邸で首相を取
り巻く治安官僚たちが政府に君臨するだけだ。60年で原則公開といっても、例
外だらけで期間も長すぎる。この法案は廃案とするほかない。そして、これから
の安全保障と情報へのアクセスのあり方について、きちんとした議論を始めるべ
きだ。そのような議論のために合理的でバランスのとれた基準を提供してくれる
国際原則がある。それがツワネ原則だ。
2 アメリカに追随せず、ヨーロッパの流れに見習おう
ツワネ原則の根拠は日本政府も批准している自由権規約19条にある。ヨーロ
ッパ人権裁判所は、ツワネ原則をさらに進め、ジャーナリストやNGO(非政府
組織)活動家が政府の隠された情報にチャレンジして情報を入手して公開する過
程に窃盗や侵入、不正アクセスなどの法違反があっても、その情報が公共の討論
に貢献し、違反による害が大きくなければ、倫理的な基準に沿ってなされた行為
に対して刑事罰を科すべきではないという法理を確立している。また仮に均衡を
欠き、刑罰を科さざるを得ない場合も、表現行為に対する刑罰は罰金に止めるべ
きであるという判例理論も確立している。ジャーナリストや市民活動家を厳罰に
処し、刑務所に送り込もうとしてやまないアメリカ政府や日本政府とは根本的に
違う価値観がヨーロッパでは共有されている。ツワネ原則は、このようにしてヨー
ロッパにおいて発展してきた民主主義と国の安全保障を両立させる考え方をガイ
ドラインとして定式化したものだと言える。
3 ツワネ原則の法規範性
ツワネ原則は、国連そのものが策定したものではない。しかし、この原則の策
定には、国際連合、人及び人民の権利に関するアフリカ委員会、米州機構、欧州
安全保障協力機構の特別報告者が関わっている。
フランク・ラ・リュ(言論と表現の自由の権利に関する国連特別報告者)は「私
は、国連人権理事会によって本原則が採択されるべきだと考える。全ての国が、
国家安全保障に関する国内法の解釈に本原則を反映させるべきである。」と述べ
ている。
カタリナ・ボテロ(表現の自由と情報へのアクセスに関する米州機構(OAS)特別
報告者)は、「安全保障のための国家の能力と個人の自由の保護との間に適切な
均衡を保つものとして、ツワネ原則を歓迎する。」と述べている。
原則の公表後、欧州評議会議員会議は 2013年10月2日「このグローバ
ル原則を支持し、欧州評議会の全加盟国の当該分野の関係官庁に対して、情報へ
のアクセスに関する法律の制定と運用を現代化するにあたっては、本原則を考慮
に入れることを求める。」と決議している。日本は、欧州評議会のオブザーバー
であり、この原則を十分に検討しなければならない。
4 国連特別報告者、ツワネ原則の起草者からも強い懸念
国際社会からの関心が急速に高まってきた。アーティクル19は、11月12
日秘密保護法案に対して「法案を否決し、日本が国際法を忠実に遵守するよう強
く求める。」との声明を明らかにした。国際ジャーナリスト連盟(IFJ)環太
平洋アジア地連は11月21日「国民の知る権利を損なう」として秘密保護法案
に反対する声明を出した。そして、ツワネ原則に起草者として関わったフランク
・ラ・リュ国連報告者はアナンダ・グローバー国連健康問題に関する特別報告者
と連名で、特定秘密保護法案に関し、日本政府にいくつもの質問事項を伝え、国
際法における人権基準に照らし合わせた法案の適法性について、強い憂慮を表明
した。ラ・リュ氏は、「透明性は民主主義ガバナンスの基本である。情報を秘密
と特定する根拠として、法案は極めて広範囲で曖昧のようである。その上、内部
告発者、そして秘密を報道するジャーナリストにさえにも重大な脅威をはらんで
いる」「例外的に、情報が機密にされる必要があると当局が認めた場合でも、独
立機関の審査が不可欠である」「違法行為や、公的機関による不正行為に関する
情報を、公務員が正当な目的で機密情報を公開した場合、法的制裁から守られな
ければならない」「同じように、ジャーナリストや市民社会の代表などを含むそ
のほかの個人が、公益のためと信じて機密情報を受け取り、または流布しても、
他の個人を重大な危険の差し迫った状況に追いやることがない限り、いかなる処
罰も受けてはならない」と述べている。
また、11月24日付のジャパン・タイムス紙は、ツワネ原則の起草にあたっ
たオープンソサエティ財団上級アドバイザーのモートン・ハルペリン氏へのイン
タビューを掲載している(共同・AFP・時事)。ハルペリン氏は、「この法案
は内容も、その審議の拙速さも私が見てきたどの法案よりもひどい。」「なぜ
(秘密を漏えいしても)公益によって処罰されない場合が保障されないのか、公
の説明が必要だ。」と述べている。
我々は、この法案にはツワネ原則から見ると、重大な欠落点、違反点が多数認
められると指摘してきた。この指摘を裏付ける国際的権威の発言が相次ぐ。日本
政府に法の支配への敬意と民主主義を尊重する一片の良心が残されているならば、
国民の8割以上が懸念を示している法案をいったん白紙に戻し、現存する自衛隊
法などの中に含まれる秘密保全法制を含めて原則の考え方を織り込んで改正する
など、根本から練り直す作業に着手するべきである。安倍首相の識見と洞察力が
試されている。
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特定秘密保護法案は透明性を脅かすものである
日本:特定秘密保護法案は透明性を脅かすものである
国際連合特別報告者 ジュネーブ(2013年11月21日):国際連合人権理事会の特別報告者の二人が、日本国政府が国会に提出した特定秘密保護法案に関し、強い懸念を表明した。 表現の自由に関する特別報告者および健康への権利に関する特別報告者は、法案に関して日本政府にいくつもの質問事項を伝え、国際法における人権基準に照らし合わせた法案の適法性について、憂慮を表明した。 「透明性は民主主義ガバナンスの基本である。情報を秘密と特定する根拠として、法案は極めて広範囲で曖昧のようである。その上、内部告発者、そして秘密を報道するジャーナリストにさえにも重大な脅威をはらんでいる」と、表現の自由に関する特別報告者のフランク・ラ・ルー氏は述べた。 公共問題に関する情報を秘密にすることが正当であるのは、その情報が公開すされることで重大かつ実証可能な危険性があり、なおかつ、その危険性が情報を公開することによる公益性を上回る場合だけである、とラ・ルー氏が強調した。 「例外的に、情報が機密にされる必要があると当局が認めた場合でも、独立機関の審査が不可欠である」とラ・ルー氏が述べた。 特別報告者は法案にある、情報を公開した人に対する罰則について特に注目し、「違法行為や、公的機関による不正行為に関する情報を、公務員が正当な目的で機密情報を公開した場合、法的制裁から守られなければならない」と強調した。 「同じように、ジャーナリストや市民社会の代表などを含むそのほかの個人が、公益のためと信じて機密情報を受け取り、または流布しても、他の個人を重大な危険の差し迫った状況に追いやることがない限り、いかなる処罰も受けてはならない」、と言った。 健康への権利に関する特別報告者のアナンド・グローバー氏は去年日本を訪問し、福島原発問題への対応を調査した。彼は、緊急事態において常に完全なる透明性を確保することの重大性を強調し、「特に災害においては、市民が継続的かつ迅速に情報を提供されることは必要不可欠だ。それによって、市民が健康に関して正確な判断が下せるからだ」と述べた。 国連の特別報告者は、加盟国から選出される人権理事会が特定の人権問題に関して調査及び報告を任命する、独立した専門家です。 原文;http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/Media.aspx?IsMediaPage=true&LangID=E 和訳文責・問い合わせ: 藤田早苗(sfujit@essex.ac.uk)、 高橋宗瑠(humanrights.praeger@gmail.com、+972 54 817 4003
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「特定秘密保護法」に日本外国特派員協会が懸念表明
日本外国特派員協会は現在日本の国会で審議中の「特定秘密保護法案」を深く憂慮しています。
特に、われわれが懸念しているのは、同法案の中にジャーナリストに対する起訴や禁固を可能にする条文が含まれており、与党議員の一部が、それに順ずる発言を行っていることです。
開かれた社会における調査報道の真髄は、政府の活動に関する秘密を明らかにし、それを市民に伝えることにあります。そのような報道行為は民主主義の基本である抑制と均衡のシステムに不可欠なものであって、犯罪などではありません。
本法案の条文によれば、報道の自由はもはや憲法で保障された権利ではなく、政府高官が「充分な配慮を示すべき」対象に過ぎないものとなっています。
その上、「特定秘密保護法案」には公共政策に関する取材において「不適切な方法」を用いてはならないといった、ジャーナリストに対する具体的な警告文まで含まれています。これはメディアに対する直接的な威嚇であり、十分に拡大解釈の余地がある表現は、政府に対し、ジャーナリストを意のままに逮捕する権限を与えることになります。
日本外国特派員協会の会員には日本国籍を有する者と外国籍を有する者が含まれていますが、1945年に設立された由緒ある当協会は常に報道の自由と情報の自由な流通こそが、日本と諸外国との間の友好関係や相互理解を維持、増進するための不可欠な手段と信じてまいりました。
そのような観点から、われわれは国会に対し、「特定秘密保護法案」を廃案とするか、もしくは将来の日本の民主主義と報道活動に対する脅威とならないような内容への大幅な修正を、強く求めます。
ルーシー・バーミンガム
日本外国特派員協会々長
平成25年11月11日
英文⇒http://www.fccj.or.jp/images/FCCJ-State-Secrets-Protest-eng.pdf
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新聞労連 緊急声明「違憲状態の国会が秘密保護法案を審議する資格はない」
緊急声明
2013年11月20日
日本新聞労働組合連合
中央執行委員長 日比野敏陽
最高裁による「衆議院違憲状態」判決について
〜違憲状態の国会が秘密保護法案を審議する資格はない〜
最高裁は11月20日、昨年12月の衆院選は違憲だとして弁護士グループが選挙無効(やりなおし)を求めた全国訴訟の上告審判決で、「違憲状態」との判断を示した。選挙のやり直しは退けたが、最高裁によって「違憲状態」と判断されたいま、国会は憲法違反が疑われる特定秘密保護法案や国家安全保障会議設置法案を審議する資格はない。国会は特定秘密保護法案の審議を停止し、すみやかに選挙制度改革に取り組むべきだ。
昨年12月の衆院選については、高裁・高裁支部判決では違憲判決が相次ぎ、戦後はじめての無効判決もあったが、今回、最高裁は判断を「違憲状態
にとどめた。これにより、選挙制度改革が停滞することがあってはならない。
日本は「一人一票」の選挙権がある有権者の多数決によって国会議員を選出し、その議員が政府を運営することになっている。だが現実には、全有権者の半数以上が「一人一票」に満たない権利しか持っていない
有権者数を正しく反映しているとは言えない国会が法律を作り、内閣総理大臣を選び、その内閣が最高裁裁判官を任命している。こうした実態が、今回の最高裁判決に影響し、高裁・高裁支部の判決に比べ事実上後退し、行政権に「配慮」したような結果になった、という指摘も出ている。このようなゆがんだ実情の中、行政権だけが突出する秘密保護法案をわずかな審議時間で採決することは到底許されない。
以上
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ヒューマンライツ・ナウ「特定秘密保護法案に反対する声明」
現在日本の国会で特定秘密保護法案が審議されている。
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、以下の理由から、同法案に深刻な懸念を表明し、同法の制定に強く反対する。
1 法案では極めて広範な情報が「秘密」と指定され、市民の目から遠ざけられる。「秘密」として指定される情報は、防衛、外交、特定有害活動、テロという四分野の情報とされ、極めて包括的な情報が秘密として指定されうることになる。軍事・外交・テロ対策という、国の最も重要な問題に関するほとんどの情報が「秘密」と指定されることとなりかねない。法案自体には、秘密指定に関する客観的で明確な基準は定められておらず、有識者の意見を聞いて基準を定めるとするが、秘密指定には何らの法律上の限定が存在しない。
これでは、公益に関わる多くの情報から国民が遠ざけられ、「知る権利」が侵害される危険性が高い。
2 特定秘密の指定は「行政機関の長」の独断で行うことができる(3条)とされ、第三者機関や国会による民主的コントロールの仕組みは存在しないため、不適正な秘密指定がされる危険性を防ぐ制度的保障はない。秘密指定は5年内とされるが、延長もできるとされ、公開の原則も明記されていない。
3 同法には、内部告発者の行為を免責するセーフガード条項も存在しない。
現行の公益通報者保護法(1)
は、通報者を解雇等の不利益処分から守るものではあるが、犯罪行為に該当する場合の刑事訴追を想定して通報者を保護する法制ではない。これでは、政府が不正・違法行為を行った際に、これを告発した公務員等が処罰されることとなる。
4 さらに問題なのは、秘密保護法案が、秘密漏えいを「共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役に処する」(24条)という独立共犯(2)
の規定をおいていることである。これでは報道機関の取材活動が処罰の対象となる恐れがあり、自由な取材・報道・言論の自由を著しく脅かすものである。
法案21条は、報道・取材の自由に配慮すると定めるが、訓示規定に過ぎず、配慮の対象とされる「出版又は報道の業務に従事する者」とは誰かも不明確であり、捜査権限の濫用への歯止めにならない。また、市民による監視活動、オンブズマン、政策提言・モニタリングを行うNGO・シンクタンクによる活動には言及がないため、こうした市民活動への処罰には何らの歯止めもない。NGO等市民社会が、政府の情報を収集して公表し、政府の行動を監視する行動やそのための議論自体が処罰対象となりかねない。これでは、行政・権力を市民社会が監視するという民主主義の健全なチェックアンドバランスを深刻に阻害する危険性が高い。
5 法案では、ひとたび秘密と指定された情報について、裁判所や国会に対して極めて限定的・例外的な場合以外は開示しない旨規定されている。国会への開示は「我が国の安全保障に著しい支障を及すおそれがないと認めたとき」に限られ、さらに各院ないし委員会の審査・調査の場合であり、秘密会でない限り、開示されない。個々の国会議員の国政調査では入手不可能である。また、裁判所への開示も厳しく限定され、司法審査を著しく妨げることとなる。特に刑事裁判においては、被告人が適正に自己弁護活動をすることが困難になり、適正手続や公開裁判を受ける権利が不当に侵害される危険もある。このようなあり方では、国会・裁判所も知らないまま、政府や官僚が独走し、特に軍事・外交部門で国にとって重要な決定が、国民や国会議員の知らない間になされてしまう可能性が高い。
6 国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)(3)
は、裁判所、オンブズマン等の監視機関が情報へのアクセス権を持つこと(原則6)、国家による人権侵害に関わる情報(国際人権・人道法違反等)、国家による市民監視に関する情報、国家による武力行使決定や核・大量破壊兵器に関する情報、憲法・法令違反及びその他の権力濫用に関する情報、公衆衛生、市民の安全又は環境に関する情報が開示されるべきこと(原則10)、内部告発者の保護(原則40、41、43)、公務員以外の者は、秘密情報の受領、公表に関して制裁を受けず、また情報の入手や情報を求めたことを理由に共謀その他の容疑で訴追されないこと(原則47)、取材源・情報源の秘匿が保障されること(原則48)などを明記している。ところが、現在審議されている法案は、こうした原則と著しくかけ離れている。
7 そもそも、日本の現行法制のもとでも、国家公務員法、地方公務員法、自衛隊法に、秘密漏えいに関する罰則が存在する。現行法の枠を越えて、処罰範囲を拡大し、厳罰化する必要性、そして現行法では十分でないという立法事実を政府は明確に示していない。
8 以上のことから、ヒューマンライツ・ナウは、法案に強い懸念を表明し、これに反対する。政府に対しては、人権保障と民主主義に対して危険を及ぼすこの法案を
制定しないことを強く求める。
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注釈
(1)
http://www.caa.go.jp/seikatsu/koueki/gaiyo/jobun.html
(2) 正犯とは独立して共犯のみを処罰すること
(3) The Global Principles on National Security and the Right to Information (The Tshwane
Principles)
http://www.opensocietyfoundations.org/sites/default/files/global-principles-national-security-10232013.pdf
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ
〒110-0005
東京都台東区上野5-3-4
クリエイティブOne秋葉原ビル7F
電話:03-3835-2110 FAX:03-3834-1025
連絡先:info@hrn.or.jp ウェブサイト:http://hrn.or.jp/
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ARTICLE19:秘密保護法案を否決するよう、日本の国会に強く求める
2013年11月12日
表現の自由のための国際人権団体であるARTICLE19は、日本の国会に対して、現在審議中の特定秘密保護法案を否決するよう、強く求める。
10月に閣議決定され、今週国会で審議中の当法案は表現の自由と情報にアクセスする権利(知る権利)を保障する国際法の基準に反している。具体的には:
●秘匿される情報の定義が極度にあいまいである。防衛、外交、「特定有害活動」や「テロリズム」に関するいかなる情報にも適用可能であり、政府が環境災害、人権侵害、汚職、または国際法によって公開されるべき他の分野の情報をも隠蔽することが可能になる。
●情報が特定秘密にされる期限は5年ごとに延長することでその期間を無制限に延長すことができる。
●内部告発は公益が目的であっても、上限10年の懲役を受ける。
●ジャーナリストが特定された情報を報道した場合、それが公益に資することを証明しても起訴されうる。
●第21条に提示されている、報道の自由に関する規定は極めて弱いものである。それらによれば、
◎ 政府は「不当」な人権侵害を避けることを求められてはいるが、何が「不当」かが不透明である、
◎ 報道または取材の自由に「十分に配慮」することを求めているだけで、それが何を意味すのか具体的な定義がない、
◎「専ら公益を図る目的を有」すものを合法としているが、「公益」の定義は政府自身が行うものとされている。
当法案は、日本政府が福島原子力発電所の甚大な事故に関して、十分かつ適時の情報提供をしなかったことで、避けることができたはずの死を招いた後に作成された。健康への権利に関する国連特別報告者は2013年の日本に関する報告書において、事故に関する情報への人々のアクセスに政府が多くの障害を課したことについて批判している。ARTICLE19は、当法案が可決されれば、政府にとって不都合な情報が非公開にされる傾向が、更に助長されるであろうと懸念する。
ARTICLE19は国会に、当法案を否決し、日本が国際法を忠実に遵守するよう強く求める。
* 秘密として特定される情報の範囲は厳しく制限され、国の正当な安全保障にとって重大かつ確認可能な危険があるときにのみ、期間を限って秘密にされるべきである。
*秘密に特定されている情報であっても、公開することで公益に資する場合は、公開されなければならない。
*公益に資する情報を公表する内部告発者は保護されなければならない。
*ジャーナリストは秘密に特定されている情報であっても、公益に資するいかなる情報の公表に関しても責任を問われてはならない。
*「公益」の定義は、公の議論やアカウンタビリティー(説明責任)に実質的に関連するいかなるものも広く含まれることとする。
ARTICLE19は表現の自由及び知る権利の保護を専門とする国際人権団体である。1987年に設立され、本部をロンドンに置く。日本語での問い合わせは:
藤田早苗(sfujit@essex.ac.uk)高橋宗瑠(humanrights.praeger@gmail.com/電話+972
54 817 4003)
声明の原文
http://www.article19.org/resources.php/resource/37346/en/article-19-urges-japanese-parliament-to-reject-new-secrets-bill
参考資料
*The Johannesburg Principles on National
Security, Freedom of Expression and Access to Information
http://www.article19.org/data/files/pdfs/standards/joburgprinciples.pdf
*The Global Principles on National Security and the Right to
Information (The Tshwane Principles)
http://www.opensocietyfoundations.org/sites/default/files/global-principles-national-security-10232013.pdf
*Report of the Special Rapporteur on the promotion
and protection of the right to freedom of opinion and expression, A/68/362 (2013)
http://daccess-ods.un.org/TMP/3196021.61645889.html
*Report of the Special Rapporteur on the right of
everyone to the enjoyment of the highest attainable standard of physical and mental health,A/HRC/23/41/Add.3
(2013)
http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G13/160/74/PDF/G1316074.pdf?OpenElement
For more information or media interviews in English, please contact David Banisar, Senior Legal Counsel
+ 44 207 324 2518, banisar@article19.org<mailto:banisar@article19.org<mailto:banisar@article19.org%3cmailto:banisar@article19.org>>
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特定秘密保護法案のさらなる報道についての要請
2013年11月18日
新聞・通信・放送各社 御中
メディア総合研究所
所長 砂 川 浩
慶
特定秘密保護法案に関する衆議院での審議が今週ヤマ場を迎えると伝えられて
いる。当研究所では、この法案は「民主主義」「国民主権」という日本国憲法の
土台を崩壊させる危険性を持つ稀代の悪法であり、廃案にすべきと考えている。
「適性評価」によるプライバシー侵害、「監視社会」化による暗黒社会の招聘、
恣意的な運用が可能でかつ公開を前提としない「特定秘密」による社会の閉塞
化、厳罰化による「報道の自由」や「知る権利」への萎縮効果など、多くの問題
点を抱えているからだ。
このような多くの問題を持ち、国民生活に密接に関わる特定秘密保護法案であ
るが、国民全体が十分理解しないままに国会で性急な審議が進められている。こ
の法案の危険性・問題点や各種団体・個人による反対運動が報道されることに
よって、各種世論調査結果でも「反対」が増加してきたが、いまだ「良く分から
ない」との回答も目立っている。国民が自らの問題としてこの法案を考えるため
には、質・量とも十分な情報によって理解を深めることが欠かせない。そのため
にも、さらなる報道の充実が必要となる。
既に新聞においては、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、共同通信や各地方紙な
どが積極的な報道を展開している。また、テレビにおいてもテレビ朝日、TBSな
どがニュース番組やコーナー企画を充実させている。その一方、最大の発行部数
を誇る読売新聞、公共放送であるNHKでは十分な報道が行われているとはいいが
たい。特にNHKにおいては、この間、安倍首相に近い人物が経営委員に指名さ
れ、年明けに任期を迎える会長人選にも安倍首相の影響が及ぶことが懸念されて
おり、そのことが特定秘密保護法案をあまり報じないこととつなげて考えられて
いる。国民生活に密接に関わる問題を取り上げることは公共放送の責務であり、
このような懸念を払拭するためにも、番組での積極的な解説が必要だ。
危険性を持った法律が一旦、制定されると一人歩きをはじめ、国民生活に牙を
向くことは、今回の特定秘密保護法案同様、国際的な秘密保護水準の達成を制定
目的とした戦前の軍機保護法や、治安維持法の改正経緯・運用をみれば明らかで
ある。報道各社が、問題点、歴史的経緯、国際比較、憲法との関係など、特定秘
密保護法案をめぐる様々な論点をさらに提示・解説することで、国民が考える材
料が豊かになり、民主的な判断が可能となる。
将来に禍根を残さないためにも、報道各社が特定秘密保護法案に関する、さら
なる報道を実施することを強く求める。
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新聞労連声明「特定秘密保護法案の閣議決定に抗議する」
2013年10月25日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
政府は10月25日、特定秘密保護法案を閣議決定した。法案には「知る権利」や「取材の自由」への「配慮」が追加事項として盛り込まれたが、国の情報が国民の知らないところで秘密指定され、一方的に闇に葬り去られる仕組みに何ら変わりはない。そもそも「知る権利」や「取材の自由」は憲法で保障された基本的人権であり、追加事項とすることは本末転倒である。本質的に憲法違反の情報統制法案が国民の意見を十分に聞くこともなく閣議決定されたことに断固抗議する。
新聞労連はこれまで同法案について▽秘密指定の範囲があまりにもあいまいで恣意的運用を招く▽公務員など取材対象者を激しく萎縮させ、国民に知らせるべき情報も公開されなくなる▽秘密漏えいの教唆や扇動も処罰されることから、取材や報道の自由を侵害する可能性が極めて高い▽国会議員も処罰対象になっており、国権の最高機関としての性格が損なわれる▽適性評価は重大なプライバシー侵害につながる―などと指摘し、法案の撤回を求めてきた。
閣議決定された法案では、取材、報道に「十分に配慮する」と明記するなど、いくつかの変更がなされたが、本質的には何も変わっていない。「十分に配慮する」としても努力規定であり、担保される保障はまったくない。また、「出版または報道の業務に従事する者の取材行為」については「法令違反または著しく不当な方法によるものと認められない限りは正当な業務による行為」とするとしているが、そもそも個別の取材について「正当な業務」なのか否かを誰がどのように判断するのか。捜査当局の恣意的な判断と運用につながる危険性が極めて高い。
閣議決定に先立ち同法案担当の森雅子少子化担当大臣は、日米沖縄密約を報道して有罪になった西山太吉さん(元毎日新聞記者)の事件が特定秘密保護法違反として処罰される事例と述べている。国が国民を裏切り密約を結んだこと自体が違法なのに、その事実を報じることが処罰されてしまうのである。秘密保護法案の本質がここにあると言わざるをえない。私たちはこのような法案の国会提出に断固反対する。
以上
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日弁連会長声明「ツワネ原則に即して再検討を求める」
特定秘密保護法案に反対し、ツワネ原則に即して
秘密保全法制の在り方を全面的に再検討することを求める会長声明
国が扱う情報は、本来、国民の財産であり、国民に公表・公開されるべきもので
ある。「特定秘密の保護に関する法律案」は、行政機関が秘密指定できる情報の
範囲を広くかつ曖昧に設定し、かつ、運用の実態は第三者がチェックできない一
方で、このような情報にアクセスしようとする国民や国会議員、報道関係者など
のアクセスを重罰規定によって牽制するもので、まさに行政機関による情報支配
ともいうべき事態である。
当連合会では、本年9月12日に「『特定秘密の保護に関する法律案の概要』に
対する意見書」を、同年10月23日に「秘密保護法制定に反対し、情報管理シ
ステムの適正化及び更なる情報公開に向けた法改正を求める意見書」を公表し、
同月25日に「特定秘密保護法案の閣議決定に対する会長声明」を公表した。当
連合会の相次ぐ意見表明に対して、新聞やテレビ、ラジオ、雑誌、インターネッ
トニュースなどがこぞって法案を問題とする報道を行うようになったこともあり、
多くの国民が法案に関心を抱くとともに、法案の賛否に関わらず早急な成立を望
まない声が日増しに強くなっている。このような国民の意向を受けて、政府及び
国会には、法案の慎重審議が強く求められている。
ところが、政府及び与党は、法案を慎重審議するどころかむしろ短期間で成立さ
せようとしている様子さえ窺える。政府及び与党が我が国における法案の重要性
を強く認識するのであれば、尚更のこと、国民の理解と納得を得られるよう、法
案の内容を検討し直すべきである。
「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(以下「ツワネ原則」という
。)は、自由権規約19条等をふまえ、国家安全保障分野において立法を行う者
に対して、国家安全保障への脅威から人々を保護するための合理的な措置を講じ
ることと、政府の情報への市民によるアクセス権の保障を両立するために、実務
的ガイドラインとして作成されたものであり、本年6月、南アフリカ共和国の首
都・ツワネで公表されたものである。
当連合会では、これまでの提案を踏まえ、ツワネ原則による法案の見直しと撤回
を求める。
以下、ツワネ原則に則して特定秘密保護法案の問題点を指摘する。
1 ツワネ原則1、4は国家秘密の存在を前提にしているものの、誰もが公的機
関の情報にアクセスする権利を有しており、その権利を制限する正当性を証明す
るのは政府の責務であるとしている。しかし、法案にこの原則が明示されていな
い。
2 ツワネ原則10は、政府の人権法・人道法違反の事実や大量破壊兵器の保有
、環境破壊など、政府が秘密にしてはならない情報が列挙されている。国民の知
る権利を保障する観点からこのような規定は必要不可欠である。しかし、法案に
は、このような規定がない。
3 ツワネ原則16は、情報は、必要な期間にのみ限定して秘密指定されるべき
であり、政府が秘密指定を許される最長期間を法律で定めるべきであるとしてい
る。しかし、法案には、最長期間についての定めはなく、30年経過時のチェッ
クにしても行政機関である内閣が判断する手続になっており、第三者によるチェッ
クになっていない。
4 ツワネ原則17は、市民が秘密解除を請求するための手続が明確に定められ
るべきであるとしている。これは恣意的な秘密指定を無効にする上で有意義であ
る。しかし、法案はこのような手続規定がない。
5 ツワネ原則6、31、32、33は、安全保障部門には独立した監視機関が
設けられるべきであり、この機関は、実効的な監視を行うために必要な全ての情
報に対してアクセスできるようにすべきであるとしている。しかし、法案には、
このような監視機関に関する規定がない。
6 ツワネ原則43、46は、内部告発者は、明らかにされた情報による公益が
、秘密保持による公益を上回る場合には、報復を受けるべきでなく、情報漏えい
者に対する訴追は、情報を明らかにしたことの公益と比べ、現実的で確認可能な
重大な損害を引き起こす場合に限って許されるとしている。しかし、法案では、
この点に関する利益衡量規定がなく、公益通報者が漏えい罪によって処罰される
危険が極めて高い。
7 ツワネ原則47、48は、公務員でない者は、秘密情報の受取、保持若しく
は公衆への公開により、又は秘密情報の探索、アクセスに関する共謀その他の罪
により訴追されるべきではないとし、また、情報流出の調査において、秘密の情
報源やその他の非公開情報を明らかすることを強制されるべきではないとしてい
る。しかし、法案にはこのような規定がないどころか、第23条ないし第26条
の規定によって広く処罰できるようにしている。
この原則の策定には、アムネスティインターナショナルやアーティクル19のよ
うな著名な国際人権団体だけでなく、国際法律家連盟のような法曹団体、安全保
障に関する国際団体など22の団体や学術機関が名前を連ねている。この原則に
は、ヨーロッパ人権裁判所やアメリカ合衆国など、最も真剣な論争が行われてい
る地域における努力が反映されている。起草後、欧州評議会の議員会議において、
国家安全保障と情報アクセスに関するレポートにも引用されている。
当連合会は、政府が安全保障上の理由によって一定の事項を一定の期間、秘密と
する必要があると判断し対応していることを、全面的に否定するものではない。
しかし、このような対応を許容することによって、国民の基本的人権である言論
の自由、プライバシー権が侵害されるべきではない。
法案に上記のような構造的な問題点があることが明らかであるから、政府は、法
案を一旦白紙に戻し、現存する国家公務員法や自衛隊法などの中に含まれる秘密
保全法制も含めて、秘密保全法制の在り方を根本的に見直すべきである。
2013年(平成25年)11月15日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
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秘密保護法案に反対する杉並区民アピール
◎秘密保護法案に反対する杉並区民アピール
今から59年前、ビキニ水爆実験による放射能汚染が広がる中、杉並区民がおこ
した署名運動は日本発の原水爆禁止の声として全世界に広がりました。その歴史
を踏まえて、杉並区に住む私たちは、今国会に上程されている「秘密保護法案」
に強く反対します。その理由は以下の通りです。
1、 行政機関の長が「特定秘密」を定め、それを漏らした公務員、伝えた記者、
さらには秘密を漏らすよう働きかけた民間人までをも、最高10年もの重罰に処す
と定めた本法案は、市民の知る権利を侵害し、研究・文化活動を妨害するもので
す。市民の基本的人権をおかす本法案に反対します。
2、 集団的自衛権行使容認の動きが進む中、国家安全保障会議設置法とセットと
して上程された本法案は、アメリカ軍などの軍事行動と連携して戦争に参加する
危険を高めるものです。憲法で定める平和主義に反する本法案に反対します。
3、 福島第1原発事故で、重大な放射能汚染が広がったにもかかわらず、
SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報は、まったく
住民避難に生かされることなく、住民の初期被ばくを防げなかったという、甚大
な結果をもたらしました。原発情報が、「テロの危険」の名のもとに「特定秘密」
とされたら原子力情報はさらに隠されることになるでしょう。市民の生命・健康
・安全を危険にさらす本法案に反対します。
4、 我が国の民主主義制度においては国会が国権の最高機関であり、国会では正
確な情報に基づいた議論が保障されなければなりません。しかし、本法案は議員
の国政調査権を制限するばかりか、特定秘密の国会への提供を非公開の秘密会に
限定しています。しかも、その提供の諾否は、行政機関の長の判断次第とされて
います。行政機関の判断次第で、安全保障や原子力はじめ、国民にとって重要な
情報を得られなくなります。それは世界の潮流である情報公開の流れに逆行して
います。国民主権を踏みにじる本法案に反対します。
「生命と健康を守りましょう」と杉並から全国によびかけた原水爆禁止署名は
その年の内に2000万筆、翌年には3200万筆に達しました。その歴史を思いおこし、
市民の生命と健康と安全を守るために、憲法で定めた基本的人権の尊重・平和主
義・国民主権をことごとく侵害する本法案に強く反対します。
2013年11月13日
<呼びかけ人> (50音順)
新井章 (弁護士、宮前在住)、
池田香代子(翻訳家・世界平和アピール7人委員会,西荻窪)、
石崎暾子 (戦争への道を許さない女たちの連絡会、本天沼)、
伊藤定良 (青山学院大学名誉教授、阿佐ヶ谷)
勝俣誠 (明治学院大学教授、荻窪)、
金子ハルオ(都立大学名誉教授、天沼)
君島和彦 (東京学芸大学名誉教授、宮前)、
熊谷博子 (映像ジャーナリスト、天沼)
栗田禎子 (千葉大学教授、久我山)、
黒川みどり(静岡大学教授、南荻窪)
小林綠 (国立音楽大学名誉教授、高井戸東)、
髙嶋伸欣 (琉球大学名誉教授、松庵)
寺田かつ子(元草の実会、上井草)
中村平治 (東京外国語大学名誉教授、阿佐ヶ谷)
永田浩三 (武蔵大学教授、善福寺)、
羽場久美子(青山学院大学教授、宮前)
服藤早苗 (埼玉学園大学教授、善福寺)、
三上昭彦 (明治大学名誉教授、阿佐ヶ谷)
「秘密保護法に反対する杉並区民アピールに賛同します。
お名前 ( )(肩書き=無記でもok )町名( )」
送付先アドレス tomeyohimituhogoho@yahoo.co.jp
秘密保護法に反対する杉並アピール事務局(髙嶋道、深野和之、丸浜江里子)
連絡先:090-4664-6105(深野) FAX:3331-4533
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監視社会を拒否する会の抗議声明
声明 ― 秘密保護法の制定に反対する ―
2013年10月14日
監視社会を拒否する会
共同代表 伊藤成彦(中央大学名誉教授) 田島泰彦(上智大学教授)
福島 至(龍谷大学教授)
村井敏邦(大阪学院大学教授)
(1)安倍自公政権は10月15日からの臨時国会において秘密保護法(*)を制定しようとしています。この秘密保護法は、政府が創設しようとしている国家安全保障会議(日本版NSC)のもとで、「国家の安全保障」に関する国家秘密を一元的に管理・統制する体制を確立することを目的としたものに他ならず、1980年代半ばに多くの国民の反対によって廃案においこまれた国家秘密法案(スパイ防止法案)をより反動的な内容で復活させるものと言わざるをえません。
(2)法案においては、「国の安全保障に関する情報」として、「防衛」「外交」のみならず「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」が加えられました。治安・公安に関する情報をも国家秘密の対象に拡大したのです。そのうえで、「行政機関の長」(大臣や警察庁長官等)が自分の判断だけで、特定の情報を「特定秘密」に指定することができるとしたのです。 さらに、「特定秘密」を明らかにしようとする「内部告発者」やジャーナリスト、市民らを念頭において、秘密漏えい行為とともに秘密取得行為にも最高懲役10年の重罰を科すとしました。現実的な秘密の漏えい行為以前の「共謀」をも、漏えいの実行行為の有無にかかわらず処罰する共謀罪規定を設け、「教唆」「扇動」を主犯の実行行為がなくとも、独立に処罰することにしました。共謀について自首したときにも刑を減軽・免除する規定になっており、「特定秘密」を明らかにしようとする団体の弱体化をめざすおそれがあります。 しかも、秘密を取り扱う公務員・民間の契約業者などに対して、「特定有害活動」「テロリズム」との関係、「犯罪歴」「経済的状況」等に関する事項についての調査を行う「適性評価制度」も導入するとしています。これは思想調査そのものであり、思想・良心の自由、プライバシーの権利を侵害するとともに、選別、差別を助長し、内部告発を抑制しかねないものです。
政府によるこのような強権的かつ強圧的な情報統制・表現規制の企てには絶対反対です。政府は法案に「報道の自由」に配慮する規定を盛り込んだことを宣伝していますが、それは単なる努力義務にすぎないだけでなく、この種の配慮や免除が施されることで法案の本質的な危険性を根本的に取り除くことはできません。
(3)自民党の改憲草案では、「国防軍」の創設と「軍事機密」の保持を法制化することが明記され、かつ「公益及び公の秩序」の名のもとに、集会・結社の自由、言論・表現の自由をはじめとした基本的人権を制限することが明記されました。秘密保護法は、この自民党改憲草案の内容を先取りしたものであり、現行憲法を真っ向から否定する違憲の法律です。しかも、政府がこのような重大な法案を準備・作成した過程を一切秘密にしてその制定を図るのは、決して許されるものではありません。
私たちはここに秘密保護法の制定に強く反対することを明らかにするものです。
(*)「特定秘密の保護に関する法律案」
連絡先 〒164-0001 東京都中野区中野5-32-11-504
電話03-5380-2931 FAX
020-4665-3089
E-mail kansi-no@qj8.so-net.ne.jp
URL http://www006.upp.so-net.ne.jp/kansi-no/
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〈声明〉 特定秘密保護法案に対して
「治安維持法」の再来は許さない
横浜事件を語り、伝える会
(http://yokohama-jiken.sakura.ne.jp/)
私たちは、横浜事件の再審裁判に、24年にわたって取り組んだ事件被害者の遺族とその支援者グループです。
横浜事件は太平洋戦争下に引き起こされた日本近代史上最大の思想・言論弾圧事件です。改造社、中央公論社などの出版編集者や研究者ら約90名が特高警察により検挙され、凄惨な拷問と長期拘留により5名が獄死、さらに先の2社は発行していた総合雑誌『改造』『中央公論』もろともに取り潰されてしまいました。
1945年8月の敗戦前後、33名が起訴され、どさくさまぎれのやっつけ裁判により有罪となったため、1986年、事件被害者9名が再審を申し立てたのでした。
最初の裁判から、なぜ41年もたって再審を申し立てたのか?
最大の理由は、前年の85年、中曽根内閣の下で「国家秘密法案」(スパイ防止法案)が上程され、いったんは廃案となったものの、なお修正案が準備されていたからです。
横浜事件は、「治安維持法」違反を理由に引き起こされました。
治安維持法は「国体の変革」「私有財産の否認」を目的とするいっさいの行為を罰するという法律で、条文中の「目的遂行ノ為ニスル行為」が無限の拡大解釈を生みました。じっさい、横浜事件の被害者たちも、当初は自分が何の容疑で検挙されたのか本人自身わからなかったのです。特高が作り出した“虚構の犯罪”だったからです。
1986年の国家秘密法案も、何を防衛・外交上の「秘密」とするかは「行政機関の長が指定する」とされていました。つまり、「行政機関の長」の一存で、「秘密」は自在に作り出されるのです。その本質は「目的遂行ノ為」の解釈と同じです。
したがって、横浜事件の被害者たちはその残酷な体験から、治安維持法に重なる弾圧法規の再現は絶対に許してはならぬとして、やっつけ裁判で闇に葬られた自分たちの体験を法廷で明らかにしたいと考え、再審に踏み切ったのです。
再審裁判は第一次から四次にわたり、24年間を費やして、2010年、判決そのものは「免訴」に終わりましたが、最後の刑事補償審において横浜地裁・大島裁判長は、横浜事件は特高警察と思想検事・思想判事による権力犯罪であったことを明確に認め、「法的障害」さえなければ「無罪」を言い渡すべきことを明言しました。
それからまだわずか3年半、「特定秘密保護法案」が出現しました。今回もまた「秘密」は「行政機関の長」が指定する、となっています。中身は、国家秘密法案とまったく同じです。もしこれを認めれば、24年にわたった横浜事件・再審裁判は何のための裁判だったかを問われることになります。
本質は治安維持法の再来というべき「特定秘密保護法案」の成立を、私たちは断じて許すことはできません。 (2013年11月上旬)
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<アピール>「特定秘密保護法案」に反対する
2013年10月28日
憲法と表現の自由を考える出版人懇談会
政府は10月25日に「特定秘密の保護に関わる法案」(以下「秘密保護法案」)を閣議決定し、国会に提出、特別委員会で審議されることとなった。安倍総理は国会答弁でも、国家安全保障委員会設置法案とともに、それと一体のものとしてこの法案の成立に強い意欲を示している。
この法案は、政府が防衛・外交・スパイなどに関わる情報を「特定秘密」に指定し、それを漏らした公務員や一般人に最高10年の懲役刑を科するというものであるが、そもそも今なぜ、この臨時国会に慌ただしく上程し、成立させなければならないのか?
法案の概要を示したのが去る9月3日。パブリックコメントも通常の半分の2週間で打ち切り(その短期間に9万件の意見がよせられ、内
80%が反対意見)、日弁連・新聞協会・民放連・雑誌協会・書籍協会・出版協・日本ペンクラブ・メディア総研・マスコミ関連労働組合・憲法学者など多くの組織や個人から反対や疑義の声が上がっているなかで、国民の「知る権利」を大きく制約する可能性のあるこの法案を、なぜ急いで成立させなければならないのか。
「秘密」を保護しなければならない差し迫った危機があるのか?
公務員ばかりか一般人にまで厳罰を課す「国家秘密」とは、何を指すのか?
「国家秘密」の指定は恣意的になされないという保証はあるのか?
等々、さまざまな疑問への説明が全く不十分である。
論点となった「知る権利」に関して、最終修正案に出版における取材行為が明記され、「国民の知る権利」や「報道取材の自由」への配慮が盛り込まれたが、それらはあくまでも努力・配慮規定であり、刑罰対象となる「著しく不当な方法によるもの(取材行為)」とは、どういう取材を指しているのか、どうにでも解釈・運用できるのではないか。
出版、とくに雑誌の取材は、新聞や放送に比べて、“雑誌だから取材して書いてくれるだろう”とした持ち込み情報が多々寄せられる。いわゆる“リーク”といわれるものだ。その場合、取材は表からというより裏から迫るケースもあり得る。また建前ではなく本音を聞き出す取材は往々にして内部に食い込まざるをえない。これを「著しく不当」と決めつけられるとすれば、事の真相に迫る取材は到底保障されない。取材が認められる「正当な業務」の範囲は全く定かではないのである。
このように、取材活動が厳罰の対象になる可能性は排除されていない。加えて言えば、「出版又は報道の業務」以外の個人やネット、市民活動などの「知る権利」については全く配慮されていない。
さらには、行政の長による恣意的な「特定秘密」の指定・量産をチェックするために、「すぐれた識見を有する者の意見を聴かなければならない」と定めているが、独立したチェック機能・権限をもつ第三者機関にはほど遠い仕組みといわざるをえない。
以上のように「秘密保護法案」は、取材制限・情報封殺法としての側面が払拭できない上に、政府にとって不都合な情報は恣意的に「秘密」指定し、公開が封じられる恐れのある法案である。
出版活動に携わる私たちは、「言論・出版・表現の自由」を根底から危うくするこのような法律の制定に強く反対するとともに、多くの出版関係者が「特定秘密保護法案」反対の声を上げられるよう、心から訴えるものである。
【憲法と表現の自由を考える出版人懇談会:共同代表世話人/世話人】
岡本厚(岩波書店社長)菊地泰博(現代書館社長)清田義昭(出版ニュース社代表)篠田博之(創出版代表)嶋田晋吾(EIC代表)高橋和男(講談社編集総務局次長)山了吉(小学館社長室顧問)/浅野純次(元東洋経済新報社社長)伊藤洋子(元東海大教授)菊池明朗(筑摩書房相談役)下中直人(平凡社社長)古岡秀樹(学研ホールディングス取締役)元木昌彦(元講談社)
<連絡先:出版人懇談会事務局文京区湯島
2-31-10-202Eメール:kenpoueighty21@yahoo.co.jp>
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「特定秘密保護法案」の衆議院での審議入りに抗し、廃案を強く求める
2013年11月7日
日本出版労働組合連合会
中央執行委員長大谷充
政府は今日11月7日、「特定秘密保護法案」の衆議院での審議入りを強行した。出版労連は世論を無視した、この暴挙に抗議するとともに、廃案を強く求める。
この法案は憲法の理念である国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を根底から覆すものである。同法案の提出にあたっては、おためごかしに「国民の知る権利の保障」や報道取材を「正当な業務行為」とするなどの文言が盛り込まれた。が、そもそも知る権利と秘密とは相容れないのであり、詭弁と言わざるを得ない。同法案へのパブリックコメントの77%の反対意見に対して、「しっかり受け止めるべきだ」と発言したのは菅官房長官であった。これも典型的な詭弁である。
さらに言えば、「わが国にとって大変重要な法案だ」と空叫びする安倍首相のねらいは明らかである。本法案の審議入りの直前に可決させた、「国家安全保障会議(日本版NSC)」設置関連法案とセットで、「戦争をする国」に向けて突進していると言わざるを得ない。
この法案は、政府にとって不都合な事実は何でも、いつまでも秘密に指定しようとするものである。秘密が何であるかも開示されない仕組みのなかで、政府の隠し事を国民が知ることは不可能となる。何が秘密であるかも秘密。これは国民主権の原則をないがしろにする稚拙な法理である。
また、情報源に働きかける活動も共謀・教唆・扇動にあたるとして処罰の対象とされるのであり、情報公開の原則がない中で秘密を取材することもまた不可能である。この法案は、憲法第21条で保障された言論、出版、表現の自由をおおいに侵害する。
さらに、秘密を取り扱う業務の従事者に対し、プライバシーを無視して行われる「適性評価」は基本的人権の重大な侵害であり、差別を蔓延させる行為である。
私たちは、2011年3月の東京電力福島第一原発事故に際して、政府や企業が不都合な事実を隠ぺいし、虚偽の発表を行うのを目の当たりにした。政府が国民の目から原発事故の真実を隠し、一方で米軍にその情報を提供するという背信行為を行っていたことは記憶に新しい。これは憲法が立脚する平和主義に背く行為であり、法案が採択されれば、これらの事実は私たちの目に触れることが永遠になくなる。
また共同通信による全国電話調査でも反対は過半数を超えた。日本書籍出版協会や日本雑誌協会、さらに「憲法と表現の自由を考える出版人懇談会」などの出版やメディアに携わる組織、また日本ペンクラブなどの表現者の団体が強い反対の意思を表明したことは言うに及ばず、広範な市民が連日首相官邸前に駆けつけ、抗議と廃案を求める声をあげ続けている。国民はこの法案への反対を明確に示している。出版労連も、加盟各単組から法案反対の決議をあげる取り組み(11月6日現在24単組)や、出版関連の各経営者に対して「制定反対の表明を求める」取り組み(同24単組・職場)を行っている。
国民の目から事実と真実を隠すための「特定秘密保護法案」に強く反対する。廃案を重ねて求めるものである。
以上
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秘密保護法の制定に反対する憲法・メディア法研究者の声明
安倍政権は、9月26日、かねて準備を進めてきた「特定秘密の保護に関する法律案」を示し、臨時国会への提出を目指している。しかしながら、この法案には憲法の基本原理に照らして看過しがたい重大な問題点があると考えるので、私たちは同法案の制定に強く反対する。
1
取材・報道の自由、国民の知る権利などさまざまな人権を侵害する
取材・報道の自由は、国民が国政に関与することにつき重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものであって、憲法21条が保障する表現の自由の保護が及ぶものであることは言うまでもない(博多駅事件最高裁大法廷決定など)。ところが、本法案は、防衛・外交・特定有害活動の防止・テロリズム防止の4分野の情報のうち特に秘匿が必要なものを行政機関の長が「特定秘密」として指定し、その漏えいに対して懲役10年以下の厳罰でもって禁止するだけでなく、特定秘密保有者の管理を害する行為により取得した場合も同様の処罰の対象とし、さらに漏えいや取得についての共謀・教唆・扇動にも罰則を科し、過失や未遂への処罰規定も置いている。
以上のような仕組みが導入されてしまうと、まずなによりも、重要で広範な国の情報が行政機関の一存で特定秘密とされることにより、国民の知る権利が制約される危険が生じる。また、特定秘密を業務上取り扱う公務員や民間の契約業者の職員が萎縮することにより情報提供が狭められるのに加えて、漏えいへの教唆や取得なども犯罪として処罰されることにより、ジャーナリストの取材活動や市民の調査活動そのものが厳しく制限され、ひいては報道の自由や市民の知る権利が不当に侵害されかねない。なお、法案には、「報道の自由に十分配慮する」との規定も置かれているが(20条)、この種の配慮規定により、法案そのものの危険性を本質的に取り除くことはできない。
このほか、本法案は、特定秘密を漏らすおそれがないよう秘密を取り扱う者に対する適性評価制度を導入し、評価対象者の家族関係や犯罪歴、病歴、経済的状態などを詳細に調査しようとしているが、これは個人のプライバシーを広範囲に侵害するものであり、不当な選別、差別を助長し、内部告発の抑止にもつながりかねない。また、秘密とされる範囲は広範囲に及び、かつ、漏えい等が禁止される事項も抽象的に書かれており、漠然としていて処罰の範囲も不明確であり、憲法31条が要求する適正手続の保障に反する疑いも強い。さらに、本法案が実現すると、秘密の中身が明らかにされにくく公開裁判が形骸化するおそれがあり、憲法37条が保障する公平な裁判所による迅速な公開裁判を受ける権利が脅かされかねない。
2
憲法の国民主権の原理に反する
憲法の国民主権の原理は、主権者である国民の意思に基づいて国政のあり方を決定していく政治のあり方を指しているが、これが十分に機能するためには、一人ひとりの国民が国政に関する事項について十分な情報にアクセスでき、その提供を受けられ、自由な表現・報道活動が行われ、これらによって主権者の意思が形成されることが前提である。
ところが、本法案が提示しているのは、そのような国民主権の前提に反して、1にも記したとおり、防衛、外交、有害活動防止やテロ防止など国民が大きな影響を受ける重要な情報について、その入手、取材、伝達、報道、意見交換がさまざまな形で制限される仕組みとなっている。これでは、国民主権が拠って立つ基盤そのものが失われてしまうことになろう。
そもそも、本法案の準備過程そのものが秘密の闇に包まれ国民に明らかにされないまま進められてきた経緯がある(NPO法人「情報公開市民センター」が、情報公開法によって本法案に関する情報の公開を請求したところ、内閣情報調査室は、「国民の間に不当に混乱を生じさせる」との理由で公開を拒否したと報告されている)。また、本法案が制定されることになれば、国会議員の調査活動や議院の国政調査権なども制限を受ける可能性が高く、国民主権の原理はますます形骸化されてしまいかねない。現に法案では、秘密の委員会や調査会に特定秘密が提供された場合、それを知りえた議員も漏洩等の処罰対象とされているからである。
3
憲法の平和主義の原理に反する
憲法は、戦争の放棄と戦力の不保持、平和的生存権を定める平和主義を宣言している。これからすれば、軍事や防衛についての情報は国家の正当な秘密として必ずしも自明なものではなく、むしろこうした情報は憲法の平和主義原則の観点から厳しく吟味し、精査されなければならないはずである。
本法案は、防衛に関する事項を別表で広く詳細に列記し、関連の特定有害活動やテロ防止活動に関する事項も含め、これらの情報を広く国民の目から遠ざけてしまうことになる。秘密の指定は行政機関の一存で決められ、指定の妥当性や適正さを検証する仕組みは何も用意されていない。しかも、本法案により、現在の自衛隊法により指定されている「防衛秘密」はそのまま「特定秘密」に指定されたものと見做され、懲役も倍化されるという乱暴なやり方が取られている。本法案のような広範な防衛秘密保護の法制化は憲法の平和主義に反し、許されないと言わなければならない。むしろ、防衛や安全保障に関する情報であっても、秘密を強めるのではなく、公開を広げることこそが現代民主国家の要請である。
政府は、安全保障政策の司令塔の役割を担う日本版NSC(国家安全保障会議)の設置法案とともに本法案の制定を図ろうとしている。また自民党は先に「日本国憲法改正草案」を公表し、「国防軍」を創設するとともに、機密保持のための法律の制定をうたい、さらに、先に公表された「国家安全保障基本法案」では、集団的自衛権の行使を認めるとともに、秘密保護法の制定を示したが、本法案は、想定される武力の行使を見越して秘密保護をはかろうとするもので、憲法改正草案、国家安全保障基本法案と一体のものと見る必要がある。その背後には、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)締結にも示されるように、日米の情報共有の進展を踏まえた秘密保護強化の要請がある。
以上のように、本法案は基本的人権の保障、国民主権、平和主義という憲法の基本原理をことごとく踏みにじり、傷つける危険性の高い提案に他ならないので、私たちは重ねてその制定に強く反対する。
2013年10月11日
[呼びかけ人]
(24人)
愛敬浩二(名古屋大学教授)、青井未帆(学習院大学法務研究科教授)、石村善治(福岡大学名誉教授)、市川正人(立命館大学教授)、今関源成(早稲田大学法学学術院教授)、上田勝美(龍谷大学名誉教授)、*右崎正博(獨協大学教授)、浦田賢治(早稲田大学名誉教授)、浦田一郎(明治大学法学部教授)、浦部法穂(神戸大学名誉教授)、奥平康弘(憲法研究者)、小沢隆一(東京慈恵会医科大学教授)、阪口正二郎(一橋大学大学院法学研究科教授)、*清水雅彦(日本体育大学准教授)、杉原泰雄(一橋大学名誉教授)、*田島泰彦(上智大学教授)、服部孝章(立教大学教授)、水島朝穂(早稲田大学教授)、本秀紀(名古屋大学教授)、森英樹(名古屋大学名誉教授)、*山内敏弘(一橋大学名誉教授)、吉田栄司(関西大学法学部教授)、渡辺治(一橋大学名誉教授)、和田進(神戸大学名誉教授)
(*印は世話人)
[賛同人](11月5日現在、131人)
青木宏治(関東学院大学法科大学院教授)、浅川千尋(天理大学人間学部教授)、梓澤和幸(山梨学院大学法科大学院教授・弁護士)、足立英郎(大阪電気通信大学工学部人間科学研究センター)、荒牧重人(山梨学院大学)、飯島滋明(名古屋学院大学准教授)、池端忠司(神奈川大学法学部教授)、井口秀作(愛媛大学法文学部教授)、石川裕一郎(聖学院大学准教授)、石塚迅(山梨大学生命環境学部准教授)、石村修(専修大学法科大学院教授)、井田洋子(長崎大学教授)、伊藤雅康(札幌学院大学法学部教授)、稲正樹(国際基督教大学教授)、井端正幸(沖縄国際大学法学部教授)、浮田哲(羽衣国際大学現代社会学部教授)、植野妙実子(中央大学教授)、植松健一(立命館大学教授)、植村勝慶(國學院大學法学部教授)、江原勝行(岩手大学准教授)、榎透(専修大学准教授)、榎澤幸広(名古屋学院大学講師)、大石泰彦(青山学院大学教授)、大久保史郎(立命館大学教授)、太田一男(酪農学園大学名誉教授)、大津浩(成城大学法学部教授)、大塚一美(山梨学院大学等非常勤講師)、大藤紀子(獨協大学教授)、大野友也(鹿児島大学准教授)、岡田健一郎(高知大学講師)、岡田信弘(北海道大学法学研究科教授)、緒方章宏(日本体育大学名誉教授)、奥田喜道(跡見学園女子大学マネジメント学部助教)、奥野恒久(龍谷大学政策学部)、小栗実(鹿児島大学教員)、柏崎敏義(東京理科大学教授)、加藤一彦(東京経済大学教授)、金澤孝(早稲田大学法学部准教授)、金子匡良(神奈川大学法学部准教授)、上脇博之(神戸学院大学大学院実務法学研究科教授)、彼谷環(富山国際大学准教授)、河合正雄(弘前大学講師)、河上暁弘(広島市立大学広島平和研究所講師)、川岸令和(早稲田大学教授)、菊地洋(岩手大学准教授)、北川善英(横浜国立大学教授)、木下智史(関西大学教授)、君島東彦(立命館大学教授)、清田雄治(愛知教育大学教育学部教授)、倉田原志(立命館大学教授)、古関彰一(獨協大学教授)、越路正巳(大東文化大学名誉教授)、小竹聡(拓殖大学教授)、後藤登(大阪学院大学教授)、小林武(沖縄大学客員教授)、小林直樹(東京大学名誉教授)、小松浩(立命館大学法学部教授)、笹川紀勝(国際基督教大学名誉教授)、佐々木弘通(東北大学教授)、笹沼弘志(静岡大学)、佐藤潤一(大阪産業大学教養部)、佐藤信行(中央大学教授)、澤野義一(大阪経済法科大学教授)、志田陽子(武蔵野美術大学教授)、清水睦(中央大学名誉教授)、城野一憲(早稲田大学法学学術院助手)、鈴木眞澄(龍谷大学法学部教授)、隅野隆徳(専修大学名誉教授)、芹沢斉(青山学院大学教授)、高作正博(関西大学教授)、高橋利安(広島修道大学教授)、高橋洋(愛知学院大学大学院法務研究科)、高見勝利(上智大学法科大学院教授)、高良鉄美(琉球大学教授)、田北康成(立教大学社会学部助教)、竹森正孝(大学教員)、多田一路(立命館大学教授)、只野雅人(一橋大学教授)、館田晶子(専修大学准教授)、田中祥貴(信州大学准教授)、塚田哲之(神戸学院大学教授)、寺川史朗(龍谷大学教授)、戸波江二(早稲田大学)、内藤光博(専修大学教授)、永井憲一(法政大学名誉教授)、中川律(宮崎大学教育文化学部講師)、中里見博(徳島大学総合科学部准教授)、中島茂樹(立命館大学法学部教授)、永田秀樹(関西学院大学教授)、仲地博(沖縄大学教授)、中村睦男(北海道大学名誉教授)、長峯信彦(愛知大学法学部教授)、永山茂樹(東海大学教授)、成澤孝人(信州大学教授)、成嶋隆(獨協大学法学部教授)、西原博史(早稲田大学教授)、丹羽徹(大阪経済法科大学)、根本博愛(四国学院大学名誉教授)、根森健(新潟大学法務研究科教授)、野中俊彦(法政大学名誉教授)、濵口晶子(龍谷大学法学部准教授)、韓永學(北海学園大学法学部教授)、樋口陽一(憲法研究者)、廣田全男(横浜市立大学都市社会文化研究科教授)、深瀬忠一(北海道大学名誉教授)、福島敏明(神戸学院大学法学部准教授)、福島力洋(関西大学総合情報学部准教授)、藤野美都子(福島県立医科大学教授)、船木正文(大東文化大学教員)、古川純(専修大学名誉教授)、前原清隆(日本福祉大学教授)、松田浩(成城大学准教授)、松原幸恵(山口大学准教授)、丸山重威(前関東学院大学教授)、宮井清暢(富山大学経済学部経営法学科教授)、三宅裕一郎(三重短期大学)、三輪隆(埼玉大学特別教員・名誉教授)、村田尚紀(関西大学法科大学院教授)、元山健(龍谷大学法学部)、諸根貞夫(龍谷大学教授)、森正(名古屋市立大学名誉教授)、山崎英壽(都留文科大学非常勤講師)、山元一(慶応義塾大学教授)、横田耕一(九州大学名誉教授)、横田力(都留文科大学)、吉田稔(姫路獨協大学法学部教授)、横山宏章(北九州市立大学大学院社会システム研究科教授)、吉田善明(明治大学名誉教授)、脇田吉隆(神戸学院大学総合リハビリテーション学部准教授)、渡辺賢(大阪市立大学大学院法学研究科教授)、渡辺洋(神戸学院大学教授)
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「特定秘密保護法案」に反対する声明(日本出版者協議会)
2013年10月10日
政府は「特定秘密保護法案」の概要を9月3日に発表して、10月の国会に提出しようとしている。この法案は、これまで何度も立案されては国民が何とか廃案に持ち込んできた「国家機密法」と呼ばれたものの復活である。2011年には「秘密保全法」として再度提出され、出版協は反対声明を出した。多くの反対があり、これも廃案になった。
今回の「特定秘密保護法案」は、概要発表が国会提出1か月前であり、国民へのパブリックコメントの募集も2週間と非常に短い、一方的で強引なやり方であった。よせられたコメントは9万件にのぼり、その8割は、国民の知る権利が損なわれるとした反対意見であったという。政府は反対のコメントを精査し、法案提出をやめるべきである。
法案は国の防衛・外交・安全脅威活動の禁止・テロ活動の防止を対象として「特定秘密」を指定するとしているが、それは行政の「長」が指定することになっている。防衛相や外相は恣意的に特定秘密を指定し、さまざまな情報を国民の眼から隠すことができる。また何が特定秘密にあたるかが、国会や裁判所でチェックできない。秘密指定は30年間続く。特定秘密の定義が曖昧なままその判断が行政の「長」に任されるのはきわめて危険なことである。
安全脅威やテロの分野も解釈次第で、市民レベルの活動にまでも処罰対象になりかねない。特定秘密を取得する行為(内部告発)について、未遂・共謀・教唆・煽動の処罰規定があるからだ。特定秘密を漏らした場合、懲役10年の重罰を科していることも驚きである。現在の国家公務員法では1年、自衛隊法でも5年である。現行法でも十分に対処できるのに、新たな重罰規定は国家公務員への威嚇行為である。
さらに法案は特定秘密を扱う人への「適正評価制度」を導入しようとしている。人の監視を強化することによって情報漏洩を防ごうとするものであるが、調査項目は多岐にわたっている。国籍、外国への渡航歴、ローンの返済状況、精神疾患など、対象も公務員や受託業務を受けた民間人、その家族、友人にまで及ぶ可能性がある。このような
「適正評価制度」はプライバシーの侵害であり、到底容認できない。
現在でも国家公務員法の秘密漏洩罪など国家秘密を守る刑事規定は存在している。この上にさらに、政府は特定秘密の範囲や処罰対象を広げようとしている。公務員・市民が処罰を恐れ、メディアの取材に応じにくくしているのである。民主主義には行政情報の情報公開こそが必要なのであり、情報公開の世界的潮流に逆行しているのである。
「特定秘密保護法案」は、報道・出版の自由を制約し、国民の知る権利を侵害する危険な法律であり、悪用が懸念される法律を新たに作る必要はない。断固反対するものである。
以上
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-165c.html
※出版協は11.21実行委員会と秘密保護法反対ネットに団体として参加している
会員96社で構成される出版社団体です。
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特定秘密保護法の制定に反対する刑事法研究者の声明
一 特定秘密保護法案の現状と基本的性格
1. 経過と現状
特定秘密保護法案が国会に上程された。その経過は概略次のとおりである。民主党政権のもとで「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が組織され、2011年8月8日には、「秘密保全のための法制の在り方について」と題する報告書(以下、報告書)が発表された。自民党・安倍政権はこの作業を受け継ぎ、国家安全保障会議の設置等に関連した手直しが進められた。法案の作成は、内閣官房情報調査室を中心に秘密裏に行われ、「特定秘密の保護に関する法律案」としてその概要が公表され、9月3日から2週間のパブリック・コメントの期間が設定された。その後、自民党と公明党の間で調整が行われ、取材活動に関する規定などが挿入されることとなり、国会上程に至っている。国家安全保障に関する特別委員会が衆議院に設けられ、国家安全保障会議設置法が可決され、特定秘密保護法案の審議がはじまる(11月6日現在)。
2.われわれは、刑事法研究者の機密探知罪への批判を継承する
戦前の日本の刑法には間諜罪の規定が置かれ、重罰が定められていた。これに加えて、軍機保護法および国防保安法を中心にした機密保護法制が存在した。この法制は戦時体制の要に位置し、言論統制と軍国主義思想の蔓延の重要な柱とされた。敗戦後の民主化と非軍事化のなかで、日本国憲法が制定され、これらの機密保護法制は全面的に廃止された。1952年に占領体制が終結すると、戦後民主化に対する反動が露わとなり、憲法改正の動きと連動して、刑法の全面改正作業が進められた。政府の改正刑法準備草案には機密探知罪が設けられ、重い刑罰が規定されていた。政府は間諜罪の復活を意図したのである。これに対して、広範な批判が巻き起こり、当時の有力な刑事法学者が相次いで、日本国憲法を擁護する立場から、批判的見解を明らかにした。その結果、1966年に法制審議会刑事法特別部会の審議でこの規定の新設は否決され、改正刑法草案には機密探知罪の規定が設けられなかった。改正刑法草案は公務員の機密漏えい罪を残していたが、改正刑法草案に基づく刑法の全面改正は世論の支持を得られず、棚上げされている。秘密保護法制に対する先達の刑事法研究者たちの努力を想起し、刑事法研究者の立場から、今回の特定秘密保護法案に沈黙し、これを黙過することはできないと考え、この声明を出すことを決意した。
3.法案作成等の手続の異常性
まず、指摘しなければならないのは、立案作業自体が民主的な手続を経ているとは到底言えないことである。前記の有識者会議は、議事録が作成されず、会議の資料や討議内容も秘密扱いとなっており、公開された部分に関しても、内容が改ざんされている可能性が指摘されている。安倍内閣のもとで内閣官房情報調査室が行った立案作業に至っては、最初から最後まで、秘密裏に行われた。与党の国会議員ですら、法案の内容を知らされない状態が続いた。
大半のパブリック・コメントでは期間が1か月とされているのに、この法案ではわずかに2週間である。法案の重要性を考慮すると、国民の熟慮期間としては短すぎる。また、肝心の法文そのものが明示されず、法案の概要も短いものであって、立法事実、すなわち、なぜそのような立法が必要なのかに関して、説得力のある説明は行われていない。罰則の条文も明らかにされておらず、法定刑が示されていないものもあった。概要の説明自体が、文の構成の拙劣さも手伝って、きわめて分かりにくく、一般市民が検討するには適さない代物であった。このように、パブリック・コメントの手続そのものが不自然で、形だけのものとなっている。
2週間という短い期間にもかかわらず、パブリック・コメントへの応募は9万件を超え、そのうち8割近くが反対の意見であったと伝えられている。
政府案が固まった後も、何が特定秘密に該当するかに関して、担当大臣や与党の関係者の発言はぶれており、法案の問題性を逆に浮かび上がらせている。
4. 法案の軍事立法としての基本的性格
この法案は、端的に言えば、軍事立法としての性格を色濃く有しており、このことを直視することが、重要である。
自民党の2012年4月の憲法改正草案は、多くの点で日本国憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という憲法の三つの基本原理に対して、全面的な否定を行おうとしている。この草案は、平和主義に関しては、日本国憲法の前文および第9条の全面的な改定を企図しており、国防軍を創設するとともに、軍法会議を設置し、軍機保護の規定を置いている。自民党の2012年7月の「国家安全保障基本法案」は、集団的自衛権の行使を立法化するとともに、秘密保護のための措置を講じるとしている。特定秘密保護法は、こうした改憲構想の重要な柱として位置づけられている。特定秘密保護法案は、軍事立法としての基本的性格を持ち、9条改憲と直結するものであって、憲法の平和主義を否定するものといわざるを得ない。
安倍内閣は、特定秘密保護法案を国家安全保障基本法案、国家安全保障会議設置法案(日本版NSC)と不可分一体のものとして位置づけ、国家安全保障会議設置法の国会提出と合わせて特定秘密保護法案を国会に提出している。安倍内閣は一方で96条改憲を含む明文改憲の準備を進めつつ、それ以前にもこれら一連の法律の成立によって、9条の実質的な改憲を図ろうとしている。
法案はまた、プライバシー権、思想・信条の自由、国民主権の基礎にある国民の知る権利や取材・報道の自由に重大な脅威を与え、刑事裁判における適正手続の保障や学問の自由などを侵害する恐れがある。われわれは以下に述べる理由からこの法案の制定に強く反対する。
二 特定秘密保護法案における秘密指定の問題点
法案は、特定秘密とされる事項について、①防衛に関する事項、②外交に関する事項、③特定有害活動の防止に関する事項、④テロリズムの防止に関する事項の4分野を定めている。
2011年の報告書では、秘匿を要する秘密を①国の安全、②外交、③公共の安全および秩序の維持という3つの分野で、国家の存立や国の重大な利益に関わる秘密がこれに該当するとしていた。これに対して、法案は、国家の存立や国の重大な利益という文言は用いられず、端的に「我が国の安全保障」が立法の根拠とされている。これによって、法案が軍事立法としての性格をもつことがより鮮明となった。
そもそも「安全保障」という概念は、きわめて曖昧であり、内外の状況に依存してその具体的な内容は、大きく変化する。たとえば、法案の秘密指定に関連して、政府側から「原発事故」は秘密指定の対象とはならないとの見解も示されている。しかし、原発事故が、核防護の構造的な脆弱性と結びついている場合、安全性、脆弱性に関わる情報は、秘密事項とされる可能性が大きい。領土問題を含む国際紛争が激化し、武力行使を含む対応をする場合には、安全保障を根拠とした秘密指定は、大幅に拡大、強化されるであろう。沖縄の普天間基地の名護市辺野古への移転に関連して、防衛省は辺野古沖のジュゴンの調査を行ったが、その結果は秘密とされていると伝えられる。環境調査が、基地移設と関連づければ、秘密となることを示している。平時には何でもない情報が、戦時には公表されると「人心を惑わす」ものとして、秘密保護の対象とされることは、アジア太平洋戦争での経験が教えるところである。
特定秘密保護法の下では、違法な秘密も「秘密」とされて、保護の対象となる可能性が大きい。国民に対して嘘をついてきたことが明らかになるような情報は、「特定秘密」とされるおそれがある。自衛隊は、イラク戦争において、人道復興支援を名目に派遣され、派遣地域は非戦闘地域に限定されたはずであった。しかし、実際には、派遣地域で何度もロケット砲攻撃を受けていたこと、戦闘地域であったバグダッド空港を拠点に米軍の人員や軍事物資の輸送にも当たっていたことが後に明らかになった。法律に違反し、国会での答弁にも反する活動を行っている場合、そのような事実は特定秘密保護法のもとでは間違いなく秘密扱いとされ、それを明らかにする場合、重罰が科されることになろう。また、すでに大量に保有されているプルトニウムを利用して、万一政府が核兵器の開発を行おうとする場合、このような事実は、最も重要な秘密として扱われることになり、国民が知らないうちに日本は核兵器保有国となる。
報告書の「公共の安全および秩序の維持」の秘密指定に対しては、あまりに広範囲の警察情報が秘密とされるとの批判が強かった。こうした批判を受けて、法案は、この領域を③「特定有害活動の防止に関する事項」、④「テロリズムの防止に関する事項」に分けて規定しており、一見したところでは、一定の限定を付したようにみえる。しかし、そうすることで、この法案が軍事立法としての性格をもつことが一段と鮮明となった。「安全保障」と関連づけさえすれば、政府の行政機関の長によって数多くの多様な情報が秘密指定の対象となる。「特定有害活動」の定義が規定されているものの、特定秘密の取得行為が含まれるなどの理由から、結局その範囲はあいまいでいかようにも拡大しうる。時の政府が進めようとする危険な軍事政策に反対する人々の活動が「外国の利益を図る目的」で行われているという認定がなされ「特定有害活動」とされ、さらにはそれが「テロリズム」との関連があるかのような決めつけが横行する可能性が高い。
秘密指定は行政機関の長の権限とされており、指定の期間は一応5年以下であるが、有効期間は延長でき、内閣の承認があれば合算して30年を超えることができるとされており、半永久的な秘密扱いが可能となっている。政府は、指定等の統一的な運用基準を定めるとし、この基準を定め、またはこれを変更しようとするときは、有識者による意見聴取の制度を設けるとしている。有識者とは具体的には「我が国の安全保障に関する情報の保護、行政機関等の保有する情報の公開、公文書等の管理等に関し優れた識見を有する者」とされている。しかし、事の性質上これまでにもまして有識者は政府寄りの人々によって占められることはほぼ間違いがない。また、これらの有識者にも適性評価をクリアすることが求められるものと予想される。しかも、意見聴取は一般的な運用基準の策定等に限定しており、個別の指定の適正さは審査の対象外とされる。これらのことから、この意見聴取制度は、歯止めとしてはほとんど機能しないと思われる。
秘密主義は、官僚制の悪弊でもある。秘密は自己増殖を遂げる。その結果、特定秘密保護法の下で「特定秘密」は、「安全保障」を超えて、秘密事項が拡大するおそれが大きい。
秘密保護の構造をみると、適性評価を除くと、とりわけ、特定秘密保護法案は、戦前・戦時の国防保安法と類似している。国防保安法は、太平洋戦争の開始直前の1941年に制定された。この法律は、戦時体制の構築の重要な一環として制定され、言論統制など戦時のさまざまな統制に猛威を振るい、国民の知る権利を根こそぎ奪い、軍国主義の思想を社会の隅々まで浸透させるための武器となった。
三 特定秘密保護法案は憲法の基本原理を否定する
特定秘密保護法案は、憲法の基本原理である平和主義、国民主権(民主主義)および基本的人権の尊重を危うくする。
1.憲法の平和主義に反する
特定秘密保護法案は、前述したように、基本的に軍事立法であり、それ自体において日本国憲法の平和主義に反するものである。
歴史的には軍事機密を中心とする国家秘密保護の強化は、軍事力の再編成の節目に登場してきている。特定秘密保護法の制定は、明文改憲であれ、解釈改憲であれ、9条改憲および集団的自衛権の行使の容認と不可分一体のものとして構想されている。政府は、これまで9条の解釈に関して集団的自衛権の行使は許されないとしてきた。この解釈を投げ捨て、集団的自衛権の行使を認めるという方向へと舵を切ろうとしている。これによって、自衛隊は、これまでの専守防衛の原則を投げ捨て、日本が攻撃されていない場合でも、海外に展開し米軍などと肩を並べて、戦闘を行う軍隊へと大きく変化することになる。日本は70年近く保ってきた平和国家から「戦争をする国家」へと変貌しようとしているのである。
特定秘密保護法案は、前述したように、国家安全保障基本法案、国家安全保障会議設置法案とともに、9条の実質的な改憲を行うものであり、明文改憲を先取りするものである。それは外国での戦争を含む「戦争への備え」を行うものであり、平和的生存権を基礎に戦争放棄、国際紛争の平和的な解決、戦力の不保持、交戦権の否認を定めた日本国憲法に全面的に違反するものである。
特定秘密保護法は、改憲の意図する「戦争をすることができる国家づくり」の過程を秘密のベールによって覆い隠し、戦争への国民の批判を封じ込め、国民の協力を取り付ける装置となる。戦争には嘘が多いが、この嘘を知ろうとすることも、知らせることも処罰の対象となろう。
2.憲法の国民主権の原理に反する
法案は、特定秘密を取り扱うことを業とする者に対する国家統制を強化することで、国民の知る権利を阻害する。
国民は、安全保障の重要事項に関してこそ、主権者として知る権利が保障されなければならない。この法案が成立すると、特定秘密に関する報道機関の取材は著しく困難となろう。国民が政治に関して適切な判断をするためには、重要な事項につき正確な情報を入手できることが重要である。国民を「見ざる、言わざる、聞かざる」の状態にすることは許されない。この法案の成立によって、情報公開制度、公益通報者保護制度は大きな後退を迫られることになろう。現在でも、防衛秘密等は情報公開の対象から除外されているが、特定秘密保護法のもとでは、秘密指定が大幅に拡大され、しかもこれに対する不服申し立てが否定されることになり、情報公開制度が空洞化され、毀損されることになる。
防衛省、外務省、警察庁など行政機関が特定秘密として指定した情報は、国家安全保障会議に提供されて、安全保障に関する決定が行われる仕組みが想定され、安全保障に関するあらゆる権限は首相に集中し、統合されることになる。その反面、国会のコントロールは有効に機能しないものとなり、議会制民主主義は著しく弱体化する。
3.憲法が保障する基本的人権を広範囲に侵害する
法案はプライバシー権、思想・信条の自由、国民主権の基礎にある国民の知る権利や取材・報道の自由に重大な脅威を与え、刑事裁判における適正手続の保障や学問の自由などを侵害する恐れがある。
(1)プライバシー権を侵害する。
特定秘密保護法案は適性評価制度を導入し、特定秘密を扱う者としてふさわしいかどうかの適格審査を行おうとしている。評価項目も思想・信条も含む広範囲なものとなっている。適性評価は、公務員だけではなく、業務委託を受けた民間業者や従業員も対象となる。その結果、職場の雰囲気は重苦しいものになる。プライバシーが広範囲に侵害され、思想調査が横行し、思想の自由が侵害される。必要があれば、いつでも周辺の家族、親族や友人などにも調査が及びうる。適性評価を行う行政機関は、治安機関としての機能を有することになる。
(2)報道・表現の自由を侵害する。
報道機関には、国民の知る権利に応えて、報道の自由が最大限保障される必要がある。特定秘密保護法制によって広範な情報が秘匿され、報道機関への情報提供が処罰の対象となり、公務員や民間企業に働く人々の表現の自由など市民的自由が著しく制限される。報道機関の取材活動がささいな逸脱を口実に処罰される可能性が大きい。報道機関の活動は萎縮してしまい、自主規制も拡大する。報道機関だけではなく、平和運動、基地反対運動や各種オンブズマン活動など、市民運動レベルの情報収集も著しく制約されることになろう。
法案は、「この法律の解釈適用」として、次の条文(21条)をおいている。「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」(1項)。「出版または報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」(2項)。
メディアの側には、特定秘密保護法案に対する警戒心が強いが、これらの条文はメディアをなだめることを意図している。法案は、秘密を取り扱う公務員や民間人に対して秘密保護を求めており、違反者には最高10年の懲役刑に加えて、裁量によって1000万円以下の罰金を科すとしている。法案は水も漏らさない秘密保護の体制を作り上げることを意図しており、秘密とされた情報は、いわば蛇口を締められる状態となって、報道関係者等の取材が著しく困難となることには、目に見えている。懲役10年を覚悟して、秘密の情報をメディアに提供する人はほとんどいないであろう。出版・報道関係者が無理に蛇口を開けようとすると、特定秘密の取得行為に当たるとされ、10年以下の懲役刑及び1000万円以下の罰金に処せられる。このようにして、メディアは、政府が提供した情報を国民に向かってもっぱら広報、宣伝する媒体へと退化する可能性が高い。法案は、「拡張解釈」しなくても、十分に人権侵害をもたらす。また、「出版又は報道の業務に従事する者」であるかどうかは、警察等が判断し、最終的には裁判所が判断する。かりに裁判で救済されたとしても、報道機関が委縮してしまうであろう。この種の法律に設けられる濫用禁止規定が人権侵害に対してどこまで効果的な歯止めとなるかは、過去の類似の規定を持つ法律等の運用から見て、きわめて疑わしい。
(3)学問の自由を危うくする。
特定秘密保護法の基本的な罰則である漏えい罪は、特定秘密の取扱業務者だけではなく、業務知得者の漏えいも対象にしている。科学技術の領域で、近年「安全保障」という名の軍事研究が拡大しているが、こうした研究が特定秘密保護法の下で飛躍的に拡大する可能性が大きい。国公立大学や私立大学で、国や軍事産業の委託を受けて軍事研究や汎用技術の研究などを行う場合、研究者は適性評価の対象となり、秘密保全義務が課されて、「漏えい」に対して処罰が科される。研究の内容は秘匿され、研究者相互間の研究内容の吟味が否定され、学会や雑誌等での発表も規制の対象となる。大学における自由闊達な研究と研究者間の交流と相互批判が大きく阻害される。
四 特定秘密保護法は、刑法および刑事訴訟法の原則をゆがめる
1.罰則は罪刑法定主義に反し、憲法31条違反である。
特定秘密保護法の罰則は、文言が曖昧であり、処罰の範囲は広汎であり、その内容も適正ではなく、憲法31条の適正手続・罪刑法定主義に反する。
罪刑法定主義は、犯罪と刑罰が国会の制定する法律によらなければならないとするものであり、行政機関である政府が刑罰法規を定めることは、基本的人権と議会制民主主義の見地から許されていない。この法案の特定秘密はそもそもきわめて広範囲であり、その具体的な内容は政府が決定する。このような罰則は、刑法による保護の対象を事実上行政機関の決定に広範に委任するという意味で、それ自体罪刑法定主義の趣旨に反する。処罰の類型も秘密漏えいを中心に、特定秘密の取得行為、独立教唆・扇動、共謀にまで及んでおり、過失による漏えいの処罰も含まれている。刑罰の補充性、謙抑性の原則を顧みず、悪しき完全主義に陥っている。
法案の罰則の類型としては、漏えい罪と探知型の取得行為とが規定されている。法案の漏えい罪は、自衛隊法の防衛秘密漏えい罪の法定刑と比べて、格段に刑が引き上げられている。自衛隊法の防衛秘密漏えい罪は、防衛秘密を取り扱うことを業務とする者の漏えい行為を処罰するだけであり、取得行為を処罰する規定を有していない。なお、在日米軍に関する刑事特別法やアメリカ政府から提供される武器や技術の秘密保護を図るMDA秘密保護法でも、探知・収集罪と漏えい罪が規定されている。条項の順番、配列は異なるものの、法案の罰則もこれら二つの先行する秘密保護立法の犯罪類型に類似したものとなっている。法定刑もこれら二つの法律における罰則と同じレベルのものとされている。集団的自衛権の行使をめぐって、日米の軍事的一体化が進むなかで、特定秘密の保護においても在日米軍に関する秘密やアメリカから提供された軍事物資等・技術の秘密の保護と同等の保護を自衛隊の秘密に与えようとしている。
法案は、故意の漏えいに加えて、過失の漏えいも処罰するとしている。秘密かもしれないと思えば、故意が認められることになろう。過失ではうっかりしゃべってしまうことが処罰の対象となる。漏えい罪は、一定の立場にある者による犯罪(いわゆる身分犯)とされている。そのうち、特定秘密を取り扱うことを業務とする者による漏えいの場合、10年以下の懲役刑(裁量により1000万円以下の罰金の併科もできる)、行政機関の長から提供を受けて特定秘密の提供を受けて、特定秘密を知得した者による漏えいの場合、5年以下の懲役刑(裁量により500万円以下の罰金の併科もできる)が科される。
適性評価と罰則の行為主体(身分)とは切り離されている。法案は、特定秘密を他の行政機関に提供する場合、提供を受けた行政機関の側の職員については、特定秘密の取り扱い業務者とすることを想定している。これらの業務者については、適性評価が行われる。
法案は、行政機関の長、国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官「その他職務の特殊性等を勘案して政令で定める者」については、適性評価を行わないとしている。しかし、これらの者が、罰則に規定された漏えい行為を行えば、故意犯であれ過失犯であれ、処罰を免れることはできない仕組みとなっている。
国会議員はどうか。国会議員や裁判官は、行政機関の長が行う適性評価の対象とはならない。しかし、特定秘密の提供を受けることは想定される。法案は、国会の非公開審理を前提として、厳重な秘密保持の措置を講じたうえで、各議院、議院の委員会もしくは調査会に対する特定秘密の提供を行うとしている。そうすると、特定秘密の提供を受けたとする国会議員は、罰則の特定秘密の提供を受け、「知得した者」(知得者)に該当し、罰則の適用が及ぶことになり、5年以下の懲役および500万円以下の罰金による処罰が可能となる。
法案では「公益上の必要による特定秘密の提供」に関する制度が盛り込まれている。行政機関の長が刑事裁判へ証拠として特定秘密を提供することは、これに当たる。この刑事裁判に関与する検察官・裁判官および弁護士は、罰則の主体となるのか。検察官が秘密取扱い者となるのかどうかは、現時点では明らかではない。少なくとも捜査や刑事裁判で検察官が証拠となる特定秘密の提供を受けている場合は、業務上知得者となることは明らかであり、故意および過失の漏えい罪の主体となる。
法案10条1項ロは、捜査もしくは公訴の維持又は審理に対する特定秘密の提供を規定している。刑事訴訟法316条の27では、公判前整理手続で裁判所が証拠開示に関して裁定を行う場合、証拠提示を命令することができる。裁判所が特定秘密を含む証拠について提示命令を出した場合、これに関与した裁判官は、特定秘密の内容を知ることになる。したがって、この場合は、裁判官が故意漏えい罪および過失漏えい罪の主体となる。裁判所がその証拠の開示を命じる場合には、弁護人も知ることになるから、その場合には弁護人も処罰の対象となりうる。すなわち、この法律が成立すると、一定の場合には裁判官・弁護人にも法律の適用が及びうる。
法案では、過失漏えいについても処罰するとする。在日米軍に関するMDA秘密保護法では、過失漏えい罪の規定を置いているが、自衛隊法では過失処罰の規定を置いていない。MDA秘密保護法と同様な秘密保護の仕方をすることで、法案の軍事立法としての性格は明白となっている。すなわち、集団的自衛権の行使を前提に、日本側の秘密保護を強化しようとする法案の性格は、ここでも明らかとなっている。
報告書では、特定取得行為という類型が想定されていた。法案ではこの文言にかえて、特定秘密の取得のために、➀人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為、➁財物の窃取、施設への侵入、不正アクセスその他の特定秘密の保有者の管理を害する行為を行った場合、手段となる行為の処罰とは別に、取得行為そのものの処罰を規定し、懲役10年以下の刑が科される。ささいな行き過ぎを口実に、報道機関の取材やさまざまな住民運動の側の調査活動は規制の対象とされ、活動を委縮させるおそれが大きい。
2.特定秘密保護法は、刑事裁判における適正手続保障に違反する。
特定秘密保護法では、秘密に関して、秘密指定されるだけではなく、実質的にも秘匿の必要性があるものとしている。しかし、罰則に違反して起訴された場合、適性評価を受けていない裁判官や弁護人に秘密の内容を開示することは認められないおそれがある。法案によれば、公判前整理手続における証拠開示を制限し、証拠開示に関する裁判所の裁定においてすら、捜査機関以外の者に対する証拠を開示しないという対応を採用するかのようである。
その結果、裁判では「特定秘密」の内容が裁判官に対してさえ明らかにされないまま、審理され、有罪とされることになろう。秘密指定という事実から実質的な秘匿の必要性が推認されることになり、裁判は結局、行政機関の長が行った秘密指定を追認する場所にすぎないものとなる可能性が大きい。さらに、「特定秘密」に関する審理においては、裁判の公開の制限や、尋問・論告・弁論が制限されるおそれも無視できない。
弁護人が特定秘密にアクセスしようとすれば、弁護人の活動が特定秘密の取得行為あるいは共謀罪、独立教唆・扇動罪あるいは未遂罪に当たるとして、処罰される可能性がある。このように、被疑者・被告人が有する弁護人の援助を受ける権利が著しく制限される。
このように、特定秘密保護法のもとで、適正手続、公正な裁判、弁護人の援助を受ける権利などが広範囲に脅かされる。
現在、法制審議会の「新時代の刑事司法特別部会」で通信傍受の拡大、室内盗聴捜査の創設等の審議が進められている。特定秘密保護法が制定された場合、構想されている刑事司法の新しい制度が持つ危険は、いっそう拡大するおそれが大きい。集団的自衛権の行使を想定した軍事の強化にともない、特定秘密保護法のもとで、反戦運動・平和運動への抑圧の強化に関連する事項が秘密の事項に含まれる可能性が高い。
五 結論
特定秘密保護法案は、憲法の平和主義、国民主権原理、基本的人権の尊重主義といった憲法の基本原理を脅かすものであり、憲法改悪の先取りでもある。それと同時に、刑事法の人権保障をも侵害するおそれが大きいと言わざるを得ない。われわれは、刑事法研究者の立場から、この法案に強く反対する。
2013年11月6日
呼びかけ人
村井 敏邦(代表、一橋大学名誉教授、弁護士、日本刑法学会元理事長)
斉藤 豊治(代表、甲南大学名誉教授、弁護士)
浅田 和茂(立命館大学教授)
安達 光治(立命館大学教授)
海渡 雄一(弁護士、日本弁護士連合会前事務総長)
川崎 英明(関西学院大学教授)
葛野 尋之(一橋大学教授)
斎藤 司(龍谷大学准教授)
佐々木光明(神戸学院大学教授)
白取 祐司(北海道大学教授)
新屋 達之(大宮法科大学院教授)
武内 謙治(九州大学准教授)
土井 政和(九州大学教授)
豊崎 七絵(九州大学准教授)
中川 孝博(國學院大學教授)
新倉 修(青山学院大学教授)
渕野 貴生(立命館大学教授)
本庄 武(一橋大学准教授)
前田 朗(東京造形大学教授)
松宮 孝明(立命館大学教授)
三島 聡(大阪市立大学教授)
水谷 規男(大阪大学教授)
守屋 克彦(弁護士、元東北学院大学教授)
賛同者
赤池一将(龍谷大学教授)、安里全勝(山口大学前教授)、雨宮敬博(宮崎産業経営大学講師)、甘利航司(國學院大學准教授)、荒川雅行(関西学院大学教授)、荒木伸怡(立教大学名誉教授)、伊賀興一(弁護士)、生田勝義(立命館大学名誉教授)、石塚伸一(龍谷大学教授)、石田倫識(愛知学院大学准教授)、伊藤睦(三重大学准教授)、稲田朗子(高知大学准教授)、指宿信(成城大学教授)、上田寛(立命館大学教授)、上田信太郎(岡山大学教授)、植田博(広島修道大学教授)、上野達彦(三重大学名誉教授)、内田博文(神戸学院大学教授・九州大学名誉教授)、内山真由美(佐賀大学准教授)、梅田豊(愛知学院大学教授)、浦 功(弁護士)、岡田行雄(熊本大学教授)、岡本勝(東北大学名誉教授)、大出良知(東京経済大学教授)、大藪志保子(久留米大学准教授)、大山弘(神戸学院大学教授)、小田中聰樹(東北大学名誉教授)、春日勉(神戸学院大学教授)、門田成人(広島大学教授)、金澤真理(大阪市立大学教授)、神山敏雄(岡山大学名誉教授)、嘉門優(立命館大学准教授)、川崎拓也(弁護士)、金尚均(龍谷大学教授)、京明(関西学院大学准教授)、楠本孝(三重短期大学教授)、黒川亨子(宇都宮大学専任講師)、小浦美保(岡山商科大学准教授)、古川原明子(龍谷大学准教授)、後藤昭(一橋大学教授)、酒井安行(青山学院大学教授)、坂本学史(神戸学院大学講師)、佐川友佳子(香川大学准教授)、櫻庭総(山口大学専任講師)、笹倉香奈(甲南大学准教授)、佐藤雅美(神戸学院大学教授)、島岡まな(大阪大学教授)、下村忠利(弁護士)、白井諭(大阪経済法科大学専任講師)、鈴木一郎(弁護士)、鈴木博康(九州国際大学准教授)、陶山二郎(茨木大学准教授)、関口和徳(愛媛大学准教授)、高内寿夫(國學院大學教授)、高倉新喜(山形大学准教授)、高田昭正(立命館大学教授)、高平奇恵(九州大学助教)、武田誠(國學院大學教授)、田中輝和(東北学院大学名誉教授)、田淵浩二(九州大学教授)、丹治初彦(弁護士、神戸学院大学名誉教授)、恒光徹(大阪市立大学教授)、寺中誠(東京経済大学非常勤講師)、徳永光(獨協大学教授)、冨田真(東北学院大学教授)、内藤大海(熊本大学准教授)、永井善之(金沢大学教授)、中島洋樹(関西大学准教授)、中島宏(鹿児島大学教授)、中村悠人(東京経済大学専任講師)、鯰越溢弘(創価大学教授、弁護士)、名和鐡郎(静岡大学名誉教授、獨協大学名誉教授)、西岡正樹(山形大学准教授)、新村繁文(福島大学教授)、羽倉佐知子(弁護士)、比嘉康光(立正大学名誉教授)、玄守道(龍谷大学准教授)、平井佐和子(西南学院大学准教授)、平川宗信(中京大学教授、名古屋大学名誉教授)、平田元(熊本大学教授)、福井厚(京都女子大学教授)、福島至(龍谷大学教授)、振津降行(金沢大学教授)、本田稔(立命館大学教授)、前田忠弘(甲南大学教授)、前野育三(関西学院大学名誉教授)、正木祐史(静岡大学教授)、松岡正章(弁護士・甲南大学名誉教授)、松倉治代(大阪市立大学准教授)、松本英俊(駒澤大学教授)、丸山泰弘(立正大学専任講師)、光藤景皎(大阪市立大学名誉教授)、緑大輔(北海道大学准教授)、三宅孝之(島根大学名誉教授)、宮本弘典(関東学院大学教授)、村岡啓一(一橋大学教授)、森尾亮(久留米大学教授)、森下弘(立命館大学教授、弁護士)、森久智江(立命館大学准教授)、森本益之(大阪大学名誉教授)、山下幸夫(弁護士)、山田直子(関西学院大学教授)、山名京子(関西大学教授)、吉村真性(九州国際大学准教授)
氏名非公表の賛同者5名
※呼びかけ人と賛同者の総数は132名(2013年11月8日現在)